はじめに

炭水化物は太る!糖質制限こそダイエットの近道!と思っている方はいませんか?

糖質制限ダイエットは確かにダイエットのやり方のひとつとしてありますが、それがすべてではありません。そして、炭水化物は体に必要な栄養素のひとつでもあるのです。

今回は、炭水化物を抜かないダイエット方法についてお話します。

炭水化物はダイエットの敵?

ご飯やパン、麺類などの炭水化物に対してダイエットの敵であるかのようなイメージを持っている方もいるのではないでしょうか?炭水化物は糖質に分類されるため、太りやすいと考えられています。確かに、炭水化物の過剰な摂取は体重・体脂肪増加の原因になります。

ですがそれは炭水化物に限ったことではありません。ダイエットにおいてはあまり問題視されることがないたんぱく質だって同じなのです。

炭水化物は体にとって必要な栄養のひとつ。炭水化物を我慢しなくてもダイエットは十分可能なのです。

炭水化物の体への役割

よく勘違いされることですが、炭水化物と糖質は全くのイコールではありません。確かに炭水化物も糖質の中のひとつです。しかし、純粋な糖質というわけではないのです。炭水化物と糖質の違いに触れつつ、炭水化物の体内での役割についてお話します。

炭水化物=糖質+食物繊維

炭水化物とは、糖質と食物繊維がくっついてできているものです。つまり、砂糖のような単純な糖分とは性質が異なっています。

炭水化物は糖質と食物繊維が一度に摂取できてしまうオトクなのが炭水化物なのです!
そんな炭水化物の持つ栄養を、もう少し詳しく解説します。

炭水化物の効果1:エネルギー源

糖質は脳や体のエネルギーとして使われる栄養です。脂質やたんぱく質などと比べて吸収が早いため、エネルギーとしてすぐに使用することができるのが糖質の特徴です。

体は糖質以外の栄養もエネルギーとして使用することができます。
ところが脳はそうはいきません。脳がエネルギー源として唯一使用できるのが糖質なのです。糖質を過度に控えると、脳の働きが鈍くなるだけでなく、ホルモンの分泌異常などを引き起こす可能性もあります。

炭水化物の効果2:整腸作用

炭水化物の中のもうひとつの栄養素である食物繊維。その役割は腸を整える作用です。
食物繊維は水分を吸収してお腹の中で膨らみます。また、水溶性食物繊維には便を柔らかくしてくれる働きがあるので、便秘の改善にも効果的です。

それだけではありません!
腸内の善玉菌は炭水化物に含まれる糖質が大好きなので、この効果も合わさり、炭水化物を摂ると腸内環境が整うのです。

炭水化物は吸収がゆっくり

炭水化物の中に含まれている「糖質」を「太るもと」として考えて制限するのが糖質制限ダイエットです。しかし、過度に糖質を制限すると脳にも体にも悪影響を与えてしまいます。糖質が太ると考えられているのは、その吸収速度の速さにあります。糖質は、脂質と比べると体内に取り込まれる時間が短く、すぐにエネルギーとして使用できる状態になります。ですが、そこでエネルギーを使い切ることができずに余ってしまうと、脂肪として体に蓄えられてしまうのです。

でも、炭水化物は違います。糖質と食物繊維が混ざっているのが炭水化物であると前述しましたが、食物繊維は消化吸収が緩やかなのです。そして、食物繊維の吸収速度に合わせるようにして、糖質自体の吸収速度もゆっくりになるのです。少しずつ体にエネルギーが供給されていくので、脂肪に変わるまでの期間も長くすることが可能です。つまり、単純な糖質と比べると、炭水化物のほうが太りにくいのです。

炭水化物ありダイエットの方法

炭水化物の持つスゴイ栄養素、ご理解いただけましたか?

純粋な糖分(砂糖や果糖など)を摂取するのと炭水化物によって糖質と食物繊維を同時に摂取するのでは全く体への影響が違うのです。ダイエット中だからと言って、炭水化物を嫌煙する必要はありません。

ご飯やパン、麺だけが炭水化物ではない

炭水化物は、ご飯やパンなどの主食だけが当てはまるのではありません。麦やトウモロコシなどの「穀物類」、ジャガイモやサツマイモなどの「イモ類」なども炭水化物の一種です。ですから、食事バランスを考える際には炭水化物の摂取割合も考慮に入れる必要があります。

重要なのは炭水化物を食べる順番

糖質が太りやすいと考えられている理由はその吸収の速さにありました。使い切れなかったエネルギー(カロリー)は脂肪に変わってしまうからです。糖質を脂肪に変えるのを防ぐためには、血液中にエネルギーとしての糖分が少しずつゆっくり供給されていくことが大切です。そのためのカギを握っているのが「食物繊維」なのです。食物繊維は、私たちの体の中で消化吸収されることはありません。ですが、体はそれを試みます。この機能を利用することで、同時に摂取した糖質の吸収速度もゆっくりにすることができるのです。

つまり、ダイエットにおいて重要なのは「糖質をとらないこと」ではなく、「糖質の吸収をゆっくりにすること」であると言えます。

そのために効果的なのが2つ。
1:「食物繊維」から食べ始めること
2:朝食>昼食>夕食 の順で炭水化物の量を少なくしていくこと
です。

1:食物繊維から食べ始める

食事を始めるときには、野菜や海藻類などの、食物繊維がメインとなっているメニューから食べ始めます。
最初に食物繊維を胃の中に入れることで、その後の糖質の吸収が穏やかになるためです。その際、汁物やお茶などの水分も一緒に摂るとさらに効果的です。こうすると、糖質が緩く長くエネルギーとして供給されるため、腹持ちもよくなり余計な間食も防ぐことができます。

2:炭水化物の量を 朝食>昼食>夕食 にする

私たちのほとんどは、日中が一番活動レベルが高く、逆に夜にはあまり体を動かすことがありません。
摂取した糖質を使い切ることが太らないことにつながるため、一日の活動レベルのサイクルにあわせて炭水化物の摂取量を調整できると理想的です。

朝に一番炭水化物の摂取量を多くするべき理由は、
・睡眠中は食事を摂取していないので体がエネルギー不足になっている
・日中の活動に必要なエネルギーを供給する
・日中は活動量が多いため、エネルギーを使い切ることができる
という理由からです。

夕方以降は徐々に活動量が落ちていきますから、それに合わせて炭水化物の摂取量も抑えましょう。そうすることで、エネルギーとして体の中にある糖質が余ってしまうことがなくなります。

炭水化物ありダイエットの効果

炭水化物を抜かないままでもダイエットは可能です。

1:「食物繊維」から食べ始めること
2:朝食>昼食>夕食 の順で炭水化物の量を少なくしていくこと
の2点に気を配りながら食事を行うことで、どのようなダイエット効果が期待できるのでしょうか?

①健康を害さない

ダイエットとは、美容目的だけではなく健康な体になるためにも行われるものです。過激なダイエットを行うことによって、肌荒れや抜け毛、便秘や体臭の増加などが起こっては意味がありません。炭水化物である穀物類の中には、糖質や食物繊維だけでなくビタミンやミネラル類も豊富に含まれています。
炭水化物アリのダイエットは、体にとって必要となる栄養をバランスよく摂取することができるため、健康的に痩せることが期待できます。

②間食とドカ食いが減る

ダイエット中に間食やドカ食いの欲求と戦った経験はありますか?
その理由は「血糖値」にあります。血糖値とは、体に必要なエネルギーである糖分が血液中にどれだけ含まれているかの指標です。空腹と血糖値はとっても深い関係があり、血糖値が低くなると「お腹がすいた」と感じるようにできているのです。

糖質の吸収が速すぎると、血糖値は急上昇してしまいます。すると、体から血糖値を下げようとするインスリンが出過ぎてしまい、今度は血糖値が下がり過ぎてしまうのです。これが「ニセモノの空腹感」の正体。
ここで間食やドカ食いが起こってしまうと、当然エネルギーは供給過剰で脂肪へと変わってしまいます。

炭水化物は糖質の吸収を穏やかにしてくれるため、血糖値が急上昇、急降下しません。
そのため、ムダな間食やドカ食いを避けることができるのです。

③食べすぎを防げる

食物繊維が豊富な食品から先に食べ始めることで、必然的にたくさん噛むことが求められます。この「噛む」という行動と「満腹感」はとても関係が深いです。あごを動かしてたくさん噛むことによる刺激が、脳内にある満腹中枢を刺激します。私たちは満腹中枢が働くことによって「お腹いっぱい」と感じることができるのです。

ところが、満腹中枢が機能しだすまでには少し時間がかかります。食事後すぐに満腹中枢に対して刺激を送ることで、「お腹いっぱい」と感じるまでの時間を短縮できるのです。満腹を感じ始めるまでの時間が短くなれば、食べ過ぎてしまうのを防ぐことができます。

④ストレスが少ない

私たちの脳には、さまざまな神経伝達物質が存在しています。そのなかのひとつが幸せを感じさせてくれる「セロトニン」という物質。糖質を摂取すると、セロトニンの分泌量が増えることがわかっています。

ストレスがたまってくると、無性に甘いものが食べたくなりませんか?
これは、無意識のうちにセロトニンを求めているからなのです。ダイエット中はストレスも多く、ついイライラしがち。炭水化物アリのダイエットを行えば、セロトニンもしっかり分泌されますから、イライラが起こりにくくなります。

⑤リバウンドしにくい

炭水化物アリのダイエットも、食事制限の一種です。ですが、一般的な食事制限ダイエットと比べると、辛さは軽減されます。つまり、それだけ継続しやすいのです。

ハードな運動や過激なカロリー制限は、短期的にはかなりのダイエット効果をあげることが可能です。ですが、そのようなダイエット法を長続きさせることは難しいです。よほどストイックな人でない限り、いつか「タガ」が外れてしまう危険があります。
するとその先にあるのはリバウンド……

ですが、炭水化物ありのダイエットではこのような爆発現象が起こる可能性を減らすことができます。
炭水化物ダイエットはリバウンドしにくダイエットなのです。

健康的なダイエットには炭水化物も必要

炭水化物を抜かないダイエット法は、ストレスが少なく健康的に痩せることが可能です。
イライラや体調不良、便秘や肌荒れなどとは無縁で、長く続けられるのが最大のメリット。
せっかくスリムな体になっても、肌や心が荒れてしまっていては意味がありません。

炭水化物は体にとっては害のある栄養ではないのです。即効性は一段劣るかもしれませんが、少しずつ体重を落としていく方が体にも負担がかかりません。半年程度のスパンで取り組んでみてください。今回紹介した食事の方法が「習慣」としてあなたの生活に根付いていることでしょう。

ぜひ、今日から始めてみてはいかがでしょうか?

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

関連する記事

関連するキーワード

著者