はじめに

脂肪1kgを落とすのに必要なカロリーは約7000kcalです。

1時間のウォーキングで消費できるカロリーは約160kcal(体重や歩く速度によって異なります)なのに対し、茶碗一膳分(160g)のご飯は約270kcal、6枚切りの食パンは約160kcalです。
この数字を見ても分かるように、ダイエットにおいて、食事から摂るカロリーをコントロールすることはとても重要なのです。

今回は、痩せるための食事の順序、内容、時間などをご紹介します!

食事と肥満の関係

1)食事と満腹感・空腹感の関係

血液中の糖分(グルコース)の濃度を血糖値と言います。この血糖値が低下すると、脳の視床下部にある摂食中枢が刺激され、空腹を感じるようになります。
食事を摂ると血糖値が上昇し、15分から20分経過すると脳の視床下部にある満腹中枢が刺激され、満腹を感じるようになります。

2)食事とホルモンの関係

(1)血糖値に関わるホルモン

食事を摂って血糖値が上昇すると、膵臓(β細胞)からインスリンというホルモンが血液中に分泌され、上昇した血糖値を下げて安定させます。また、血液中のインスリン濃度が上昇すると、満腹中枢を刺激して満腹感を得ることができます。

反対に、空腹になって血糖値が低下すると、様々な臓器から血糖値を上げるホルモンが分泌されます。膵臓(α細胞)から分泌されるグルカゴン、副腎髄質のアドレナリン、脳下垂体(前葉)の成長ホルモン、副腎皮質のコルチゾールなどです。


(2)食欲に関わるホルモン

食欲に関わるホルモンは2つあり、グレリンとレプチンと言います。
グレリンは摂食中枢を刺激して空腹感を覚えるようになります。つまり食欲を促進します。
レプチンは、満腹中枢を刺激して満腹感を得られるようになります。つまり食欲を抑えます。

ちなみに肥満になると脂肪細胞の数(正確にはレプチンの分泌量)自体は増えますが、働きが低下してしまうため、食欲を上手く抑えることができなくなります。


(3)食事と自律神経の関係

胃に食物が入って拡張すると、消化・吸収をするために、副交感神経が優位になります。すると満腹中枢が刺激され、満腹感を得るようになります。

胃が空になって収縮すると飢餓(きが)収縮と呼ばれる状態が30分から45分程度続きます。飢餓収縮が起こると、摂食中枢が刺激されて空腹感を覚えるようになります。


(4)食事と脂肪の関係

血液中の余分なグルコースは、肝臓や筋肉にグリコーゲンという形で蓄えられ、運動などの際に消費されます。ただし、グリコーゲンとして肝臓や筋肉に貯蔵される許容量には限界があります。許容量を上回ると、血液中のグルコースは中性脂肪として蓄積され始めます。

中性脂肪が体内に過剰に蓄積した状態を肥満と言います。皮膚の下(皮下組織)にある脂肪を皮下脂肪、臓器周辺にある脂肪を内臓脂肪と言います。皮下脂肪は内臓脂肪に比べると、つきやすく、落ちにくいという特徴を持っています。

痩せている人の食生活とは

痩せている人は、体質もありますが、痩せる食生活あるいは太らない食生活を行っている可能性が高いです。それでは体内のホルモンバランスや自律神経の働きを利用しつつ、どのような食生活を送れば良いのか説明します。

1)欠食がない

朝食を抜く習慣のある人は、バナナ1本またはヨーグルトや野菜ジュースだけでもよいので必ず食べるようにしましょう。

朝食を抜いてしまうと空腹時間が長くなり、血糖値が低い状態が続きます。運動をしなくても、筋肉や脳では一定量の糖分を必要とします。すると昼食の量がそれほど多くなくても、昼食後に急激な血糖値の上昇が見られ、食事からの糖質・脂質の吸収率が高くなってしまいます。

太りやすくなるばかりでなく、糖尿病や脂質異常症のリスクを上げ、動脈硬化を加速させてしまうため、欠食は避けましょう。

2)ゆっくり食べる

1回の食事には15分以上かけ、早食いをしないようにしましょう。

これは、食事を開始してから満腹中枢が刺激されて満腹感を得るまでには15分程度のタイムラグがあるためです。早食いをしてしまうと、満腹中枢が刺激されるまでの間に食べ過ぎてしまいます。

早食いの傾向のある人は、
・一口毎に箸を置く
・家族と会話を楽しみながら食事をする
・テレビなどを見ながら食事をする
といった対策をしましょう!

3)食べすぎない

食事の量そのものが多ければ当然痩せることはできません。

・家族が残した食事を食べてしまう
・それほど空腹感はないのに食べている
・お米、パン、麺類、お菓子に目がなく満腹になるまで食べてしまう
などに心当たりのある人は注意が必要です。

おおよそでも良いので自分が食べたカロリー量を計算し、書き留めるとよいでしょう。

4)食べる順序を工夫する

同じ食事量を摂っていても、食べる順序によって血糖値の上昇度合いに違いがあります。

まず食物繊維の多い品を食べ、次にタンパク質、最後に炭水化物をとりましょう。血糖値の上昇が緩やかになり、糖尿病や脂質異常症の予防もできます。


(1)食物繊維の働き

食物繊維は野菜、きのこ、海藻、豆類に多く含まれています。食物繊維は腸の表面を壁のように覆って、後から入ってきた糖質や脂質の吸収を穏やかにします。さらに、腸内環境を整え、便のカサや水分量を増して排出するという働きもあります。


(2)タンパク質とインクレチン

肉や魚、豆類に多いタンパク質が腸内に届くと、インクレチンという物質が分泌されます。インクレチンには胃腸の動きを遅くし、後から入ってくる糖質の吸収を穏やかにするという働きがあります。また、食後の血糖値の上昇を抑えることもできます。

6)水分や汁物を多めに摂る

一般的に、固形の食品よりもお茶、コーヒー、紅茶、味噌汁などの水分や汁物の方が低カロリーです。こういった水分であっても胃の中に入ると、胃が拡張して満腹中枢を刺激するため、積極的に摂りましょう。ちなみに1日に必要な水分量は1.5リットルと言われているため、これを目安にしましょう。

ただし、糖分を多く含むスポーツドリンクや炭酸飲料などは、飲みすぎると急激な血糖値の上昇を招き、ペットボトル症候群という急性の糖尿病を引き起す可能性があります。十分注意しましょう。

冷え性の人には、常温のもの、あるいは温かいスープや味噌汁がお勧めです。

6)寝る3時間前までに食べ終える

寝る3時間前までには食事を摂り終えるようにしましょう。
理由は2つあります。

一つは、寝る直前に食事を摂ってしまうと、睡眠中に胃腸が活発に消化活動を行ってしまうからです。消化を行うためには、一時的に胃や腸に血液が集中しなければなりません。一方、睡眠中に脳や筋肉などの細胞を回復させるためには、血液によって運ばれる栄養や酸素が必要です。すると胃腸、脳や筋肉のそれぞれに必要な血液が不足してしまうため、消化不良による胃もたれ、疲労感が抜けないなどの不調を招いてしまいます。

もう一つは、食事を摂ってすぐに寝てしまうことで、睡眠時間中に血糖値のピークを迎えるからです。睡眠中は糖の消費が抑えられます。すると血液中に余分になった糖分や脂肪が体内に蓄えられやすくなります。

 食べたものが完全に胃から腸に送られるまでには、個人差はあるものの約6時間かかると言われています。せめてその半分の3時間は空けてから寝るようにしましょう。

7)朝はしっかり、夜は軽めに摂る

夕食を軽めに摂った方が良いという根拠は、前述した内容と同じです。睡眠中の胃腸への負担軽減、体内への糖・脂肪の過剰な蓄積を防止するために、夕食の量そのものを抑えるのもよいでしょう。

まとめ

今回は、痩せるための食事の順序、内容、時間などをご紹介しました。
朝ごはんを食べる、ゆっくり食べるようにするなど、ちょっとした工夫によって太りにくい食生活を実現することができます。
今日からいつもの食生活を見直し、健康的に痩せましょう!

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

関連する記事

関連するキーワード

著者