はじめに

『偏平足』という言葉やおおよその状態は一般的にもよく知られているかと思います。しかし、偏平足が体にどのような影響を及ぼすのかということや、偏平足を自分で改善することができるということはあまり知られていないのではないでしょうか?

足の状態を整え、少しでも強く健康的な足にするために、今回は偏平足の原因や症状、予防についてまとめてみました。

偏平足とは

足の内側には、一般的に『土踏まず』と言われる縦アーチがあり、地面から浮いている部分があります。
しかし、人によってこのアーチが下がって足の裏全体が地面についている場合があります。この状態を『偏平足』と言います。

本来足の裏のアーチは、歩行やジャンプ着地など足に体重がかかった時につぶれることで衝撃を吸収するクッションの役割をしています。しかし偏平足の人は、このクッションの役割が低下しているので、足への衝撃を吸収する機能が低下しています。

幼い子どもの場合は、足の筋肉や腱が発達するとともにアーチができてくるので心配することはありませんが、年齢を重ねてもアーチが形成されない場合は足の痛みなどが出る前に改善するほうがよいでしょう。

偏平足の原因

偏平足の原因は先天的なものと後天的なものがありますが、ほとんどが後天的な偏平足です。

1.先天的偏平足

足首からつま先までの間にはたくさんの骨があり、骨格には個人差があるため、アーチの程度は人それぞれです。その中でも、骨の異常によって偏平足となる場合があります。程度や症状、合併症によりますが、そのような場合は手術をする可能性もあります。

2.後天的偏平足

骨格には異常がないものの、アーチを支えている足の様々な筋肉や腱の機能が低下してしまったことによって起こる偏平足です。

アーチを支えるために大きな役割をしているのが、『足底腱膜』です。足底腱膜は、踵の骨から足の趾の付け根についており、足の裏全面に『熊手』のような形状で張り巡らされています。足の裏は体重がかかるとアーチがつぶれるようとしますが、足底腱膜がぴんと張ることでアーチを保ちます。

足の裏が引き伸ばされたときに張ることで足底腱膜と同じような働きをするものには、足の趾を曲げる働きをする『足趾屈筋』もあります。足底腱膜は、足の趾を反らすことでも張りが強くなるため、足の趾を反らす際に主に働く『足趾伸筋』も間接的ではありますがアーチ保持のために働きます。

運動不足はもちろん、ハイヒールや足に合っていない窮屈な靴を履いて足の機能を十分に発揮されない状態で生活していると、足底腱膜や足趾の屈筋、伸筋などといった足の周りの筋腱の機能が低下してしまいます。これが後天的な偏平足を作る原因となってしまいます。

偏平足の症状

偏平足だからといって、日常的に症状がでることはあまりありません。しかし、衝撃吸収機能が低いので、長時間の立ち仕事や歩行などでは足部やふくらはぎ、太ももに疲労を感じやすいこともあります。

スポーツ競技において練習量が多いとき、普段以上の歩行量があったときなど、足首や膝だけでなく足先の小さい関節なども含めオーバーユース(使いすぎ)による関節痛がでやすかったり、疲労骨折を起こしやすかったりします。

また、症状とは異なりますが、アーチが潰れたり戻ったりすることでスプリングの役割をすることから、その機能が少ない偏平足の人は短距離走や跳躍系の競技は比較的苦手な傾向にあるとも言われています。

偏平足の治療法や予防法

偏平足による痛みなどの症状がでた場合、足への負担の少ない靴を使用すること、インソール(中敷き)やテーピングによってアーチを上げるようにすることで、症状が改善できることがあります。また、足の痛みがひどくない段階であれば運動療法によっても偏平足を改善することができます。

しかし、神経の麻痺や骨の変形などの症状が強く、保存療法では改善が見られない場合には手術療法が選択される場合もあります。

ここからは、偏平足の痛みを改善するだけでなく、偏平足の予防のためにも役立つ生活習慣や運動をご紹介していきます。痛みや骨の変形などが強くなり、手術をすることにならないためにも、日常生活内でよいアーチができるような習慣、また予防法を行っていきたいものです。

1. 裸足で生活する

裸足でいるときは、スリッパや靴下を履いているときに比べて足の趾が自由に動かせます。また、足の裏から入力される刺激の量も多く、地面の微妙な傾きや凹凸も感じとることができます。その結果、自然に足の筋肉や腱が鍛えられます。

特に幼少期に裸足で生活することが大切で、裸足で外を走り回っていた子どもはそうでない子どもに比べて足が速いとも言われています。また、草履や下駄も足の機能を高めるためによい影響を及ぼすので、家の中でもスリッパではなく草履のように足の指が分かれているようなものを使用することをおすすめします。

2. 足の趾を使うような遊びを取り入れる

アーチを作るために必要な足底腱膜や足の指の屈筋、伸筋は足の指を動かすことで鍛えられますが、日常生活ではなかなか足の指を使う機会がありません。そこで、お風呂に入っているときやテレビを見ながらの隙間時間を利用したり、お子様との遊びの中に足の指を使う遊びを取り入れていただくことをおすすすめします。

1)ゴルフボールマッサージ
足の裏でゴルフボールを踏み、ころころ転がします。硬くなった足の裏の筋肉や腱をほぐすとともに、足の裏に入力される情報を元にボールをコントロールすることで足の裏が上手く使えるようになります。

2)足の趾でグーチョキパー
足の指でグーチョキパーをすることで、足の指を開いたり閉じたりします。しっかり開くことができなければ、そこから指を噛んでしっかり地面をつかむこともできないので踏ん張りが効きにくい足になってしまいます。

3)ビー玉掴み
お皿の中に入れたビー玉を足の指で掴んで別のお皿に移動させます。足の指を脳からの命令通りに動かす練習をすることができます。

4)タオル綱引き
2人でタオルの端と端を足の指ではさみ、引っ張り合います。足の指に思い切り力を入れることでアーチを作ります。

このほかにも、色々な運動療法があると思いますが、決まりはありませんので、工夫をしながらできるものから取り入れてみてください。

おわりに

偏平足は、元々生まれ持った気質であると思われがちですが、運動不足や間違った足の使い方などから誰もがなり得るものです。

健康な足で好きなだけ好きな場所に行けるように、ご自分の足、ご家族の足について今一度見直してみていただければと思います。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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