ドローインとは

ドローインは、簡単にいうと、呼吸に合わせてお腹を引っ込めるの小さな動きで行う腹筋トレーニングです。
腹筋の中でも、最も深層にある『腹横筋』という筋肉を特に刺激します。

腹横筋とは、肋骨の下部から骨盤まで、腹巻きやコルセットのように、私たちの腹部を巻き付ける形でついています。腹横筋が機能することにより、体幹部がしっかりと安定します。

そのため、ドローインは腰痛予防やスポーツパフォーマンス改善のためなどに行われる体幹トレーニングとしても、よく取り入れられています。
そして、腹横筋が引き締まることで、下腹や横腹などの気になりがちなお腹のたるみも改善できるので、ダイエットのためのエクササイズとしても取り入れられます。

ドローインのダイエット効果

ここでは、ドローインがもたらすダイエット効果についてご説明します。

1. 下腹や横腹の部分痩せ

お腹のたるみを改善するのに一般的に行われるのは『ふっきん』と呼ばれるいわゆる『上体起こし』でしょう。しかし、上体起こしを始めたものの、気になる下腹や横腹にあまり変化がないと思われている方もいらっしゃるかもしれません。
上体起こしで主に使用するのは、『腹直筋』という腹筋の中でも最も浅層にある筋肉です。腹直筋はみぞおちからへそを経由し、恥骨へと縦方向に走行しています。
つまり、上体起こしでは、お腹の前面にある中央に近い部分だけを鍛えることはできますが、多くの方が気にしている下腹やズボンの上に乗った横腹の脂肪は減らすことができません。
どこの筋肉に対して働きかけるのか、ということが非常に重要になります。
一方のドローインでは、お腹から腰にかけて全周に巻き付くように走行している腹横筋を鍛えるので、気になる下腹や横腹を効果的に引き締めることができます。

2. 体幹機能アップで代謝改善

腹横筋は良い姿勢を保つための姿勢筋としても作用しています。
例えば、座位や立位を保持する際、腹横筋をはじめとする姿勢筋が機能していないと、背骨が丸まっただらんとした姿勢になってしまいます。姿勢筋をきちんと働かせることで、背筋が伸びた良い姿勢になります。
この姿勢の違いだけでも、消費するエネルギーが異なります。
つまり、普段から姿勢筋を働かせて良い姿勢を維持するだけで、ダイエット効果に繋がります。
また、腹横筋の筋肉量が増加することで基礎代謝(寝ていても消費されるカロリー)が高まる効果も期待できます。

ドローインの正しいやり方

ここではドローインの正しいやり方をご説明します。

① 両膝を立てて仰向けに寝て体の力を抜く。
② 両手は体の横で床面に置くか、下腹部に軽くあてるように置く。
③ ゆっくりと息を吸いながら、3~5秒かけてお腹をふくらませる。
④ 5~10秒かけ、吸ったときよりもゆっくりと長く息を吐きながら、お腹をへこませる。
⑤ 手順③、④のお腹の動きを協調させた呼吸を繰り返し行う。

ドローインをやるときのポイント

1. 余分な力を抜く

ドローインはとても軽い力で行うものですが、息を吐きながらお腹をへこませようとすると、一生懸命になりすぎて余分な力が入ってしまうことがあります。
肩や首に力が入っていたり、お腹を触った時に腹直筋(おへその上下)がかちかちになるほどの力が入っていたりするときは、腹横筋の収縮以上にその他のアウターマッスルの収縮が強くなってしまっています。一度身体の力を抜き、リラックスしてから行うようにしてみてください。
また、頭痛やめまいがする場合には血圧に影響があり、余計頭痛やめまいが強くなる場合があるので、止めるようにしましょう。

2. 骨盤を床と水平に保つ

ドローインを行う前に骨盤の傾きを確認します。確認の方法は以下の通りです。

① 骨盤の左右にあり、手を腰に当てたときに触れることのできる突起(上前腸骨棘)を確認します。
② 恥骨(おへそから下降して陰部の上あたりで触れることのできる骨)を確認します。
③ ①上前腸骨棘と②の恥骨を結んだ三角形が床と平行になる位置が骨盤のニュートラルなポジションです。ドローインは常にその傾きを維持した状態で行います。

ドローインでお腹をへこませようとすると、同時に骨盤が後ろに傾いてしまうことがあります。
しかし、腹横筋の収縮自体に骨盤の傾きを変化させる作用はありません。骨盤が後ろに傾いているときは、腹直筋が強く収縮していることが考えられますので、骨盤がニュートラルな位置になるよう注意してください。

3. 最後まで息を吐き切る

ドローインでは息を最後まで吐き切ることが重要です。特に、ドローイン初心者の方はなかなか腹横筋が収縮せず、息を吐き切る最後でやっと収縮し始める方も多くいらっしゃいます。
息を吐く途中で止めてしまうと、お腹をへこませているつもりでも、腹横筋が収縮することなく終わってしまう場合もあるので、最後まで吐き切るようにしましょう。

腹横筋の機能が高まってくると、徐々に収縮が早く起こるようになり、ドローインの初期から収縮するようになってきます。
腹横筋の収縮を手で感じ取るためには、左右の上前腸骨棘の内側に指をあてておくと良いでしょう。お腹がへこんでいったあとに腹横筋が収縮して指を軽く押し返してくる感覚があります。

ドローインの回数

ドローインを行う回数は明確には決められていないので、目安となる回数をご紹介します。

スクワットやダンベルトレーニングで使うような手足の大きい筋肉(アウターマッスル)は、トレーニングをやりすぎると疲労を起こしたり、筋肉を傷めてしまって逆効果になってしまったりする可能性があります。そのため、多くの場合、何回を何セットという形で回数を決めて行います。

一方、ドローインで主に使っている腹横筋は、座位や立位など姿勢を維持しているときにも常時収縮し続けるべき筋肉です。何回と数えられるレベルで収縮させたからといって疲労を起こしたりすることはなく、ドローイン自体も負荷の強いトレーニングではありません。
よって、ドローインは一度に何回行っても構いません。

ただ、一つの目安として10回前後行うなかで、前に述べたように腹部を触診して少しでも腹横筋の収縮がはっきりしてきたり、反応が早くなったと感じられたりしたら終了するのが望ましいかと思います。

ドローインの頻度

ドローインを行う頻度も明確に規定がないので、目安となる頻度をご紹介します。

ダンベルなどを用いた負荷の強いアウターマッスルの筋トレは、一度行うと2~3日はあけて行うのが望ましいです。
これには、筋トレで筋肉が微細断裂を起こして超回復する(元の筋肉より強くなった状態で修復する)のに数日かかるからという理由があります。

ドローインでは、このような損傷と修復という過程を経ることはまずありません。
また、腹横筋は姿勢保持などで毎日使うべき筋肉です。
これらの理由から、ドローインはできる限り毎日行うことが望ましく、頻繁に繰り返し行うことで収縮の反応が良くなり、早く機能を高めることができます。
感覚を高めるように意識して行なっていきましょう。

おわりに

今回は、お腹痩せに効果的なドローインの正しいやり方や効果をご紹介しました。
動きも小さく地味なトレーニングですが、筋トレなどに慣れていないトレーニング初心者でも始めやすく、かつ大変効果が期待できます。
継続して行うことで、お腹の引き締めはもちろん、腰痛予防や体幹機能の向上にもつながります。ダイエット目的の方も、スポーツパフォーマンス改善が目的の方も、是非取り入れていただきたいと思います。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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