はじめに

「油」「脂」と聞くと、ほとんどの人があまり良いイメージをもちません。「油脂を摂ると太る」そう思う人がいるからではないでしょうか。でもこの日本語は間違っています。「油脂を摂りすぎると太る」これが正解です。そして、同じ「摂りすぎ」でも太りやすい油と太りにくい油があるのも事実です。
これはもう知っておくしかないですよね。

油が太ると言われる理由

油、栄養学的に言うと「脂質」ですが、まずはこの脂質の良い面をお話しします。

三大栄養素といえば、炭水化物、たんぱく質、そして脂質ですが、炭水化物とたんぱく質を1g摂取しても4kcalしかエネルギーが発生しないのに比べ、脂質は1gで9kcalのエネルギーが発生します。つまり、少量で多くのエネルギーを作れる良いバッテリーということです。そして、この脂質は、体内で、細胞が活発に働くための潤滑油となったり、体の表面(皮膚)に潤いを与えたり、また、ビタミン類(油にしか溶けない性質を持つビタミンA、D、E、K)を体内で吸収させるという大切な働きもあります。

そんな良い面も持つ油が、なぜ太るのか。一つは、油のコクが食事のおいしさを高めるからです。その上、油を多く含む食材や料理が、他と比べて必要以上に摂りすぎてしまうことも太る原因になります。というのは、炭水化物やたんぱく質を摂取するときは、その性質から、水分が必要になるのですが、脂質は水と相性が悪いこともあり、水がなくても摂取できます。そのため、食べる料理の油の量が多いと、カサが減り、その分多く食べ過ぎる結果となるのです。そして、前述の通り、少量で高カロリーを生み出してしまうため尚更です。

太りにくい油とは

油(油脂)による「太りやすさ」「太りにくさ」の要因の一つが「抗酸化」です。体の中の細胞は、酸化することで様々な支障をきたします。肌の老化、消化吸収機能の低下、むくみ、そして肥満です。ずばり、抗酸化機能をもつ油がこれらの問題を解決してくれるということになります。

・アボカドオイル

最近は、アボカドそのものではなく、抽出して液体の油で売られているものも多いですが、通常の油と大きく違うのは、果実であるため食物繊維やビタミンEが豊富だということ。
実は、ほとんどの「太らない油」は、自身が酸化しやすい性質であるため、それを防ぐ抗酸化物質と一緒に摂取することが、体内で吸収されやすくなるポイントです。抗酸化物質であるビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール、セサミンなどが大きな役割を果たしてくれます。そして、アボカドなので、サラダやパスタの具材、また、スムージーにしたり、と美味しく幅広く利用できるのも大きな特徴です。

・グレープシードオイル

その名のとおり、ぶどうが原料になっている油ですが、この油のメリットは、ぶどう本来の成分であるポリフェノールに加え、ビタミンEがオリーブオイルの2倍含まれ、抗酸化物質が豊富な点です。また、オリーブオイルほどクセもないため、サラダのドレッシングから揚げ油まで、油としての用途が様々です。

・ココナッツオイル

油は油でも、ある程度の温度まで安定した性質をもつため、固形状の製品も作ることができます。油の性質としては、ラウリン酸という中鎖脂肪酸をもつ点。この油は、脂肪燃焼効果があると言われ、運動前に摂取すると、より効果が期待できます。

・ごま油

中華料理には欠かせないごま油は、セサミンとビタミンEという強力な抗酸化作用を発揮するため、他の油に比べて安定しており、保存も効きます。香りが強いがゆえに、様々な料理にアクセントをつけることができるのも大きな特徴です。

太りやすい油とは

・飽和脂肪酸

主に、動物性の食品に多く含まれる油脂で、肉、肉加工品、バターやチーズなどの乳製品などが代表的なものです。
これらの油は、体内である一定の量を超えると、中性脂肪やコレステロールを体内にためやすくなり、その分太ってしまいます。
ちなみに、「脂」は常温で固体のもの、「油」は常温で液体のものです。

・n-6系脂肪酸

油は、体内で合成されるものと合成されないものがあります。合成されないものは、体にとって必要であるため食べ物から摂る必要があります。「必須脂肪酸」と呼ばれるのですが、その中でも、摂りすぎると逆に悪い効果を発揮してしまうものがn-6系脂肪酸です。リノール酸とアラキドン酸という油です。卵や肉、一部魚にも入っていますが、実は、同じ量で比較すると、これらの食品よりもコーン油や大豆油のほうが多く含まれています。同じ植物性の油の中でも、厳選して使っていくことが必要になってきます。

太りにくい油を使ったおすすめレシピ

ポイントは、油の効果を維持、またはアップさせる組み合わせです。

・一品で栄養抜群!中華風海鮮丼

良質なたんぱく質とn-3系脂肪酸を合わせもつ刺身と抗酸化作用抜群のごま油とごま、そして好きな野菜をごはんの上に乗せれば簡単ダイエットメニューの完成です。
材料(1人分)
刺身(青魚にn-3系脂肪酸が含まれます)100g
ごま油 小さじ1
濃口醤油 大さじ1
みりん 小さじ1
ごま(すりごま、いりごまどちらでも可)小さじ1
キャベツ 1枚
ごはん 1人分
作り方
① ごま油、濃口醤油、みりん、ごまを合わせる。キャベツは千切りにする。
② 丼にごはんを盛り、その上に①のキャベツ、刺身を乗せる。
③ ①の調味料を全体に回しかけたら出来上がり。

・鶏肉の塩麹焼き

シンプルな料理ですが、実は、塩麹などの発酵食品とグレープシードオイルなどの抗酸化物質を含む油は相性抜群。焦げるのが嫌であれば、焼く前にパン粉をまぶすと防げます。もちろん、塩麹でなくても、同じ発酵食品である味噌や酒粕も同様の効果が得られます。
材料(1人分)
鶏むね肉(もも肉でも可。もちろん、牛肉、豚肉でもOK) 1枚約100g
塩麹 大さじ1
グレープシードオイル 大さじ1
バジル お好みで
作り方
① 鶏むね肉にフォークで数か所刺し、味が浸透しやすくし、塩麹を全体にかけて30分程度置く。
② グレープシードオイルを全体にかけ、オーブンで焼く。
③ お好みでバジルをかけたら出来上がり。

太りにくい油を食べるときの注意点

最初にお話ししたとおり、太りにくい油の共通点は、自身が酸化しやすいこと。決まった保管方法は必ず守りましょう。せっかくの良い油が体に悪影響を及ぼしてしまうことになりかねません。
そして、太りにくい油も所詮「油」。1日の目安量は最大でも大さじ1。他の料理でも様々な油を摂取すると思うので、量より質で勝負しましょう。
また、レシピで示したとおり、油単独ではなく、たんぱく質や発酵食品、ビタミン類(ビタミンA、D、E、K)と組み合わせることで、体内での効果をより発揮させます。
栄養・薬と思って食べるのではなく、美味しく「食事」「料理」として油を摂ってくださいね。

おわりに

食材や料理に必ず入っている、そして体にとって大切な油。いつもは同じサラダ油しか使っていなかった方も、これからは、料理に合わせて太りにくい油を使うことができそうです。体重は減らして、でも、レパートリーは増やしましょう。ぜひオリジナルのオイルレシピを作ってみてください。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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