東洋食薬ライセンス講座2級とは

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東洋食薬ライセンス講座2級は、初めての方でも東洋医学(中国伝統医学)の基礎から、
安心して伝統医学を学ぶことができます。
内容は、以下の4つの講座で学んでいきます。

・東洋医学(中国伝統医学)基礎篇
まずは東洋医学の基礎を学びます。
東洋医学と西洋医学では人を評価(観察)するポイントが異なります。
虚証や実証など8つの証で症状を分類することで、
自分自身の症を把握し食べ物やツボ押しなどで補うことができるようになります。

・伝統医学の学び方篇
同じ綴りの言葉でも、西洋医学や様々な伝統医学、民間療法で
異なる定義として使われています。このような言葉を「同綴異義語(どうてついぎご)」と呼びます。
同綴異義語は伝統医学のみならず、様々な民間療法にもあります。
それが、東洋医学をはじめて勉強する方にとって混乱を産むケースが少なくありません。
このことを自覚して学んでいく必要があります。

また、中国伝統医学のテキストは体系的で初学者向きです。
中国医学がわかると日本の漢方もより深く理解することができます。
そのような事から、講座内ではまず中国伝統医学から学ぶことを推奨されています。

・薬膳の学び方篇
薬膳の学び方篇では、古今東西の食餌療法を紹介しつつ、
その人の証に合わせた正しい食べ物を食べる大切さを学び、
食べ物が本来持っている働きについて学んで行きます。

・経穴/経脈篇
経穴・経絡とはそもそも何かを学習します。
中医学の経穴・経絡以外にも他の伝統医学などでは
経穴・経絡に似たようなものが数多くありそれぞれ学んで行きます。
次項は、東洋食薬ライセンス講座2級講座の講師であり、
東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター
サイクロトロン核医学研究部研究教授の関隆志先生にお話を伺って行きます。

普段の活動について

ケアクル:先生の普段の活動について教えてください。

関:平日は内科と東洋医学の外来診察と病棟で診療をしています。
そちらの病院では、毎週2回講義も行っています。
そのうちの1回は医師と看護師に中医学を、
もう1回は管理栄養士に薬膳を教えています。
管理栄養士に私が教え始めてからはその病院では年に5回、
春・梅雨・夏・秋・冬の季節に病院食に薬膳を出すようになりました。
また、土曜日の午前中は福島県郡山市にある総合南東北病院のクリニックで東洋医学の
外来をしており日曜日は東京などで講演活動をしています。

あとは月に一度ほど、仙台市内のクリニックで午前中に診察をしており、
東北大学や他の大学・企業と共同研究などもしています。

伝統医学・東洋医学を教えるときに意識していること

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ケアクル:伝統医学・東洋医学を教えるときに意識していることについて聞かせてください。

関:伝統医学には様々な流派が存在します。
それぞれの流派で体の同じ部位に対して違う事を言っていたり、同じ綴りの言葉でも違う意味として使用している場合が数多くあります。
このように同じ綴りでも意味が異なる言葉を「同綴異義語」と言います。
東洋医学の現状として、このように同じ言葉でも違う定義で使われている事をきちんと認識して正しく理解してもらう事を意識しています。

これが正しく認識できていない状態で勉強をしても、同じ言葉も異なる定義で
使用している場合があるため、伝統医学や東洋医学の本などを読めば読むほど混乱してしまいます。

「同綴異義語」を認識した上で本を読めば、状況に応じた言葉の使い方が分かるようになるので、きちんと本を読むことができ、自己学習が出来るようになります。
伝統医学や民族医学・民間療法などの本は数多くあり、どれも良い面があるので、何が正しいかは一概に言えません。
様々な本の良いところを取り入れると良いでしょう。
その為にも繰り返しになりますが、同じ言葉でも流派などによって違う意味で使っているという事を認識しながら勉強する事がとても大切です。

初学者の方には、まずは中国伝統医学から勉強する事をおすすめしています。

東洋医学と西洋医学の違い

ケアクル:それでは、東洋医学と西洋医学の違いについて教えてください。

関:東洋医学は人間を全体で診る素晴らしいものだと、言われてきていました。
東洋医学でいう人間を全体で診るということは、家族や職場や地域などの社会環境など様々な視点から、身体の症状や心の状態への影響を考慮するなど、その人全体を診ることです。

伝統医学では昔から知られていることですが、近年西洋医学では時計遺伝子の発見があり時刻と人間の身体、心との関係というものも遺伝子レベルで分かってきています。
また、気象状況によってどのように心身に影響が出るかを診る、生気象学という学問や時刻に応じて薬の効き目が変わってくるのかを、研究する時間治療学などの新しい学問が出てきています。

このように、今までは様々な側面から総合的にその人個人を診ることが出来るのが東洋医学の素晴らしさであるとされておりましたが、西洋医学も新たな学問が確立されてきています。
科学技術の発展によって、遺伝子レベルで個別化し診ることができるようになってきており、その人個人を診察するという面では西洋医学も追いついてきています。
心と身体と社会環境の視点で、多面的に人間全体を診ることが出来るからと言って西洋医学の診断方法で分かることが全て東洋医学で分かるかというとそうではなく、その逆もまたしかりです。

つまり、東洋医学も西洋医学もどちらも人間の一部しかみていないということです。

人間を評価するときに、スポーツが出来る人と数学が出来る人どちらが優れているか評価できないのと同じで、同じ病気に対して西洋医学の治療法と、東洋医学の治療法ではその症状に対して診ている視点が違います。

ただ患者さんの立場からすると西洋医学と東洋医学で治療方法が異なるとどっちを選べばいいのかわからず困ってしまいます。
ですので大切なのは、東洋医学と西洋医学の両方の視点から患者さんを診ることだと思います。

今後の展望

ケアクル:それでは今後の展望を聞かせてください。

関:世の中には、様々な民間療法や民族医学、伝統医学が数多くあり、それぞれ同じ言葉を違う定義で使っている状況です。
自分が患者だとしたら、西洋医学や伝統医学、民間療法を含めて、どういう治療を受けるのが自分にとって一番良いのか考えると思います。

例えば、癌になると親戚などからあれやこれや病気に効くとされる治療方法を教えてもらったり、薬や食べ物などを薦められたりする事もあると思います。
ただ、どの治療法が自分に適した治療方法なのかが分からなく、生きるか死ぬかの状況なので高い治療費用を厭わずに払われる方も多く見受けられます。

漢方薬にも複数の流派があり、同じ漢方薬でも違う使い方をしたり、同じ症状を治すにも違う漢方薬を使ったりします。
鍼灸にも同じことが言えます。
色々な流派が存在し、同じ症状を治すにも違うやり方をすることもあります。
民間療法においても、マクロビオティックや青汁療法や、ゲルソン療法、絶食・断食など様々ありますが、効く人には効いています。
このように多くの治療法があり、さらにその中でも流派が別れている状況です。
その為、自分が患者の立場だった場合、どのような治療法をどのように受けたらいいのか分かりません。

ですので、将来的には誰でも自分にとっての最適な治療法が分かる様にしたいと考えています。

ただ、治療法一つとってもこのように多くの種類があるので、まずは私が今やっているのは様々な民間療法や伝統医学の治療方法などを全てデータベース化する作業です。
伝統医学や民間療法版のウィキペディアのようなイメージです。
しかしそれは情報の羅列に過ぎないので、次の段階ではそこから個人に適した治療法が何かがわかるようにしたいと考えています。同時に、どんな人に効かなかったかも示したいです。

私一人ではできないので、仙台高専のAIなどの情報処理の専門家に協力してもらい、データベースの構築や診断の仕組みなどのプロジェクトを一緒に進めています。
壮大なプロジェクトで知識も膨大ですので、数人で進めて行くのではなく、世界中の専門家の知識を集めてデータベース化して行く必要があります。

歴史の浅い、民間療法や歴史はあるが体系化されていない民族医学をはじめ、何千年と受け継がれてきている、伝統医学などすべてが人類の財産と捉えています。
世界では、どのような治療方法があるのか情報を収集し、それをデータベース化することで世界中の誰でもその情報にアクセスできるようにしたいです。

鍼の治療一つとっても様々な方法がありますが、一番効くのは、どの方法なのかは誰にも分からないのでそれを分かる様な仕組みを作りたいと思います。
世界中の誰もがデータベースにアクセスする事ができ、自分にとっての最適な治療法が分かるような世界にしたいと考えています。

プロフィール

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関 隆志先生(東洋食薬ライセンス委員会 委員長) 
涌谷町国民健康保険病院 技術参事、
東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター
サイクロトロン核医学研究部 研究教授

<略歴>
S63年9月 東北大学医学部医学科 卒業
H9年9月~H26年8月 東北中医クリニック院長
H14年4月〜H15年9月 東北大学医学部附属病院 老年・呼吸器内科 医員
H15年10月〜H24年9月 東北大学大学院医学系研究科 先進漢方治療医学寄附講座 講師
H24年10月~H26年3月 東北大学大学院医学系研究科 高齢者高次脳医学寄附講座 講師
H26年4月~H28年3月 東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター
高齢者高次脳医学研究部門 講師
H28年4月~ 現職に至る。

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