はじめに

朝起きると突然首が動かなくなっていたり、激しい痛みを生じる『寝違え』。一日もしないうちにすぐ治ってくるものと何日か経ってもなかなか治らないものがあり、この状態がいつまで続くのかと不安になる方もおられるのではないでしょうか?

そこで、今回は寝違える原因や正しい対処法についてまとめてみました。

寝違える原因

『寝違え』は『急性疼痛性頸部拘縮』と呼ばれることもあり、頸部周囲のどこかに負荷がかかり、筋肉や靭帯、関節などに炎症を起こしている状態です。

通常、人は寝ている間も寝返りをうつなど定期的に体勢を変えますが、なんらかの理由で寝がえりを打たず長時間同じ姿勢をとっていたり、不自然な恰好になった状態で寝てしまうことで、首の一部に負荷が集中して炎症を起こしてしまいます。

寝違えたときの対処法

寝違えを起こしてもそのときの対処の仕方によって、スムーズに治っていくこともあれば逆に痛みをひどくしてしまうこともあります。ここでは、寝違えたときの正しい対処法をご紹介します。

1. 無理に動かさない

寝違えは首の何かしらの組織の炎症です。
炎症を起こしているところを無理に動かしてしまうと、さらに炎症がひどくなり、痛みが増してしまいます。痛みのない範囲でゆっくり動かすのは、問題ありませんが決して無理に動かさないようにしましょう。

また、首を動かさなければよいだろうと思っても、長時間同じ姿勢で作業を続けたり、重い物を持ったりすると首の筋肉や関節に負荷がかかり、炎症が増してしまうので注意が必要です。

2. 氷で冷やす

炎症を抑えるために最も効果的なのが、氷で痛い場所を冷やす『アイシング』です。
寝違えたばかりの急性期は、氷を入れたビニル袋を痛い場所にあてて15~20分ほど冷やしては離し、皮膚の感覚が元に戻ったらまた冷やすということをできる限りつづけます。特にじっとしていても首がズキズキと痛む『安静時痛』があるような場合には、温めることはおすすめできません。

寝違えてから数日以上経過し、痛みにともなって首の周りの筋肉が凝ってくるような場合には、ぬるめのお風呂にゆっくりつかって血流を促してみてください。

3. 腕や肩甲骨の体操をする

動かさないようにすると言っても、首を全く動かさずに固定してしまっていると、少しずつ首の周りの筋肉の緊張が高くなってきて、余計に動きが悪くなってしまいます。ですから、痛みを感じない程度の適度な運動は少しずつ行っていきましょう。

首を直接動かすことは痛みを出しやすいので、腕を軽く振ったり、肩甲骨を回すようにすると、間接的に首の筋肉が動かされるので炎症が治まってくるとともに、周りの筋肉も緩みやすくなり、寝違えがスムーズに治っていきます。

4. 頸椎カラーをする

首は横になって脱力しているときを除いて、常に頭の重みを支えなければなりません。炎症があるときに頭を支えていると、ますます痛みが強くなってしまうことがありますので、痛みが強いときは、病院を受診して頸椎カラーを処方してもらうのもよいでしょう。

寝違えたときにしてはいけないこと

それでは、逆に寝違えたときにしない方がよいこととはどんなことなのでしょうか?

1. 無理に首を動かすこと

寝違えたとき、そのままにしていると固まってしまうのではないかと心配になって一気に首を動かそうとしたり、首の筋肉をストレッチしようとする方がいますがそれは逆効果です。炎症を起こしている部位に負荷をかけるとさらに炎症が強くなってしまいます。

2. すぐにあたためる

あたためると首の筋肉がほぐれて動きがよくなるような気がしますが、危険です。
緊張が高くなっている筋肉をあたためることは間違いではありませんが、寝違いは首のどこかに炎症がある場合が多いので、あたためると炎症が強くなってしまいます。特に安静にしていてもズキズキするような場合は、炎症が強いことが多いので、寝違えてしばらくはあたためずに冷やすことをおすすめします。

寝違えないための予防法

ここまで、寝違えたときの対処についてご紹介してきましたが、できることならばつらい痛みのある寝違えは回避したいものです。そこで、ここからは寝違えを予防する方法についてお話していきます。

1. 適度な運動をする

運動不足であったり、パソコン作業などをやりすぎていると首や肩の周りの血流が悪くなり、筋肉が凝ってしまいます。血行不良の状態は、首の筋肉が固まりやすくなってしまうので寝違えのリスクが高まります。日頃から適度な運動を心がけましょう。

2. お酒の飲みすぎや過度の疲労を避ける

お酒を飲みすぎたり過度に疲労がたまると、血流が悪くなるうえに、深く眠ってしまうことで睡眠中の寝がえりが少なくなってしまいます。血流が悪いにもかかわらず同じ姿勢で寝続けると、寝違えのリスクは高くなるので注意してください。

3. うつぶせ寝をしない

うつぶせで寝るとどうしても頭を横向きにすることが多くなるので、首は不自然な位置で長時間保持されることになります。うつぶせよりは横向きの方が不自然な体勢になることは少ないですが、一番良いのは仰向けに寝て首がまっすぐの状態にすることです。

4. 高すぎる枕は控える

高すぎる枕も首の状態を不自然な恰好にしやすくなってしまいます。
良質な睡眠を求めて、オーダーメイドの枕を使用される方もおられますが、まずは首が不自然な位置にならない高さの枕にすることで十分寝違えを予防することができます。

おわりに

今回は『寝違え』について対処方法や予防法をご紹介しました。
寝違えは様々な条件が重なって起こることであり、絶対的に予防することは難しいですが、ほとんどの寝違えは一週間前後で回復するとされています。

寝違えてしまった場合には焦らず、ここでご紹介した対処法を思い出しながらゆっくりと対応してください。また、ある程度の日にちが経っても症状が改善しない場合には、無理をせず整形外科を受診しましょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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