はじめに

世の中にはたくさんの医薬品が販売されています。何かしら体調に不調をきたした場合、皆さんは病院で医師に診てもらってから薬を貰う場合と、自分でドラッグストアなどで薬を購入する場合もあるかと思います。病院で貰う薬とドラッグストアで購入できる薬はどのように違うのでしょう?そんな疑問の解説と最近始まったセルフメディケーションについても解説します。

セルフメディケーション税制とは?

指定された市販の医薬品をある一定額以上購入した際に減税(医療費控除の特例)をうけることができる制度

平成29年の確定申告から適用される制度です。
特定成分を含んだ市販の医薬品を購入した場合において1月~12月に支払った合計額が1万2千円を超えるとき(上限は8万8千円)について、その年分の所得金額等から控除されるというものです。
例えば課税所得が400万円で、対象医薬品を2万円購入した場合は控除額は8000円となります。ただし8000円がそのまま免税されるというわけではありません。所得税と住民税において以下のように計算されます。

所得税(国税)
控除額8000円×所得税率20%=1600円
住民税(地方税)
控除額8000円×個人住民税率10%=800円

この合計の2400円が減税額として免税を受けることになります。

そもそも医薬品の定義って?

薬に関する法律である「薬事法」にはこう定められている

・日本薬局方収載のもの

・ヒトまたは動物の疾病の診断、治療又は予防に使用される事が目的とされているものであって、器具機器(歯科材料、医療用具及び衛生用品)・医薬部外品・化粧品・再生医療等製品でないもの

・ヒトまたは動物の構造・機能に影響を及ぼすことを目的とするもので、器具機器・医薬部外品・化粧品・再生医療等製品でないもの
(2条一項より)

この3つを簡単に説明しますと、医薬品を使用する対象はヒトや動物で、病気になったかどうか確かめる(診断)と病気を治す(治療)と病気になるのを予防する(予防)の3つで使用するということになります。
また、医薬品は医療用医薬品と一般用医薬品(市販薬)の2つのタイプに分かれています。

医療用医薬品と一般用医薬品(市販薬)の違いは何なのでしょうか?
下記にてその違いをご説明します。

医療用医薬品と一般用医薬品(市販薬)の違い

医療用医薬品

医療用医薬品は、医師または歯科医師によって使用されること、あるいは、医師または歯科医師によって処方せんまたは指示によって使用されることを目的として配給される医薬品になります。

この内、約2/3が厚生労働大臣によって指定された「処方せん医薬品」となっています。

処方せん医薬品(処方薬)とは

処方せん医薬品(処方薬)とは、医師等の診断に基づき、治療方針が検討され、耐性菌を生じやすい、または使用方法が難しい等のため、患者の病状や体質等に応じて適切に選択されなければ、安全かつ有効に使用できない医薬品になります。
そのため、医師や歯科医師に診て処方せんが出ないともらえない医療用医薬品になります。

例えば、下記が処方せん医薬品です。
・感染症において細菌の種類に応じて使われる抗生剤
・作用が強力なステロイド製剤
・抗がん剤などの注射薬

ビタミン剤や漢方製剤などは医療用医薬品だが、処方せん医薬品ではありません。

一般用医薬品(市販薬)とは

一般用医薬品(市販薬)とは医者の診断によらず、患者またはその家族が症状に基づいて自らの判断で購入できる医薬品になります。
主に、ドラッグストアや調剤薬局でも購入可能な医薬品になり、OTC医薬品とも呼ばれています。

市販で医療用医薬品が購入可能!?

いつも処方してもらってるかぜ薬は市販で買うことはできないだろうかと思ったことがある方もいるかもしれません。

実は、処方せんがなくても販売可能な薬があります。
医療用医薬品の成分を含んだスイッチOTCとダイレクトOTCといわれるものになります。

スイッチOTCとは、以前は医療薬であったものが、市販薬として薬局でも買えるように販売が許可されたものになります。

ダイレクトOTCとは、医療用に使用されていなかった新しい有効成分を含んだ医薬品を一般用医薬品として販売したものです。
ダイレクトOTCは医療用で使用された医薬品ではないため、実績が少ないことがあります。そのため、使用に関しては注意が必要な医薬品とし位置づけられてはいます。

上記の薬の一例にはなりますが、一部の風邪薬や胃薬、漢方薬など病院でもらえるものと同じ成分の医薬品が購入できるようになっています。ただし、作用が強力な処方せん医薬品は販売されていません。

市販用医薬品にも副作用に注意が必要

手軽に購入できる市販薬ですが、医療用の医薬品と同じく副作用には注意が必要です。
特に薬剤師の説明を受けないと購入できない第1類医薬品は薬剤師から副作用について重要な説明が行なわれます。
例えば痛み止めで有名なロキソニンであれば、胃や腸への副作用が代表的な一例としてあげられます。薬に入っている説明書には以下のように記されています。

”服用後、消化性潰瘍、むくみがあらわれた場合、また、まれに消化管出血(血を吐く、吐き気・嘔吐、腹痛、黒いタール状の便、血便等があらわれる)、小腸・大腸の狭窄・閉塞(吐き気・嘔吐、腹部膨満感があらわれる)の重篤な症状が起こることがあります。その場合は直ちに医師の診療を受けて下さい。”

このように、市販薬を使用される際は、注意をよく読み購入された方が良いでしょう。

まとめ

市販薬はドラッグストア等、診察を待たずして手軽に購入することができます。値段も手頃な価格から購入することができます。しかし、市販薬で治せるものには限界があります。

例えば、風邪であれば、咳や鼻水など症状を抑えることができます。風邪の症状は体の免疫反応で、時間が経つと鎮静して治癒となりますが、のどに細菌が入る気道感染などになると咳などの症状を和らげるために市販薬で対応することはできますが、原因となる菌を殺菌しなければなかなか治癒しません。

菌を殺菌する抗菌薬は医師の診察を受け処方箋を発行してもらわなけらばならない処方せん医薬品です。そのため風邪の症状が治りにくい場合は病院やクリニックを受診しましょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田 早苗

・総合診療医 院長 豊田 早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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