セブの治療院について

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ケアクル編集部(以下、ケアクル):こんにちは。素敵な治療院ですね。
金澤 一昌先生(以下、金澤): ありがとうございます。

ケアクル:治療院の説明をしていただいてもいいですか?
金澤: この場所で治療し始めたのは2019年6月からで、まだまだ出来立てホヤホヤです。
ここで提供しているサービスとしては、鍼灸治療とマッサージで、鍼灸治療に関しては、日本人の2人の鍼灸師が交代で日本から来ています。マッサージに関しては、日本人のあん摩指圧マッサージ師の先生からトレーニングを受けたフィリピン人のマッサージセラピストが担当しています。治療院は2階建てになっていて、1階が主に鍼灸治療用で、ベッドが3床あります。2階は主にマッサージ用のスペースになってます。

通常の一般的な鍼灸治療と合わせて、美容鍼灸だったり、不妊治療に対応した鍼灸なども提供しています。マッサージのは今年の7月から提供が始まったんですが、鍼灸治療を受けた後にそのままマッサージを受けて行く方もいたりとかしますね。

金額は、鍼灸治療は基本は3500ペソ(約7000円)、マッサージは1時間750ペソ(約1000円)です。
フィリピンの平均年収が約23万ペソ(約46万円)なので、比較的高めの設定にはなってますが、日本品質を提供しているためこの値段にしています。お客さんの9割フィリピンの方ですね。中でも中華系の華僑の方が多い気がします。

ケアクル:周りのマッサージ店は、1時間300〜400ペソくらいのところが多いので、高めの設定ですね。ちなみに、どのくらい鍼灸を受けに来る患者さんはいらっしゃるんですか?
金澤:8月は徐々に忙しくなって来ていて、私たち鍼灸師がいるときは1日平均8〜10人の方の治療をしています。

ケアクル:こちらで働くきっかけはどういったことだったんですか?
金澤:経緯は、今所属している渋谷にある「りそー鍼灸院」の社長が、海外(セブ)でもやりたいっていう考えをもともと持っていたんですね。で、その時に、勤めていた鍼灸師が他にもいたんですが、その鍼灸師の方の紹介で英語が話せる鍼灸師がいないかってことで一緒に働くことになったのが、スタートです。そこから、セブでやってみないかという話が入りました。
その話があった当時はまだ、治療院はまだなかったんです。現地の友人(今は、治療院の共同経営となっているフィリピン人)の部屋を間借りして、現地のフィリピン人を招待して鍼灸を体験してもらおうという程度でした。そこから、本格的にもうちょっとやってみようということになりました。それが、2018年9月です。

ケアクル:そこからこの治療院ができたんですね。

ケアクル:ちなみに、以前から英語が話せたということですか?
金澤:英語は以前アメリカに5年半(小5終わりから高校一年の終わり)住んでいた時があり、その時に習得しました。ペラペラという訳ではありませんが、とりあえずコミュニケーションには問題ありませんが、医療英語となるとちんぷんかんぷんです。わからない単語は患者さんに素直にわかりませんって伝えて、書いてもらったりとか工夫しています。

ケアクル: そうなんですね。医療英語はやっぱり日常会話とは違って難しいですよね。今では、セブ島に住んで1年くらい経つってことですか?
金澤:実は今、日本とフィリピンを行ったり来たりの生活をしています。
セブ島に住んでいるわけではなく、治療がある期間だけセブに10日ほど滞在して、また日本に帰って来るような生活をしています。日本でも治療院で働いていまして、先ほどお話しした渋谷の治療院と、実は逗子にも別の治療院がありまして、そこと兼任しています。国内では主に逗子で治療して、海外ではセブの治療院で働いているという感じですね。

ケアクル: そういった働き方もあるんですね。

金澤先生の経歴

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ケアクル: 金澤先生の治療スタイルについて教えていただけますか?
金澤:私の治療スタイルは、局所治療と遠隔治療を使い分けて使っています。局所治療は、実際に触れて、硬結を探してそこに鍼を打つっていった感じですけど、結構、硬結が深い場所だと、刺激が強くなってしまうんですけど、きちんと説明してからやるようにはしています。遠隔治療は、バランスメソッドという治療法で主に治療しています。また、美容鍼灸もやっています。

ケアクル: バランスメソッドとは?
金澤:バランスメソッドは、台湾出身のDr.Rechard Tan(譚特夫)が、自分の臨床経験から導き出した治療方法です。特徴としては、痛みや症状のあるところを治療穴として使うのではなく、常に遠隔で治療します。経絡の流れを意識して、独自のシステムに基づいて治療するポイントを決めていく感じです。日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、海外では比較的メジャーな治療法で多くの鍼灸師が学んでいると聞いています。

ケアクル: そんなんですね。確かに、あまり聞かない治療法だと思いますが、学校で習ったのですか? 
学校ではなくって、私が東京で働いている時に、オーストラリアに住んでいる日本人の鍼灸師の方から、バランスメソッドっていう面白くていい治療法のセミナーがあるから来てないか?とお誘いいただきました。それをきっかけに、思いきって1人でオーストラリアに行ってセミナーを受けて来ました。まだ、日本ではセミナーは行われてないようなので、今はまだ海外でしか受けられないセミナーのようです。
(※ 2019年10月に初めて東京でセミナー開催予定)

ケアクル: 美容鍼灸もされるんですね?
金澤:そうなんです。美容鍼灸なんですけど、北川毅先生という美容鍼灸で有名な先生がいらっしゃるんですけど、ちょっと話がかなり前のことになるんですが、鍼灸師になる前に箱根の旅館で働いていまして、その旅館に北川先生が治療にいらしていたことがそもそも北川先生と出会ったきっかけになります。
その時は、まだ鍼灸師ではなかったんですが、これから鍼灸の学校に行こうとしている時でした。
そこで、そういう先生がいらっしゃるというので、とても興味があって、ホテルのスタッフに治療を受けさせてもらえないか?と、打診したところ、北川先生に快諾していただいて、初めて受けたのが、美容鍼灸でした。そこで先生の治療を受けて、色々と話をしている過程で、じゃぁ、在学中から、実際に鍼の現場にいるのは勉強になるから、自分の治療院に来て勉強しなさいって、言っていただいて、美容鍼灸を習得するに至ったという流れがあります。

ケアクル: ということは、フィリピンでも美容鍼灸もされているんですか?
金澤:はい。そうです。
フィリピンの方だけではないですが、顔に鍼を刺すって自体を怖がる方も多いですが、実際に受けられた方には、変化に気づいてもらえたりするので、反応は上々かなって思っています。体験でという方も多いですが、リピーターになっている方もそこそこいる感じです。

フィリピンの鍼灸事情

ケアクル: フィリピンでは結構鍼灸は受け入れられている感じなんですか?みんな知っているんですか?
金澤:鍼灸はまだまだ認知度が低いので、実際には、鍼灸は「魔法」みたいに思っている人も多いんですよ。なので、一度治療受けたら一回でよくなるみたいな・・そう行った印象を持っている人も中にはいるので、まだ浸透しているとは言えない感じですね。

ケアクル: フィリピンにも「伝統医療」ってあるんですか?
金澤:私もまだまだ知らないことが多いのですが、フィリピンの伝統療法としては、ヒロットと呼ばれるものがあります。詳しくはわかりませんが、日本でいうあん摩とか指圧とかいったような伝統手技療法であったり、薬草から作った軟膏を使ったりするものがあるようです。あと、最近聞いたのは、「蜂療法」、蜂の針をさして治療するっていうのもあるみたいです。昨日治療した患者さんが蜂の針を持ってきてくれたんですけど。。。すごい腫れていてびっくりしました。
ケアクル: どんな症状を持った患者さんだったんですか?
金澤:坐骨神経痛のような感じで、足に痛みが出ている方だったんですけど、、本人が痛みをでているところを申告してそこに蜂の針を刺すみたいな感じだそうです。そうすると痛みがやわらぐ。と、本人は言ってました。刺したところは真っ赤に腫れてましたけどね。

ケアクル: 今、一年ほど治療されていると思うんですが、患者さんの傾向としてどんな方が多いですか?
金澤:本当に幅広く診させていただいていますが、やはり多いというと「腰痛」「肩こり」ですね。フィリピンでも日本と同じようにバリバリ働いている方も多いので、日本と症状は似たり寄ったりですかね。
ただ、稀にすごい重症の方だったり、フィリピンの食生活にも関係してくるのですが、糖尿病の方がとても多いので、糖尿病性疾患でもある「ニューロパチー」(神経痛)も多くいるかなと感じています。

ケアクル:フィリピンの食生活とかって脂っこそうですもんね
金澤:すーごいですね。私は去年来てから6キロぐらい太ったので、多分。。セブの食事ですよね。
あえて現地の人に合わせて食べるようにしていたらこうなったみたいな。。

ケアクル: セブ島には他の鍼灸院とかはあるんですか?
金澤:そうですね。2店舗ぐらいはあったようなことを患者さんから聞いています。主には中国式や韓国式の鍼灸だったりするみたいですけど。でも店舗としてきちんと登録してないとか、衛生的な問題だったりとかがあったという話を聞きました。患者さんの中でも、あることは聞いたことあったけど、行ったことはなかったみたいな話を聞いたりしています。そんなには多くはないみたいですけどね。

ケアクル: 治療においてフィリピン独特だなと思うことや困ることはありますか?
金澤:最近は慣れて来ましたが、セブだけに限らずフィリピンって慢性的に交通渋滞がヒドイんです。なので、予約時間に間に合わない方、または、早めに到着されてしまう方が多いです。なので、予約時間通りに治療が始められるっていうのは本当にマレですね。すごい遅れるのかな。。と思っていたら、めちゃめちゃ早く到着してくれる方とか、なぜか、13時の患者も15時の患者も同時に一緒に来ちゃうといった状況もあります。でも、こんなのは日常茶飯事なので、フィリピンの人も待つことには慣れているようです。
ま、いい意味でも悪い意味でも島国特有の時間に対してとってもゆっくりした考えを持っている方が多いですね。
他には、初めて鍼灸を受ける方が多いので、これはフィリピンだからっていうものではないんですが、どういうことをしてとか、どういう意味があって鍼をするかとか、そうした説明は日本の方にする以上に気をつけて説明する必要があるので、その辺りはちょっと時間がかかるかなってくらいですかね。

ケアクル: セブ留学とか最近流行っていると思うんですが、日本人の方は来ますか?
金澤:最近になってちょっと増えて来た感じがありますね。
セブにはもともと日本国内で鍼を受けてたので、五十肩になったから、ちょっとフラッと受けに来ただったりとか、たまたま店の前を通りかかったら、日本鍼灸って書いてあったので、気になって入ってみましたっていう方もいらっしゃいました。

フィリピンで鍼灸師として働くためには

ケアクル: ちなみに、フィリピンで日本の鍼灸師が働くにはどんな手続きや準備が必要なんでしょうか?
金澤:まずは働くところを見つけることからになりますね。問題は、あまり鍼灸院が存在しないので。
働く場所が見つかったら、次に国に鍼灸師として登録することができます。現地のスタッフの話によると、法の整備が整ってない部分はあって色々グレーな部分も多いそうですが、正式に登録するのであれば、メディカルチェック、英文で日本国内の資格証明書や卒業した学校からの成績証明や卒業証明など必要な書類を準備が必要です。

ケアクル: 日本人であっても登録しさえすれば治療しても大丈夫ってことですか?
金澤:そういうことです。特に学校に行き直す必要はないです。登録もなかなか手続きがはっきりわかっている人を探すのが難しく、現地の人の助けが必ず必要になりますね。
そして、まだまだ怖いのは、法の整備がなされていない分、保険といったものもありませんので、同意書をしっかりとっておくとか、何かあった時のための対象として自分を守る状況を作っておかなければならないと思います。
弁護士さんなども結構多くいらっしゃるんですけど、話によると、フィリピンもアメリカ並みに訴訟の多い国なようです。

最後に、これから海外を目指す鍼灸師の人々に一言

ケアクル: 海外で鍼灸をしたいこれからの鍼灸師に向けてアドバイスはありますか?
金澤:そうですね。。。治療技術に加えて、ま、海外だからと言う訳ではないですが、英語でも日本語でも治療の意図だったり伝えるべきことをしっかり伝えられるかが重要になって来ます。海外では、そこがまた日本以上に求められると思います。鍼灸がどう言うものかといった認知度が低い分、ちゃんと説明しないといけない部分が多々あります。また、そこがちゃんと説明できないと、不信感を招くことになってしまうので、その辺りをしっかり説明できる英語力というかコミュニケーション能力をちゃんと鍛えていけないなと、強く感じました。
自分は、基本的に、あのーどこでも生活できると思っているんですけど。そうですね。
日本の生活に慣れてしまうと、いろんな宿泊施設などいろんな意味で整っているので、すごい生活は楽だと思うんですど、セブとかに来てしまうと、生活する上で、シャワーの水圧が低いとかお湯が出ないとか、あとは、日本のレベルで考えるとまだちょっと整備されてない部分は多々あるんですけど、本人がそこを楽しめるかってことなんですよね。
ちょっともし海外で鍼灸だったりとか、を考えているんであれば、その辺も全部受け入れられる方がいいと思うんですよね。

プロフィール

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金澤 一昌

平成28年 神奈川衛生学園専門学校東洋医療総合学科 卒業
平成30年 東京医療福祉専門学校教員養成課 卒業

もともと、箱根の旅館「強羅花壇」でフロントの仕事に9年程従事。旅館に来ていただくマッサージ師や鍼灸師の仕事を拝見し、よりお客様の近くで仕事がしたいという思いから鍼灸の道へ。

在学時から美容鍼灸を学び、麻布十番の東京インターナショナル鍼灸院「麻布プレミア」で勤務。その後、逗子「NOLASAPS hari-Q」と渋谷「りそー鍼灸院」を兼任し現在に至る。

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