はじめに

痩せたいのになかなか痩せられない、ダイエットを始めるもなかなか体重が減らない……そう思っている人も大勢いらっしゃるのではないかと思います。そんな方にも効果が現れやすいのが肥満防止薬です。肥満防止薬はその名の通り肥満を予防する薬なのですが、実は効果がある反面、副作用や飲んではいけない人などがいるため、飲む前に一度確認してみましょう。

肥満防止薬とは

肥満防止薬とは、食欲や脂肪の吸収を抑えることで肥満を解消し、肥満によって生じる様々な症状を緩和することを目的とした薬です。

この肥満防止薬には大きく分けて、腸管での脂肪の吸収を抑えるはたらきをする「脂肪吸収抑制剤」と、食欲を抑える「食欲抑制剤」の2種があります。

肥満防止薬の効果

脂肪吸収抑制剤

脂肪吸収抑制剤は、脂肪分の分解を抑制して腸管での吸収を抑制し、その分を排出する作用があります。そのためたくさん脂肪の含まれる食品を食べても、その一部が吸収されるのみで、あとは排出されてしまうため、痩せやすくなるのです。
代表的な薬としては「ゼニカル」、「オルリファスト」、「オブリーン」とよばれるものが有名です。

食欲抑制剤

食欲抑制剤は、満腹中枢に作用して食欲を抑制する作用があります。代表的な薬としては「サノレックス」がありますが、この薬は脳の中枢神経に作用して食欲を減退させる作用をもつため、「第3種精神薬」に分類されます。厚生労働省が認可しており国内で使用されている薬ですが、原則として医師による処方が必要で、肥満度+70%以上もしくはBMI35以上の人が対象となります。

肥満防止薬の副作用

肥満防止薬はそれぞれに効果があると同時に、それぞれに副作用があります。

脂肪吸収抑制剤

脂肪吸収抑制剤では、脂肪の吸収を抑えてその分を排泄してしまうため、下痢や軟便などの副作用があります。また脂肪分をそのまま排泄する効果があるため、便をする際にドロッとした油っぽい成分が一緒に出てくることがあります。

さらに脂肪に溶けて一緒に吸収される脂溶性ビタミンも一緒に排泄されてしまうため、これらのビタミンが不足することがあります。主な脂溶性ビタミンはビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどがあります。これらが不足すると、皮膚や粘膜の乾燥、骨粗鬆症、感覚障害や神経障害といった様々な症状が現れることがあるため、不足した分のビタミンはサプリメントなどで補いましょう。

食欲抑制剤

食欲抑制剤の主な副作用としては、動悸や息切れ、頭痛、吐き気、口渇感、便秘などがあげられますが、最も怖い副作用は薬物に依存してしまうことです。サノレックスをはじめとした食欲抑制剤は、脳の中枢神経に作用する薬です。そのため長期間内服を続けていると、薬への耐性ができてしまい、薬をやめられなくなってしまう「薬物依存症」の状態になってしまうことがあります。

また、急にやめてしまうことで強い不安が現れたり、イライラして集中できない、痙攣、幻視などといった離脱症状が出ることもあるため、薬の内服は医師ときちんと相談したうえで、用法用量を守って内服しましょう。

肥満防止薬を飲んではいけない人

脂肪吸収抑制剤

脂肪吸収抑制剤を飲んではいけない人としては以下の人があげられます。

・胆石症の人
・肝臓やすい臓、腎臓や消化器系に疾患のある人
・妊娠中や授乳中の人
・ワルファリン等、経口抗凝血剤を使用している方

通常胆のうは「胆汁」を分泌して、腸管で脂肪の消化・吸収を助ける役割がありますが、脂肪吸収抑制剤を飲んでいると、この胆汁が胆のうにたまりやすくなってしまうことがあります。この状態が続くことで胆石ができやすくなるとされているため、胆石症の人は禁忌とされています。また肝臓やすい臓でも脂肪の消化・吸収を助けるはたらきをしているため、これらに疾患を持っている人は脂肪吸収抑制剤は飲めません。

食欲抑制剤

食欲抑制剤を飲んではいけない人は以下の通りです。

・緑内障の人
・心臓やすい臓、肝臓、腎臓などに重度の疾患がある人
・重症高血圧症の人
・脳血管疾患のある人
・精神障害のある人
・薬物依存の既往がある人
・妊娠中・授乳中の人

食欲抑制剤は脳の中枢神経に作用することで食欲を抑制しますが、この時に神経終末においてカテコラミンの再吸収を抑制する効果もあることから、アドレナリンやノルアドレナリンといった昇圧アミン系が上昇することが分かっています。これらは循環器系に大きく作用し、眼圧や血圧をあげるといった作用も見られるため、上記の人では症状が悪化する恐れがあり、食欲抑制剤を飲むことはできません。

おわりに

肥満防止薬は、肥満を改善するためにはとても有効な薬です。しかし効果がある反面、副作用や薬物の内服が禁忌とされている人もいます。そのため、内服する際には必ず医師の指示や用法用量を守って飲むようにしましょうね。上手に肥満防止薬を取り入れて、肥満を改善しましょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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