はじめに

皆さんは瞑想をどのように捉えていますか?

様々な意見があると思いますが、このマインドフルネス瞑想は企業の社内プログラムで取り入れられたりと、休息法として注目されています。

今回はそんなマインドフルネス瞑想について詳しくお伝えします。

マインドフルネスの考え方

マインドフルネスの起源は、原始仏教にあると言われています。19世紀にビクトリア朝時代のイギリス人が、東洋の思想や瞑想法を自分達のためにアレンジしたものです。宗教性を排除して実用面に比重が置かれた瞑想法です。

マインドフルネス瞑想は脳を効率よく休ませることが出来るため、「最高の休息法」として注目されています。最近はマインドフルネス瞑想がGoogle、Apple、IBMなどの著明な先進企業が社内プログラムとして採用していることで有名になりました。東洋の神秘だった瞑想が、最近では科学的「最高の休息法」と考えられています。

マインドフルネス瞑想とは

マインドフル瞑想では実際にどんな事をするかというと、「常に、今ここにある現実に気付いていく。」という作業を繰り返し行います。では実際にどうやるかというと、「今ここにある現実」に気付くために、呼吸に注意を向けます。呼吸から注意がずれて雑念がわいたら、それに気づいて呼吸に再び意識を戻します。これを、繰り返していくのがマインドフルネス瞑想の基本です。

マインドフルネスで最も大切なのは、この気づきを繰り返す事です。意識が過去や未来にばかり向かっていると、特定の脳部位が慢性的に興奮して疲労、無気力、注意散漫な状態になります。そこで「今ここにある現実。」に目を向ける事でその脳部位の興奮を抑えます。

本当にそれだけで色々な効果があるのかと疑問に思うかもしれませんが、アメリカ特殊部隊の軍人が突然の危機でパニックを起こさない理由を検証する論文を読んでみると、マインドフルネス瞑想の効果がよくわかります。この論文でアメリカの特殊部隊の軍人は、無意識下で呼吸や心臓の鼓動など体の情報を自然とモニタリングしているために、パニックを起こさない精神状態を作りだしていると結論を出しています。常にマインドフルネス瞑想を自然にやっている状態だといえます。それにより、どんな状況でも冷静に判断しパニックを起こさないで特殊な任務を行っているのです。

マインドフルネス瞑想ではどんな状況でも、冷静に、集中して、感情に左右されずにストレス無くタスクをこなせる精神状態を目指します。

マインドフルネス瞑想の効果!!脳疲労を回復できるの?

マインドフルネス瞑想の効果で最も大きい恩恵は、脳疲労の回復です。脳は常に動いている臓器なのですが、特に内側前頭前野、後帯状皮質、楔前部、下頭頂小葉などで構成されている回路であるデフォルト・モード・ネットワークを司る部位は脳の全エネルギー消費の60~80%を占めています。

このデフォルト・モード・ネットワークは意識的な活動をしていない時も働きます。そのために、どれだけボーっとしている時でも、頭の中には色々な雑念が浮かんでは消えています。「あの時、ああしておけばよかった。」などのネガティブ思考の反復もこのデフォルト・モード・ネットワークの働きによるものです。

意識的な作業でもデフォルト・モード・ネットワークの消費エネルギーに追加で5%程度のエネルギーしか消費しないので、このデフォルト・モード・ネットワークが脳疲労による最大要因の一つです。

マインドフルネス瞑想はこのデフォルト・モード・ネットワークは脳部位の過剰な活動を低下させます。すると脳のエネルギー消費が軽減され脳を休めることが出来るので、マインドフルネス瞑想は最高の脳疲労回復の方法と言われるのです。

さらに、マインドフルネス瞑想の研究により、脳の容積や密度の変化が数か所で起こる事がわかっています。その部位や実際に現れる体の変化から、マインドフルネスで得られる効果は主に以下の4つが確認されています。

集中力の向上

前頭前野の変化や後帯状皮質の活動が低下する事で、1つの事に意識を向け続けることが出来るようになります。

感情調整力の向上

情動や共感といった認知機能に関係する前帯状皮質や情動や報酬系に関与している眼窩前頭皮質に変化が起こるため、ストレスなどの刺激に対して感情的な反応が起こりにくくなります。

自己認識への変化

自己へのとらわれが減少し、自己コントロール力が向上します。そのため幸福感が向上し、イライラや不安も減少することが期待できます。

免疫機能の改善

ストレスが低減することで、疲れやストレスによる免疫力低下が予防でき、免疫機能が向上します。

マインドフルネス瞑想のやり方

マインドフルネス瞑想の準備~姿勢~

椅子に座って、背もたれに寄りかからず骨盤を軽くおこします。少しお腹を出して、手は太ももの上に置き足は組まないようにしてください。

どっしりと骨盤を安定させ、その安定した骨盤から骨を1個1個上に伸ばすように気持ちよく背筋を伸ばします。背筋を上に伸ばす時に少し顎を引きます。

今度は息をゆっくり吐きながら肩や首の余分な力を抜きます。座るのに必要のない筋肉に力が入っている所がないか確認して、緊張している部分があったらゆっくり息を吐きながら意識的に力を抜いていきます。(数回これを繰り返します。)

マインドフルネス瞑想の準備~呼吸~

息を鼻から吸って口から吐きます。最初、口から吐くときは力を抜いて自然と口から息が出ていくようにします。その後、ゆっくりと最後までお腹を凹ませていき、息を吐ききります。お腹を凹ませて息を吐ききった状態から力を抜くと自然と息を深く吸うことが出来ます。息を吸ったら、最初から繰り返しこの腹式呼吸を5分ほどします。

この呼吸法を行うだけでもストレスホルモンは減少していきます。最初は上手くできなくても、慌てず、ゆっくりと体に覚えこませてください。意識をせずに自然にできるようになるとこの呼吸でマインドフルネス瞑想をすれば、マインドフルネス瞑想の効果の恩恵が大きくなります。

マインドフルネス瞑想

注意散漫、無気力、イライラなどは脳疲労のサイン。その根本的な原因は意識が常に過去や未来ばかりに向かい「今ここにない状態」が慢性化していることにあります。現在に意識を向ける「心の練習」をすることで疲れづらい脳を作っていきましょう。

・基本姿勢をとります。目は閉じるか、開ける場合は2mくらい先をみます。(瞑想中眠くなったりするので目を開けている方をお勧めします。)

・身体の感覚に意識を向けます。接触の感覚(足の裏と地面が接触している感覚、お尻と椅子が接触している感覚)を意識します。「今、手の重さを太ももで感じているなぁ」など、接触している部位を3か所程度、意識に上げていきます。

・呼吸に注意を向けます。呼吸に関わる感覚を意識します。鼻や口を通る空気の感覚、呼吸の深さ、呼吸により体のどの部位が動いているのかを感じてみます。慣れるまでは鼻や口を通る空気の感覚に集中するのが良いと思います。

・呼吸を「1」「2」…と数えても効果的。

・雑念が浮かんだら、雑念が浮かんだ事実に気づき、注意を呼吸に戻します。雑念は生まれて当然なので、自分を責めず、川に流れていくように雑念を受け流していきます。

・これを5~10分行います。慣れてこれば普段の生活の中でも、呼吸や感覚を意識に上げてください。マインドフルネス瞑想を普段の生活に広げていきます。

マインドフルネス瞑想の基本

マインドフルネス入門。「今、ここ」に意識を集中する練習。

マインドフルネス瞑想に適した環境って?

脳は習慣が大好きです。同じ時間、同じ場所でやるのがお勧めですが、プレッシャーになるほど同じ時間、同じ場所にこだわる必要はありません。飲み会などで帰ってマインドフルネス瞑想が出来ないときなどは、電車の中や、お昼休みにやるのも良いと思います。習慣にできるように心にゆとりを持って行っていきましょう。

最もマインドフルネス瞑想に適した環境はベッドなど寝る場所以外で、光の量、温度を調節できる部屋がお勧めです。最初は意識を呼吸や感覚に向けるのに集中力が必要になるため、不快な環境を出来るだけ排除するためです。光は明るすぎず、薄暗い程度がお勧めです。ロウソクなどを使って雰囲気を出すのも良いです。そして、リラックスしてマインドフルネス瞑想できる場所を作りましょう。毎日行う事で、いつもマインドフルネス瞑想する場所に座るだけで瞑想の意識状態になりやすくなります。

終わりに

注意力散漫、無気力感、イライラなどは脳の疲労サインです。この脳の疲労は、疲れだけでなく免疫力の低下を起し多くの病気の要因になると思います。マインドフルネス瞑想を習慣に取り入れたりして精神状態を常に良好に保ちパフォーマンスを向上させる事や、健康について勉強したりして健康管理を行う事は大きな将来の投資になると思います。ぜひ、生活のパフォーマンスを向上させ、健康を向上させることが出来るマインドフルネス瞑想を習慣にしてみてください。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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