目次

・はじめに
・鍼灸師とは
・あん摩マッサージ指圧師とは
・柔道整復師とは
・整体師とは
・もみほぐしとは
・その他の資格
・まとめ

はじめに

普段街なかでよく目にする鍼灸院・鍼灸マッサージ院・マッサージ院・接骨院・整骨院などの様々な看板。

その他にもカイロプラクティックや整体、もみほぐし等の看板など、その明確な違いが分からないという方も多くいらっしゃるのが現状です。

今回は、そのような資格に関するお話と業務内容・保険の適用範囲について、ご紹介していきます。

鍼灸師とは

ではまず鍼灸師についてお話をして行こうと思います。
鍼灸とは2000年以上前に中国で生まれた伝統医療の一つです。
日本では、平安時代から鍼灸治療が用いられていたとの記録が残っているそうです。

今では普通に使用されている、鍼を刺すときに使用する筒状の鍼管(しんかん)は江戸時代に活躍した盲目の鍼灸師、杉山和一先生が編み出した物である事も有名な話です。
鍼灸は、ツボと呼ばれる経穴(けいけつ)に鍼を刺してツボの流れを良くしたり、気・血・津液(しんえき)が流れる経絡(けいらく)を用いて治療をしていきます。

ツボは全身で約361穴あり、その位置はWHOにも定められています。
また経絡は臓器ごとに流れがあります。

鍼灸では関節・筋肉・神経などの調整をしたり、ストレスや婦人科系疾患・内臓などの治療にも用いられます。
痛みの除去やスポーツ現場でも活躍している治療法でもあります。
逆子のお灸なども有名ですが、産婦人科などで鍼灸院を薦める先生も増えてきています。
近年では美容鍼灸が注目を集めており、治療的側面と美容的側面の広い範囲で用いる事が出来ます。

日本における鍼灸師の免許は国家資格になります。

厚生労働大臣が認可した専門学校や大学に通い、在学中に行われる試験を全て合格し、卒業試験を合格して初めて国家試験を受ける権利を得ることができます。
そして、国家試験を合格して初めて国家資格である鍼灸師免許が取得できます。

鍼灸師と呼ぶことが一般的ですが、鍼師と灸師では資格が分かれています。
両方持っている方がほとんどですが、鍼師のみの資格を持っている方もいれば、灸師のみの資格を持っている方もなかにはいます。

専門学校では解剖学・生理学・リハビリテーション医学・衛生学・東洋医学・経絡・経穴など網羅的に医学を勉強します。
皆さんが想像するよりも幅広く医療について勉強をしています。

鍼灸師は患者さんに対して鍼や灸を用いるのでより正しい知識が必要になります。
鍼を刺す際の深さや、鍼の打ち方、灸の効果効能、適応疾患、禁忌疾患などしっかりと勉強します。

また、衛生面にも細心の注意を払います。
感染予防や院内を清潔に保ち安心して治療が受けられる環境を整えます。
最近では使い捨ての鍼を使用するのが主流担っています。
安全面をより重視して治療を行います。
鍼灸治療を行う際に使用した衛生材や使用済み鍼の処分なども法律で定められています。

最近では無資格施術が問題になる事がありました。
もちろん、国家資格を持っている方が行っているのであれば問題ありません。

また、小児鍼の記事でも書きましたが、刺さずに接触させる鍼を使うのも勿論、鍼灸師の資格が必要です。
自己責任で自分にやる分にはいいのかもしれませんが、とあるサロンでは無資格者が患者さんに対して、てい鍼やローラー鍼を使用しているところもあるそうです。
てい鍼・ローラー鍼などの接触鍼にも鍼という漢字が付いています。ということは鍼師の資格が必要なのです。
また、鍼灸では保険が使えないと思われがちですが鍼灸でも保険治療は可能です。
ただし対象となる症状が決められており医師の同意書が必要になります。

お近くの鍼灸院や各都道府県の鍼灸師会や鍼灸マッサージ師会に相談してみてください。

あん摩マッサージ指圧師とは

次は、あん摩マッサージ指圧師についてです。

実はマッサージという言葉を使えるのは、あん摩マッサージ指圧師の国家資格を持った人だけなのをご存知でしたでしょうか?

各項目についてお話をしていきます。

あん摩についてです。
あん摩とは元々中国で発祥した治療技術で日本に伝えられたと言われています。
押す・もむ・さする・なでる・たたく等の手技を用いて行います。
東洋医学の経絡(ツボの流れ)や気・血の不調や身体の辛さを治すために行われる手技と言われています。

次に指圧です。
指圧は明治末期や大正時代ごろから行われています。
武術の活法や関節の運動などの手技も入っており、『持続・集中・垂直』の3原則の下で行われています。
指や手の平で押す手技がメインとなっており、筋肉や神経の不調を整える事と骨格を整えるという両側面を持っています。
生体に対して刺激を与えることで生体の恒常性機能を高め、健康の保持・増進を図るという考え方です。
あん摩と指圧に共通していることはタオルや手ぬぐい、衣服の上から施術を行うという事です。
また、方向としては中心から末端に向かうという事です。


次はマッサージについてです。
マッサージという言葉はよく聞くと思います。
オイルマッサージやリンパマッサージ、経絡マッサージなどが存在します。
しかし、実はマッサージという言葉を使えるのは、本来あん摩マッサージ指圧師の国家資格を持っている人のみなのです。
最近はマッサージの前に何か言葉を付け足せば大丈夫というような風潮があり、マッサージという言葉が乱用されています。本来マッサージという言葉は国家資格保持者でなくては使えないという事を覚えておいて下さい。

では、マッサージとはどの様なものを指すのかの説明をして行こうと思います。
マッサージはヨーロッパで生まれた技術になります。
日本には明治時代に陸軍軍医であった方が、フランスでマッサージの技術を学び日本に伝えたと言われています。
あん摩や指圧とは違いオイルやパウダーを使って直接皮膚の上から施術を行ないます。
マッサージの特徴は末端から中心に向かって施術を行うところです。

直接皮膚の上から施術をするので血液やリンパの流れを良くする効果があります。
また、オイルなどを使うので優しい力で深い場所にアプローチをする事ができ、より深い場所の辛さにも効果を発揮します。

あん摩マッサージ指圧の歴史は長く学校ではもっと深いところまで勉強をします。
歴史は勿論の事、指の使い方・あん摩マッサージ指圧の手技・古法あん摩・施術におけるタオルの使い方など基礎を徹底的に学びます。
あん摩マッサージ指圧はただ単に押したり揉んだりすればいいというわけではありません。

施術を受ける方の体調や既往歴・筋肉量・どの体勢で施術を受ける事が望ましいのかを見極めることも非常に重要です。
オイルやパウダーに対するアレルギーなど様々な事を考えた上で施術をします。

最近は無資格者の施術を受けている方が、骨折してしまう事故が多発しています。
ただ押せば良いのではなく、深く考えた上で施術をしているという事を少しでも覚えていてくれると嬉しいです。

柔道整復師とは

それでは柔道整復師という資格のお話をして行こうと思います。
柔道整復師は接骨院や整骨院・整形外科などで施術をしている国家資格になります。
昔はホネツギとも呼ばれていましたね。
柔道整復師も鍼灸マッサージ師と同様に厚生労働大臣の認定した学校で学び、国家試験に合格している国家資格保持者のことです。

では、柔道整復師がどのような施術をしているのかをお話していきます。
柔道整復師が鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師と違う所は、骨折・脱臼の応急処置が出来るというところです。
例えば、肩や肘が外れてしまったときに柔道整復師はその脱臼を治す事が出来るのです。
骨や関節・筋・腱・靭帯に負担がかかる事により発症した急性、亜急性の骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷などの損傷に対して整復や固定、後療法などを行い治療をしていきます。

また、健康保険が使えるという事も大きな特徴です。
健康保険は使える場合が決まっているので注意が必要です。
接骨院や整骨院で保険が使えるのは先ほども説明をした急性又は亜急性が原因の外傷に対する治療時のみになります。
医師の同意が必要なのは「骨折」「脱臼」の治療を施すときだけです。(応急処置を除く)
打撲や捻挫、挫傷などは医師の同意は必要ありません。
中には肩こりや慢性的な腰痛で通院している方も多くいらっしゃいます。
肩こりや慢性的な腰痛などは保険の適用外になるので注意しましょう。

また、受傷時期をごまかして保険の適用期間にするなどの違反をしている治療院のニュースを見かけることがあります。
保険が適用されて金額も安いので月に何回も通う方も多いです。
しかし、その保険の適用が適切なのかどうかはしっかりと見極めなくてはいけません。
私も接骨院や整骨院で勤務をしていた時期があるのでそういった事情は把握しています。
患者さんは安く通えるので良いかもしれませんが業界としては法律やルールを遵守する必要があります。
鍼灸やマッサージでも保険が使えるのですが、この業界でも保険の問題は多く出ています。
法律をしっかりと守った上で患者さんを施術するのが大前提です。
話が少しそれてしまいましたが、柔道整復師の特徴をお話させていただきました。

整体師とは

それでは整体師についてお話をして行こうと思います。
最近では我々の国家資格の名前よりも整体という言葉が皆さんの耳に入る機会のほうが多いように感じます。
では、整体師とはいったい何なのかをお話していきます。
例えば、これを読んでくださっている方が整体師の仕事をしたいと思ったとしましょう。

『今日から整体師だ!!』

極端ですが、このように誰でも整体師と名乗ることは可能です。
つまり、資格が無くても整体師になれるのです。
また、整体師という資格は民間資格になります。
それぞれの療術学校やスクールで発行している資格もあります。
国家資格とは異なる資格である、というところがポイントです。
カイロプラクティックも日本では民間資格となります。

整体師のスクールも様々で特別な決まりはありません。
早くて1ヶ月、長くても半年くらいで卒業できるところもあるようです。
最近では通信教育の整体師講座も存在します。
整体は、体に徒手を用いて身体を調整していく方法になります。
整体を受けて体が楽になったという方も多くいらっしゃいます。

私の治療院に来ている患者さんも整体に通っていた人も少なくありません。
整体全般において確立された一定の水準は存在しませんが、効果が感じられる整体ももちろんあります。
しかし、知識と経験があり上手い人もいれば、知識と経験が浅い方もいるのが現状です。
近年では小顔整体・頭蓋骨矯正などの施術を行なう所も多く見受けられます。

もちろん、整体師の先生で技術が素晴らしい先生は沢山います。
整体師全てが悪いという事ではありません。
どんな整体院でどんな担当者に整体をしてもらうのか慎重に選択する必要があります。
信頼できる方の紹介や口コミを聞いて調べるのも良いでしょう。
説明をしっかりしてくれる、話をよく聞いてくれる、対応が丁寧。
というような要素も重要です。
安心して自分の体を任せられる整体師を見つけましょう。

もみほぐしとは

それでは最後に、もみほぐしについて書いていきたいと思います。

街中の看板でよく見かけるのがこのもみほぐしではないでしょうか。
チェーン店も多く、駅前などの目立つ場所に出店していることもあり、一度は見かけたことがあるかと思います。
優しい押圧で疲れた体をもみほぐしによってリラックスすることができます。
料金は60分2,000円~4,000円程と、最近では比較的安い料金設定が多いようです。
なかには深夜まで営業している店舗も存在します。
仕事で夜遅くでないと行けない方などには喜ばれているようです。

少し前にNHKの番組で48時間、もみほぐしのお店に密着する放送があり業界で問題視されたという事がありました。
もみほぐしでは、その名の通り体を揉みほぐしていく店舗なのですが、その会社に入社して数日、もしくは数ヶ月の比較的短い研修を受けて現場に出ている場合も散見されているようです。
もみほぐしも整体同様に民間資格者による対応が多いので、業界全体における水準はありません。
整体のところでも前述していましたが、どんな店舗でどんな担当者なのか慎重に選択する必要があります。
特に強い刺激には事故の元になる場合があるので注意が必要です。

また、肩の痛みや頭痛、腰痛などの痛みを何とかしたい、痺れがある等の身体の不調には基本的に対応することは出来ません。
お店によっては問診票の下のほうに小さく『治療行為ではありません』という文言や『施術後に痛みなどが出ても責任は負いかねます』と書かれているような店舗もあるようです。

店舗の場所も良く、時間にも融通がきくために利用しやすい側面もあります。
しかしリラックスするには良いと思いますが、身体が痛みや辛い肩こり、腰痛の治療にはおすすめできません。
癒しを求めてリラクゼーションに行く場合と、辛い症状や痛みがあって治療院に行く場合と使い分ける必要がありそうです。
今はそれが一目で湧かない、もしくはわかりにくい状況ですが、今後はよりわかりやすくなって行くことでしょう。
自分の体を安心して任せられるように、お気に入りの担当者を見つけられるようにしてみてはいかがでしょうか?

まとめ

いかがだったでしょうか?

現在、治療院やリラクゼーションサロンなどが増え続けて、見境が無くなって来ています。
今一度、国家資格と民間資格の違いや利用方法などを整理して知ってもらうことで、より安全な治療院選びやサロン選びをしてほしいと思います。

当院に来院されている患者さんからも違いをよく聞かれる事が多かったのでこのコラムを書くことにしました。
職業を選択する自由はありますが、職業を選択する為に必要な資格も存在します。
料金や予約の取りやすさ、通いやすさなどのバランスなども考慮した上でベストな選択ができるよう願っています。

国家資格保持者も民間資格保持者もそれぞれに役割があることでしょう。
これからはもっとわかりやすく選択できる時代がくると思います。

プロフィール

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松本 匡広

専門分野
スポーツ疾患,美容鍼灸,急性・慢性疾患

経歴
國學院大学栃木高等学校卒業
日本体育大学 健康学科卒業
呉竹鍼灸柔整専門学校 鍼灸マッサージ科卒業

東京・横浜・栃木県の整骨院や接骨院、鍼灸マッサージ院で働き2016年に地元栃木県でリズム鍼灸マッサージ院を開業。

高校でのトレーナーやインターハイトレーナー、プロキックボクシングでのセコンドやメディカルトレーナー、トレーニング指導を行う。


資格
鍼師.灸師,あん摩マッサージ指圧師
NJKF (ニュージャパンキックボクシング連盟)トレーナーライセンス

所属学会
一般社団法人 栃木県鍼灸マッサージ師会
公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会

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