妊娠後期、臨月とは

妊娠後期とは、妊娠8~10ヶ月(28~39週)のことを言います。
一方、臨月は妊娠10ヶ月(36週〜39週)のことです。

28週頃に身長約40cm、体重約1,500gだった赤ちゃんは、39週頃には身長約50cm、体重約3,000gになります。
妊娠後期は赤ちゃんがどんどん大きくなり、生まれてからの生活に適応できるように身体の準備をします。

一方、ママの身体はというと、赤ちゃんへの血液供給量が増えるので、体内の血液量が増え、心拍数も上昇します。貧血になりやすいのもこの時期で、疲れやすかったり、ちょっとした動作で動悸や息切れをしたりするようになります。
また、子宮の収縮に伴い、お腹も張りやすくなってきます。横になって休憩しても張りがおさまらない場合や、1時間に何度も張る場合は、切迫早産の兆候の可能性があるので、早めに産科を受診しましょう。

妊娠中の性欲の変化について

妊娠中はホルモンバランスの変化が著しく、ママの性欲も変化しがちです。

一般的に、妊娠初期はつわりなどで体調が不安定なことが多いため、性欲が減退してきます。中期になると、体調も安定して性欲が回復し、後期になると、出産準備に集中し始めるため減退していくということが多いようです。

しかし、性欲は個人差がとても大きく、妊娠中ずっと性欲がなくなるママもいれば、逆に妊娠前には考えられなかったほど強くなる方もいます。
このような変化に戸惑いがちですが、これは妊娠に伴うホルモンバランスの変化による正常な反応です。妊娠の経過が問題なければ、セックスをすることは可能ですので、過度に心配する必要はありません。

パートナーについても、ママの身体が心配でセックスしたがらない方や、ママの体調に関わらず求めてしまう方など、かなり個人差があります。
ママの体調を第一に考え、パートナーとしっかり話し合ってお互いの気持ちを理解し合うことを大切にしながら、良好な夫婦関係を維持できるようにしましょう。

臨月のセックスの注意点

妊娠中のセックス自体は問題ないとはいえ、やはり正しい知識を持って、母体や赤ちゃんに負担がかかっていないか様子をみながら行う必要があります。
そこで、臨月のセックスについて注意点をまとめていきたいと思います。

1. お腹を圧迫しない

お腹を圧迫することによって赤ちゃんへの血流が悪くなってしまい、赤ちゃんが苦しい状態になります。お腹を圧迫するような体位は絶対に避けましょう。
パートナーの重さで圧迫するだけでなく、ママの足を大きく曲げるような体位でも圧迫されてしまうことがあるので十分注意しましょう。

2. お腹の張りや出血に気にかける

基本的に臨月でもセックスをすること自体は問題ありません。しかし、妊娠後期になると、特に膣内が柔らかくなっており、傷ついたり出血しやすくなったりしています。

セックスの最中にお腹が張ってきたら、子宮が収縮しているサインです。そのときは、一旦中断して、ママがリラックスできる姿勢で安静にしましょう。
また、セックスによって出血がみられるときも、子宮口に負担をかけているか膣の内部を傷つけてしまっているサインです。

3. 長時間の激しいセックスはしない

激しいセックスによる過度の刺激は、膣や子宮の炎症につながる可能性があります。
そのため、ペニスを深く挿入しすぎないことや、ママが痛みを感じない程度にすることに気を付けましょう。

臨月はどんな刺激から陣痛につながるか分かりませんので、セックスの刺激をきっかけに陣痛が始まることが絶対ないとは言えません。長時間の行為や深い挿入など、母体自身が負担に感じるような体位や行為は、母体にも赤ちゃんにもよくないので、絶対にやめましょう。

4. 避妊具を使用する

精液の中には陣痛促進剤と同じ成分が含まれるというところから、臨月のセックスが出産を促すという説もあります。臨月に入っても、妊娠37週に入るまでの出産は早産になってしまうため、赤ちゃんがまだ成熟しきっていない間はコンドームを装着するようにしましょう。

また、細菌感染防止のためにも、妊娠中はコンドームの使用がすすめられています。妊娠中は抵抗力が低下しているうえに、細菌感染を起こすと、母体だけでなく赤ちゃんにも重大な影響を及ぼす可能性があります。

5. 妊娠経過に異常がある時は控える

ここまで、臨月のセックスについて注意点をまとめてきましたが、妊娠中にセックスが可能なのは、妊娠の経過に異常がない場合のみです。
以下のような場合は、セックス自体を控えるか、医師の指示に従って行いましょう。

・出血がある
・切迫早産の徴候がある
・安静指示が出ている
・流産や早産の経験がある
・妊娠合併症の経験がある

おわりに

妊娠中の性欲の変化や、妊娠後期・臨月のセックスの注意点をまとめました。

妊娠や出産については個人によって状態が異なり、なかなか周りの意見や経験だけでは解決しない悩みも多いです。
これから生まれてくる大切な命のためにも、気になることは担当の産科医師にしっかり相談し、安心・安全なマタニティライフを送りましょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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