胸が痛いときありませんか?

ふとした時に胸が痛いと感じること、ありませんか?

例えば、運動をしたあとに胸が締め付けられるような痛みを感じる、食事をしたあとに胸の真ん中が痛む感じがする、など条件があるものもあれば、あるとき突然痛みが出て不安になるなど、突発的なものもあります。

なかにはしばらくすれば良くなるものも有りますが、胸の痛みの原因には心臓、肺、消化器、神経、筋、骨など様々のものが考えられ、中には安易に放置すると命の危険に繋がるものもあるため、注意しなければなりません。

今回はそんな胸の痛みのあれこれにについて、詳しく見ていきましょう。

胸が痛い時に考えられる病気とは

胸が痛い時考えられる原因として、大きく分けると5つのものが存在します。

1つ目が心臓や、大きな血管の病気。2つ目が肺や、胸の臓器を包み込んでいる胸膜という膜の病気。3つめが胸の神経、筋、骨の症状。4つめが食道や胃などの消化器の病気。最後に5つめが心因的なもの、と分類され、それぞれにいくつかの病気が含まれていることになります。

1.心臓・大きな血管の病気 

・狭心症、心筋梗塞 : 狭心症とは心臓に酸素を運ぶ血管が何らかの原因で狭まり、血流が減ってしまうことでおこる病気で、心臓への酸素供給が足りなくなってしまうため、胸の痛みや圧迫感を感じます。
狭心症にも種類があり、運動時に起こるものと、安静にしていても起こるもの、その他に前触れもなく起こるものなどがあります。どちらの場合も、数分から数十分の間胸が締め付けられるような痛みを感じるのが特徴であり、重症化すると完全に血流が止まって心臓の筋肉が死んでしまう心筋梗塞や心室細動を引き起こしてしまうので、痛みに気がついたらすぐに病院にかからなければなりません。
特に心筋梗塞を引き起こしている場合、痛みを感じはじめてから数時間で死亡してしまうこともありますので、すぐに救急車を呼ぶべきでしょう

・大動脈解離 : 大動脈解離とは、全身に血液を運ぶ一番太い血管である大動脈が、何らかの原因で裂けてしまうという病気です。大動脈解離を発症すると、突然鋭い痛みが胸や背中に走り、徐々にその痛みがお腹や腰の方に移動していくという特徴的な症状が現れ、最悪の場合は血管破裂などによって死亡する恐れもある非常に恐ろしい病気であるため、痛みが激しくなくとも、移動していると感じたならばすぐに病院にかかってください。

2.肺・胸膜の病気

・気胸 : 気胸とは、肺の一部が破れてしまうことで肺が正常に膨らまなくなり、胸の痛みとともに呼吸困難や咳がみられる病気です。明らかな原因がないのに突然発症することもあり、多くは深刻な結果にはつながらないものの、あまりに広範囲に気胸が及ぶと、血流が阻害され、血圧の低下によって命の危険に晒される可能性もあります。

・急性肺血栓塞栓症 : 急性肺血栓塞栓症とは、別名ロングフライト血栓症(エコノミークラス症候群)とも呼ばれ、下肢などの血管に出来た血の塊が、血の流れに乗って肺まで到達し、その血管をつまらせてしまうという病気です。
血の塊が肺の血管に詰まってしまうと、呼吸困難や胸の痛みを引き起こし、ひどい場合には急死してしまう場合もある恐ろしい病気です。

・胸膜炎 : 胸膜炎とは、肺を包み込んでいる胸膜という部分に炎症が起こり、胸の痛みや呼吸困難、発熱などを引き起こす病気です。肺炎や肺結核など、外からのウイルスなどによって引き起こされることが多いです。

3.神経・筋肉・骨の病気

・肋骨骨折 : 文字通り、胸の臓器を守る肋骨の骨折のことで、骨折している部分の痛みに加え、押した時に痛みが増したり、腫れがあったりするなどの特徴があります。胸をどこかにぶつけなくとも、骨がもろくなっている場合は咳をしただけで折れている可能性があるので、注意しなければなりません。

・悪性腫瘍(がん): 悪性腫瘍が胸に発生した場合、あるいは他の場所から胸に転移してきて大きく育った場合、痛みを伴うことになります。この場合の痛みは状況によってあまり変化せず、持続したものとなります。

4.消化器の病気

・逆流性食道炎 : 逆流性食道炎とは、本来胃の中にとどまっているはずの胃酸が何らかの原因で食道の方まで逆流してしまい、食道に慢性的な炎症を引き起こしてしまう病気のことを言います。代表的な症状として、胸焼け、げっぷ、声のしわがれ、咳、胸の痛みなどが起こりますが、すぐに命の危険に繋がるようなことはありません。
しかし、この状況を放置しておくと、将来食道がんにつながる恐れもあるので、はやいうちに病院にかかるのがおすすめです。

5.心因性の病気

・心臓神経症 : 心臓神経症とは、実際には病気がないにもかかわらず、動悸、息切れ、胸の痛みなどの症状が現れるものです。
特に精神的なストレスや、神経症の傾向が強い方によくみられ、多くがチクチクとした胸の痛みを訴えることが特徴となっています。
主に心臓病に対する強い不安によって引き起こされるとされており、一度症状が現れるとそれがさらに不安をかきたて、悪循環に陥ることが多くなっています。

胸が痛い時に女性がチェックすべきこと

女性の場合、男性と違って乳房があるため、乳がんなどの心配からより胸の痛みに敏感になりがちだと思います。では、女性に特有の、胸の痛みの原因にはどのようなものがあるのでしょうか。

まず、病気ではないものとしては、月経や妊娠によってホルモンのバランスが変わり、乳房が張って痛くなるというものが挙げられます。中には触れただけでも強い痛みを感じる場合もあるようですが、この場合過剰に心配する必要はありません。

注意が必要なのは、以下にあげる4つの病気が疑われる場合です。

・乳腺炎 : 乳腺とは、母乳を作るための乳腺に炎症が起きてしまうもので、大きく2つの原因が有ります。1つは細菌の侵入によるもので、もうひとつが母乳が固まって詰まってしまうことによるものです。
どちらの場合も胸の痛みとともに、乳腺が赤く腫れてしまうという症状が表れます。

・乳腺症 : 乳腺症とは、胸に良性のしこりができてしまう病気で、しこりのある場所に痛みや圧迫感を感じるのが特徴です。乳がんとは違い、良性のしこりなので、命の危険などはありませんが、しこりを見つけた場合、乳腺症か乳がんかの判断は医師に任せたほうが賢明でしょう。

・乳腺線維腺腫 : 乳腺線維腺腫は乳腺症と同様良性のしこりで、まれに胸の痛みなどを伴いますが、多くは無症状です。こちらも特に危険性は高くありませんが、乳がんとの区別に注意しなければなりません。

・乳がん : 乳がんとは、乳房に悪性のがんが発生してしまう病気で、女性のおおよそ15人に一人という割合で発症することが知られています。
初期の段階では症状がないことが多く、痛みなどが出始めた時にはかなり進行している場合がほとんどです。そのため、健康診断などを受け、早期発見、早期治療に努める事が何よりも肝心とされています。

胸が痛いときは何科、どんな検査、時間や料金は?

胸が痛むときに、何よりも怖いのは命に関わる病気を発症していた場合です。

先ほど紹介した中では、心筋梗塞、大動脈解離、急性血栓塞栓症は緊急度が高く、迅速な治療を必要とします。突然の強い胸の痛みを感じた場合は、迷わず救急車を呼びましょう。

それ以外の胸の痛みの場合、なるべく早く内科にかかることをおすすめします、胸の痛みは原因も様々であるため、まずは原因を特定し、そこから専門の医師を紹介してもらうのが一番良い方法です。

考えうる検査としては、心電図検査、胸部レントゲンなどがありますが、これらは数分で終わり、費用も保険適応で数百円となっています。

循環器などの専門の検査を受けることを勧められた場合、一時間から数時間かかるものまで様々な検査が考えられます。最も長くかかるものでは、冠動脈造影と言い、入院を伴う検査もあり、検査時間が約六時間、検査費用も数万円程度になることがあります。

このあたりは実際に紹介された病院の医師とよく相談し、どの検査を受けるかを決めていきましょう。

胸の痛みを予防するには?

胸の痛みには様々な原因があるため、完全に予防するのは難しいですが、中には予防が可能な病気も存在します。

狭心症、心筋梗塞は、高脂血症や肥満、喫煙などによって起きる可能性が高くなるため、規則正しいい生活とバランスのいい食事を心がけ、タバコを吸わないでいることが予防につながります。

また、急性肺血栓塞栓症では、長時間同じ姿勢をとり続けることが原因となることが多いため、そのような状況にならないよう定期的に軽い運動を行うことが予防となります。

乳腺炎では、細菌の侵入を防ぐために乳房を常に清潔に保ち、母乳がたまり過ぎないように定期的に絞ってやるなどの対策が有効となります。

このように、少し注意を払うだけで予防が可能な病気もあるので、気になる方は実践していくと良いでしょう。

おわりに

今まで見てきたように、胸の痛みの原因には様々なものがあり、完全に予防したり、その場で原因を判断したりするのはとても難しいでしょう。

大切なのは命にかかわる危険な胸の痛みが有ることを理解し、必要な時にためらわず助けを求め、治療を受けられるようにしておくという事なのです。

監修

・救急医、内科医 増田 陽子

・救急医、内科医 増田 陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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