はじめに

「酒は百薬の長」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?これはどういうことなのでしょうか?何をどのように飲めば体に良くお酒を楽しめるのと思うかもしれません。

東洋医学の話を見ても、薬膳や食養生のお話しはあるもののお酒の話はあまり聞かないです。
そこで、今回は東洋医学で楽しむお酒のお話しをします。是非参考にしてください。

お酒って薬なの?

百薬の長なんていうくらいだからお酒とは薬なのでしょうか?

その疑問に対しての回答としましては、実はもともと薬として使われていました。医療の『医』の字、この字には『治す』と言う意味がありますが、昔の使われていた漢字『醫(い)』には『治す』と共に『癒える』という意味があります。

そして何を隠そうこの『醫(い)』の下の部分の『酉』が酒器を表しているわけです。
古い時代では薬草酒を使うことで『治す』と『癒える』を行っていたわけですが、時代が移ろい、文化や歴史と共に発展してきました。今のお酒はその『癒える』の意味合いが主となって来ているのかもしれません。

そう言った意味では現代においてもお酒は一種の薬かもしれません。
辛いことがあった日、仕事帰りに行きつけのBarで一杯なんてシチュエーション、まさに魂を癒やすお酒との付き合い方ではないのでしょうか。

東洋医学で見るお酒の考え方

実際、東洋医学でお酒はどう捉えられているのでしょうか。
現代医学であればお酒はアルコールであり、アセドアルデヒド脱水素酵素が〜といったお話しになるわけですが、東洋医学でのアルコールの捉え方は『湿』と『熱』です。

お酒の弱い人はお酒を飲んだ時をイメージしてください。
顔が赤くなる、動悸がする、頭が痛くなる、全部、胸から上の症状かと思います。

東洋医学では胸から上の部分を上焦(じょうしょう)と呼びます。お酒を飲んで体に余分な熱が入ると、上焦に熱がこもってしまい、こういった症状が出てくるわけです。
暦の上では冬を迎えたこの季節、エアコンで暖房を入れても足元が温まらないかと思います。熱は上に上に行ってしまうものだからです。基本的には身体の上の方で症状が起こるわけです。

では『湿』とはなんでしょうか。少量ではすぐに動きやすい『熱』の性質に隠れてしまいがちですが、『湿』は6月のジメジメを思い出して頂ければイメージしやすいと思います。

お酒を飲み過ぎた翌朝は、身体がだるい、頭が重い、やる気がでないことがあるかと思います。『湿』とは身体の中に溜まってしまった余分なお水のことなのです。

お酒は『湿』と一緒に『熱』も入っているので、『熱』によって水分が放散され身体は脱水状態です。その時、体内にある液体はどうしても粘度が高いドロドロ状態になります。
この状態を東洋医学では『湿熱』がたまると表現します。なので、こうならないようにお酒を飲んだら同量の水をと言われるわけです。

ちなみに、昨今、クラフトビール(ここではザックリ少しアルコール度数の高いビールとお考え下さい)が流行しているアメリカではビールを頼むと一緒に同量のお水も出てくるみたいです。
日本じゃまず、ビールをこんな飲み方しないかと思います。もしかしてアメリカの方が生活に東洋医学が反映されてるかも?と思える習慣です。

東洋医学で見たお酒のいいとこは?

お酒の考え方で悪い例を先に出してしまうのが、鍼灸師の悪いとこです(東洋医学では通常『湿』と『熱』を外邪(がいじゃ)、つまり外から入ってくる、よろしくないものとして扱います)。

ここからはお酒を楽しむ話をしたいと思います。
東洋医学で見るお酒のいいとこポイントは大きく二つです。

① 気がめぐる
東洋医学は気の医学です。気って聞くと『えいっ!』とか『やー!』といったイメージが先行する方もいるかもしれませんが、もともと気と言う漢字の意味は『米を炊いた時に湯気がでている様子』から転じて、物の状態が変化することを意味します。つまり気がめぐるということは身体の中のシステムが円滑に動くってことなのです。

② 熱を取り入れられる
先ほどはお酒が体に合わない場合と取り過ぎた場合の話でしたが、もちろん適量体に取り込めば、簡単に身体に熱を取り込めるわけです。熱があれば身体の働きが活発になるわけですから、例えば消化という働きを活発にしてくれる、口下手さんの話すという働きを活発にしてくれるなど、色々な働きをアシストしてくれます。

この二つのポイントがキーになって、楽しい気持ちになったり食事が進むなど沢山の良いことが溢れてくるわけです。

どんな飲み方をすればいいの?

東洋医学では人の生まれ持った体質をいくつかのタイプに分類して考えます。
例えば、頑張り屋さんタイプはついつい働き過ぎて肩や首が凝ったり、寝付きも悪くて便秘しがちなどの考え方です。そのようなタイプに合わせて身体にあったお酒との付き合い方があると言うのがその答えです。

これについては、今回は一つ東洋医学的考え方の大原則『中庸』(ちゅうよう)をご紹介します。この聞きなれない言葉の意味は『ほどほど』です。東洋医学は全てにおいて『○○過ぎって良くないよね』と考えるバランスの医学です。

悪すぎはもちろん、良すぎもきっと何かの反動だから何事も〜すぎは禁物と言った考え方です。これは、お酒との付き合い方に関しても一緒です。

酒は『百薬の長』ですが、〜すぎは『百毒の長』になってしまいます。東洋医学は現象の医学、そもそもヒトの丁度いい飲酒量は○○ml!なんて言い方はしません。
是非ともあなたにあった『ほどほど』を見つけてみて下さい。

まとめ

生活に密着した東洋医学的視点で、お酒がどんな性質を持っているかがわかれば楽しみ方も選び方も無限大かと思います。
それに、もし、失敗しちゃった時の対処法だってわかるかもしれません。

お酒の性質を理解した上で、あなたの体質(暑い季節が苦手だな、湿気は嫌いだな)と照らし合わせ、あなたにあった『ほどほど』を見つけて下さい。
健康に楽しく、お酒ライフを送りましょう。

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