禁煙外来とは

禁煙外来は、ある基準を超えたタバコのニコチン依存症に対し、病気の一つとして病院でサポートを受けながら禁煙をするためにできました。総合病院だけでなく、内科、循環器科、産婦人科、外科、心療内科、耳鼻咽喉科などさまざまな診療科で禁煙外来が行われているようです。
禁煙外来では医師が現在の状態を把握し、禁煙補助薬の処方をしてくれます。血中の一酸化炭素濃度などの測定をして経過を診るとともに、禁煙補助薬の副作用が出た場合には対処してもらえます。

この禁煙外来は、2006年4月からある一定の条件を満たせば、健康保険を使う事ができるようになりました。保険適応できる条件は以下の通りです。全ての条件が満たされれば保険適応となります。
1. ニコチン依存症のスクリーニングテスト(TDS)の結果が5点以上で、ニコチン依存症と診断された場合。
2. ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上の場合。
3. 直ちに禁煙をする事を希望する場合。
4. 「禁煙治療のための標準手順書」に則った禁煙治療について説明を受け、その禁煙治療を受けることを文章により同意した場合。

禁煙外来としての治療期間は8~12週間です。この期間が終わっても禁煙できず、初回診療日の1年以内に再度、禁煙治療を望む場合は自由診療となります。1年以上経過している場合は保険治療が可能なようです。

禁煙外来と禁煙のメリット

禁煙外来のメリット

●自己流で失敗してきた人も成功する可能性がある
「何回も禁煙に挑戦してきが、いつも失敗してしまうという」方は少なくないと思います。
もちろん個人差はありますが、そのような方でも、禁煙外来で処方される禁煙補助薬で、かなりタバコを吸いたい気持ちが減る可能性があります。「病院に行ったって禁煙は無理」と諦めている方でも、禁煙外来に行ってみたら、タバコをやめられたという事もあります。物は試しで、禁煙外来に1度相談に行ってみてもいいかもしれません。

●禁煙をサポートしてくれる人(医師)ができる
禁煙外来では初回診察から2、4、8、12週間後と5回程度の通院をします。その通院の際に血中の一酸化炭素濃度を測定されるため、タバコを吸ってしまうと測定値にはっきりと出てしまいます。しかし、その測定があるからタバコを吸いたい気持ちが我慢できるという方もいらっしゃるようです。
また、診察で測定する事が禁煙の励みにもなります。
このように、一酸化炭素濃度を測定されつつ、禁煙を一緒に見つめてくれる医師がいる事も禁煙外来の大きなメリットのようです。

●薬で禁煙できる可能性がある
従来の禁煙では、ニコチンパッチやニコチンを含んだガムが主流でした。しかし、ニコチンパッチは肌が弱い人には使えず、ニコチンを含んだガムは仕事中などでは噛めない場合も多くあります。
近年では禁煙外来で処方される薬は、禁煙治療経口補助薬『チャンピックス』が主流となっています。そのため、飲むだけで喫煙の欲求が抑えられるのも、メリットの一つといえます。

禁煙のメリット

●タバコに含まれる有害物質を取り込まなくなる
タバコの煙には4000種類の化学物質が含まれており、その中には200種類以上の有害物質が含まれています。その200種類以上の物質の中で、発がん性物質は50種類以上もあります。
タバコの有害性はニコチンやタールなどが良く知られています。それだけでなく、ペンキの除去剤に含まれるアセトン、ライターの燃料に含まれるブタン、アリの殺虫剤に含まれるヒ素、バッテリーに使われるカドミウムなど、驚くような有害物質が含まれています。これを聞いただけでも禁煙するメリットは充分にあるように思えます。

●禁煙により病気のリスクが下がる
日本人のがんの部位別死亡率の1位が肺がんです。肺がんの場合、喫煙による発症リスクが4~5倍高く、男性では約70%、女性では20%がタバコの要因で肺がんになっていると言われているようです。
「もう手遅れ」と言う方もたまにいらっしゃいますが、喫煙は肺がんにとって高リスク因子です。吸い続けるよりも、禁煙した方が肺がん発症のリスクが低下すると言われています。
肺がん以外では、脳卒中、心筋梗塞、動脈硬化、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドローム、胃潰瘍、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺炎、喘息、うつ病、バセドウ病、骨粗鬆症などの疾患の要因となるものの一つが喫煙と言われています。

禁煙外来の禁煙成功率

以前は、禁煙補助薬としてニコチンパッチを使用することがほとんどだったと前述しました。ニコチンパッチでの禁煙成功率は約22.2%と言われています。近年使用されている禁煙治療経口補助薬のチャンピックスでは、禁煙の成功率は55.5%となっているようです。

禁煙外来の費用

保険を使って禁煙治療を受けると、どのくらいの費用になるのか気になるところです。処方によって異なりますが、目安としては、自己負担3割として8~12週間で13,000~20,000円程度です。
ちなみに、タバコを1日1箱吸う場合、8~12週間にかかるタバコ代は約24,000~36,000円程度です。
この場合、禁煙治療の費用は禁煙治療の期間のタバコ代より安いので、タバコを吸う代わりに禁煙治療した方がお得に感じませんか。普段のタバコ代を考えると、禁煙治療の費用は思いのほかハードルが低いようです。

禁煙治療の副作用

禁煙外来では現在、禁煙治療経口補助薬での禁煙治療が主流となっています。禁煙治療経口補助薬、チャンピックスの副作用には、抑うつ症状の増悪、悪夢、幻覚、意欲低下、不眠、嘔気などの消化器症状などがあります。
ただし、この副作用が出た場合、禁煙外来の担当医師が副作用にも対応してくれます。何かあればすぐに医師に相談できるのも、禁煙外来のメリットです。

おわりに

長年、喫煙をしていると「今さら禁煙したって」と思いがちです。しかし、禁煙するのに遅いという事はありません。少しの禁煙で病気の発病率が低下したり、体調が改善したりする事もあるようです。
費用面でも、喫煙するより禁煙外来で禁煙した方がお得ですし、長い年月で考えれば、さらにお金が節約できます。
「病院行ってまで禁煙?」と何となく敬遠している方も少なくないと思います。しかし、禁煙から得られるメリットを考えると、思い切って禁煙外来に足を運んでみるのも良いのではないでしょうか。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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