はじめに

腰痛の原因には血行不良や筋力の低下、骨盤の歪みなどさまざまな原因があります。また、デスクワークや力仕事、立ち仕事などは腰に負担がかかり椎間板ヘルニアの原因となります。重たい荷物を持ち上げたり、無理な姿勢は思っている以上に腰にストレスが加わっています。椎間板ヘルニアとはどのような病気なのでしょうか?

椎間板ヘルニアとは

鼠経(そけい)ヘルニアや臍(さい)ヘルニアなど様々な種類のヘルニアが存在します。

椎間板ヘルニアは、無理な圧力や力が加わることにより、クッションの役目のある椎間板の中の軟骨が飛び出してしまうことを言います。椎間板は、線維輪という円形の軟骨と髄核というゲル状の組織から成り立っています。椎間板ヘルニアではクッションの役目の一部である髄核が飛び出してしまうのです。

この寒天状の物質が飛び出して神経などを圧迫すると腰や足に痛みやしびれとして現れます。この症状を座骨神経痛と呼びます。症状が進行すると足を動かすのも困難になることがあります。

椎間板ヘルニアの原因

椎間板ヘルニアは、腰に大きな負担がかかることで起こりますが、生活習慣や加齢、遺伝などが関係していることもあります。

原因1.生活環境

立ち仕事や力仕事など腰に負担がかかる仕事の方は、椎間板ヘルニアを起こしやすいと言えます。急に重たい物を持ち上げるなど、腰に急激な負荷がかかる時は注意が必要です。また、デスクワークなど悪い姿勢で作業を行ったり、トラックやタクシーなどの長距離ドライバーなども椎間板ヘルニアにかかるリスクが高くなります。

また、タバコを吸う方も吸わない方と比較して椎間板ヘルニアを起こしやすいです。これは、タバコに含まれる「ニコチン」が、椎間板周囲の毛細血管を収縮させることで、栄養がうまく届かず、椎間板が変性してしまうからです。

原因2.年齢

骨は加齢と共に低下していきますが、椎間板ヘルニアは20代~40代など若い世代に起こりやすい病気です。これは加齢によって線維輪の弾力性が衰えても、その中にある髄核は、まだ十分に水分が含まれていて、弾力性があるからです。そのため、椎間板に圧力が加わると、一時的に椎間板の内部圧力が高まります。すると、線維輪の亀裂から髄核が外に飛び出してしまうことがあるからです。

原因3.遺伝

骨の造りや体格・体質などが関係していることがあります。椎間板ヘルニアの家族既往歴のある方は要注意です。

原因4.育児

現在、育児中という方も注意しましょう。育児はしゃがんでオムツを交換したり、赤ちゃんをベットから抱き上げる時にも腰に負担がかかります。抱っこや授乳などは想像以上に腰に負担がかかっています。

椎間板ヘルニアの予防法

椎間板ヘルニアは20歳代~40歳代など働き盛りの方に発症しやすい病気です。症状が進むと足を動かすのも困難になるなど日常生活に支障をきたしてしまいます。日常生活に注意することで予防することができます。

1.姿勢に注意する

姿勢を正すことは、腰痛を引き起こさないためには大切なことです。腰の負担を軽減するためにも背もたれにお尻をしっかりつけて、背筋を伸ばして座るようにしましょう。両ひざは揃えた状態で両足は床につけるようにします。

正しい姿勢でも長時間座っていると腰の筋肉などに負担がかかるため、1時間に1回は立ち上がりストレッチをするなどリラックスするようにしてください。

2.低い姿勢で膝を曲げる

重たい荷物を持ち上げたり、赤ちゃんを抱きかかえる時などは、低い姿勢で膝を曲げることで腰への急激な負担を減らすことができます。反対に前かがみの状態で急激に持ち上げると腰を痛める原因となります。

3.体重を管理する

過剰な体重増加は、心臓や脳などの血管系以外にも腰に負担がかかります。体重が増加すると腹部が出てくるようになりますが、お腹が出ることによりのけ反った姿勢になります。適度な運動やカロリーを抑えた栄養バランスの摂れた食事などで体重を管理するようにしてください。

4.ストレッチで筋力を維持

腰の筋肉が低下すると椎間板ヘルニアにかかりやすくなります。腰や腹筋、背筋などの筋肉を鍛えることで腰の負担が軽くなります。

椎間板ヘルニアの治療法

椎間板ヘルニアには手術療法や保存療法などがあります。それぞれの治療法について解説します。

薬物療法

急性期には消炎鎮痛薬や筋弛緩薬などを用いて痛みを和らげます。炎症を抑えたり、筋肉の緊張を和らげることで痛みを取り除きます。

神経ブロック治療

椎間板ヘルニアは痛みが激しいため、痛みを和らげるために神経ブロックを行うことがあります。局所麻酔やステロイド剤などの薬剤を注射します。

手術療法

内服療法などでは症状が改善せず、痛みが強く日常生活に支障がある場合は、手術療法を行います。手術は背中側から行い、突き出ている寒天状の物を取り除きます。また、レーザーなどを使って、圧力を下げ、突き出している部分を引っ込ませるなど方法もあります。また、内視鏡を用いた方法や特殊な金属で骨を固定する方法もあります。どの術式も医師と相談しながら自分の症状に合った方法を選ぶようにします。

リハビリ療法

内服療法などで痛みが和らいできた場合は、牽引療法で腰や筋肉を伸ばしたり、筋肉の血行を良くしてコリをほぐすために温熱療法など行うこともあります。また、ストレッチを行う運動療法やコルセットを着用するのも効果があります。

おわりに

無理に腰をつかうと椎間板ヘルニアの原因になるので、腰に負担がかからない日常生活を送るようにしましょう。日常生活の動作に気をつけたり体重管理などは再発予防にも繋がります。

若いからといって無理な姿勢や腰への負担をかけないようにしましょう。良い姿勢は椎間板ヘルニアの予防と共に、様々な健康効果をもたらします。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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