はじめに

500円で受けられる鍼灸がある……との噂を耳にしたら皆さんどう思いますでしょうか?

「安い! 是非、受けてみたい!」「え、安いけど……安いなりの治療なんじゃないの?」「あとで多額な請求されるとか?」と色々な考えが頭に浮かんでくる方もいるのではないでしょうか。
でも、その安く受けられる理由が、鍼灸治療でも健康保険が使えるということと分かれば安心して施術が受けられるかもしれません。 患者の負担だけではなく、保険者などが負担してくれるわけです。

鍼灸だけではなく健康保険を使うということは、皆さんの税金から出ているということでもあります。安いから、どんどん保険診療にしようと考えてしまうのは次の世代の負債になりかねるかもしれません……


結局、使った方が良いのか、使わない方が良いのかどっちなの?という疑問に、ここでは答えていきます。


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鍼灸の健康保険のしくみ

鍼灸は普通の医療費とは違い、療養費と呼ばれるカテゴリーに属します。

この療養費は保険証を持って行けば健康保険が使えるのではなく、同意書と呼ばれるものが必要になってきます。

では、同意書とは一体どんなものでしょうか?

これは医師が鍼灸の施術を受けても良いと認めた書類であり、鍼灸で健康保険を使うなら、まずは医師に書類を書いてもらう必要があります。

書式は健康保険を取り扱う鍼灸院なら揃えていますので、書類と同意書を書いてくれそうな医師を最寄りの鍼灸院に電話して確認してみてください。

次に同意書を書いてもらったなら、鍼灸院に同意書と保険証、ハンコを持っていきます。
これで療養費による鍼灸施術を受けられるのですが、三ヶ月の期限があります。

この期限は、もし継続するならまた医師のもとに行き、同意をもらう必要があります。このときに文書ではなく口頭での同意も認められています。

ですが、口頭ではなく同意書を書いてもらった方が、言った言わないといったこともなく安心かと思います。

どんな病気なら保険が使えるか

同意書による療養費請求は、医師が認める基本的に6つの病気に関しての同意となります。
この6つの病気を説明します。

1.神経痛:例えば坐骨神経痛などの腰の痛みと脚の痺れなどの疾患です。ただ、神経痛は痛みがあればどこでも神経痛と言えなくもない曖昧な症状なので、ある意味で痛みがあればほとんどの人に適応されると言えます(歯痛は流石に難しい)

2.リウマチ:急性、慢性で各関節が痛むものになります。これは鍼灸で効果が高いのですが、実際、現場では医師が投薬療法を行っており併給・併用の禁止に抵触することになりますので事実上、療養費請求は難しくなってきます。

3.腰痛症:腰に痛みがある場合に適用されます。

4.五十肩:正式名称は肩関節周囲炎、肩関節に痛みや運動制限がある状態です。これは若い方でも起こりえるのですが、医師によっては40歳以上での痛みと運動制限の場合と考えている方もいますので、若い人は肩関節周囲炎症状だけで5の疾患に属す場合もあります。

5.頸腕症候群:首肩が痛んだり痺れたりする場合です。理解していただきたいのは、凝っている場合は違うということです。凝っているのは疲労なので実費で受けなければ違反になります。

6.頸椎捻挫後遺症:頸椎の外傷、ムチウチ症になります。ムチウチによる首の痛みや頭痛などです。

7.その他:実は上記の6疾患以外にも保険者裁量で認めてくれる病気もあります。一番、多く認めてくれるのは変形性膝関節症です。高齢の女性に多く、膝の軟骨がすり減り変形し痛みが出てしまう疾患です。これは多くの保険者が認めてくれます。

しかし、それ以外ですとかなり厳しい現状なので、医師に同意書を書いてもらうときは上記の6疾患のどれかに丸をしていただく方向が無難になります。

※追記 2のリウマチでも書いたのですが、これらの病気が認められても医師がこれらの疾患での治療を行っている場合、併給・併用の禁止に抵触しますので療養費請求が出来なくなる場合がありますので注意してください。

健康保険の問題点

療養費請求での鍼灸治療はお得な価格で出来る事がわかっていただけたかもしれません。

でも、もう一つ皆さんに考えて欲しいこともあります。

平成27年度の国民健康保険の決算がまとまり、実質的な収支は2843億円の赤字となってしまいました。このデータが示すとおり、医療費の赤字は国民生活の負担になっている現状です。
赤字原因の一つに挙げられるのは糖尿病などによる生活習慣病の蔓延によるものがあります。

生活習慣病はその名の通り、不規則な生活、偏った栄養バランス、運動不足などの日頃の行いによって引き起こされます。ゆえに、医療費が適正に運営されるには、国民1人1人の健康意識が大事になってきます。

例えば、睡眠時間は8時間取れるようにする、食品の裏に書かれている栄養表示を確認する、仕事の帰りの通勤でいつも降りる駅の一つ前の駅で降りて歩く、など生活に健康への工夫を凝らすようにすることが大事です。

また、国も医療費削減、健康増進に本腰を入れることで、昨今話題になっている居酒屋での全面禁煙などより推進していこうと動いています。
ただ、国が推進するからではなく自ら健康への関心を持ち、未来のために必要な時だけ医療費を使うようにできると良いのではないでしょうか。

鍼灸の療養費も疲れているから受ける場合は実費で受け、病気の場合は医師の同意の下、しっかり改善する治療を受けましょう。

まとめ

鍼灸による健康保険の仕組みが分かったでしょうか?

鍼灸師にも団体があり、所属している鍼灸師の多くは健康保険を取り扱っています。

色々と制約の多い鍼灸の療養費請求ですが、これは健全で適正に運営されている証左でもありますので医療費の負担を考えれば国民全体のためでもあるのです。

療養費は、税金をしっかり払っている国民の権利でもありますので使うべきとは使って、しっかり病気を改善させ健康への意識を高めていきましょう。

これからの少子高齢化社会において健康は国民にとって大事な事柄の1つになるかもしれません。また、その時に鍼灸という選択肢もあるということです。

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