はじめに

皆さんは「リハビリ」って聞くとどんな事をイメージするでしょうか?

身体を動かしたり、マッサージやストレッチをイメージされますか?それともマシン等の器具を使ったトレーニングをする事をイメージされますか?

それはある意味「リハビリ」ではありますが、本質を得た回答とは言えません。

「リハビリ」と言う言葉自体は、街の看板やメディアで目にしたり、日常会話の中で触れる機会が増えたため、その言葉を耳にする人も増えてきているのではないかと思います。
しかし、実際の「リハビリ」を見たり経験される方々は、実は少ないのではないでしょうか?

そこで今回は、「リハビリ」って何?という素朴な疑問について解説していきたいと思います。

「リハビリ」という言葉の由来って何?

皆さんが普段使用している「リハビリ」という言葉は、「リハビリテーション(rehabilitation)」の略語になります。

「rehabilitation」の語源はラテン語で、
 
 re =「再び」
 habilitate  =「適する」

という意味になります。

これを合わせて日本語に直訳すると、
 
 re-habiritate = 「再び‐適する」

ということになります。

また、医学事典によると以下の通りです。
リハビリテーション、社会復帰(疾患、病気、負傷の後に、正常またはほとんど正常に機能しうる能力を回復させること)
via medical view ステッドマン医学大辞典 改定第5版
以上のように記載されています。

言語的な意味から総括すると「リハビリ」とは、病気や疾患、負傷、障害を抱えた人々が社会復帰や再び適合する事を指している様です。

日本における「リハビリ」の歴史は?

日本は古来より、固有に文化に基づいた物理医学的手法が用いられてきていました。

しかし遠藤周作の「沈黙」に出てくる宣教師が日本で重宝された様ではないですが、日本の医学は経験則に基づくものであり、科学的実証手段に基づく体系化はされていなかったようです。

日本の医学は明治維新までは東洋医学が主流であり、明治維新以降、西洋医学はドイツ医学が第一義とされてきました。

第二次世界大戦後の昭和23年の医療法改定時に、米国から導入された医学・医療制度の中に初めてリハビリ医学領域が含まれることになります。

しかしながらそれは「理学診療科(または放射線科)」であり、名前からも分かる通り、現在のリハビリとは大きく形の異なるものでした。

それから17年後、現在のリハビリ体系を作る法律が制定されました。
「理学療法士及び作業療法士法」です。

これによって、今まで医師の処方に合わせて助手が行っていたリハビリが、国家資格を有した専門職が登場しました。

そして日本の「リハビリ」に、大きな影響を与えたのが1989年に策定された「ゴールドプラン」です。

経済的にも、医療的にも先進国となった日本ですが、それは超高齢化社会を迎えることを意味していました。

経済効率を優先し核家族化した日本社会は、欧州などの先進国と比較しても歪な社会であり、日本に合った形の医療、介護制度の構築が急務となりました。

その後「新ゴールドプラン」へ変遷し、1997年に今の介護保険制度の根幹となる「介護保険法」が制定されることになります。

その過程の中で「リハビリ」に要求されるものは「治療」から「介助・介護」、「動く」事から「QOL(quality of life;生活の質)」へとシフトしてきました。

日本における「リハビリ」の関連職種ってどんなのがあるのだろうか?

前述で述べた通り、「リハビリ」はとても広義の意味があります。

したがってそこに関わる職種も様々ですが、ひとまず文献に掲載されている職種を紹介します。
A リハビリテーション医(physiatrist)
B リハビリテーション看護師(rehabilitation nurse)
C 理学療法士(physical therapist;PT)
D 作業療法士(occupational therapist;OT)
E 言語聴覚士(speech therapist)
F 義肢装具士(certified prosthetist-orthotist;CPO)
G ソーシャルワーカー(medical social worker;MSW)
H 保健師(public health nurse)
I 臨床心理士(clinical psychologist)
J リハビリテーション工学士(rehabilitation engineer)
K 職能訓練士(vocational counselor)
L 介護福祉士・社会福祉士
M 介護支援専門員(ケアマネージャー)
N 看護補助者・ヘルパーなど
via 千野直一編 現代リハビリテーション医学 改定第2版
本に掲載されている職種だけでもこれだけありますが、私が病院や施設で関わってきた職種を補足で掲載すると…

あん摩・マッサージ師
鍼灸師
精神保健福祉士
音楽療法士(MT)
運動療法士

などがいらっしゃいました。

「リハビリ」の現場では、それぞれの専門性を持ち寄り、対象者(Pt)やその家族を含めて「リハビリ」を皆で造り上げています。

日本の「リハビリ」の実際は?

決して「白衣」ばかり着ているわけではありません。
前項で挙げた様な職種が働いているわけですが、日本のリハビリは語源からも分かるように西洋医学の影響を強く受けています。
したがって、医師を軸とした医療制度が中心となって動いていると言えるでしょう。

診療報酬表の目次に掲載されているリハビリテーションは以下の通りです。
リハビリテーション
リハビリテーション充実加算(回復期リハビリテーション病棟入院料)
リハビリテーション総合実施計画提供料
リハビリテーション料
via 一般財団法人 医療保険業務研究協会 平成26年改訂 医科診療報酬点数と早見表
ここに掲載したものはあくまでも「リハビリ」が頭文字に来たものです。

「リハビリ」について全てを語ろうとすれば、前述の職種分の教科書が全て必要になりますのでここでは「診療報酬内で更に『リハビリ』が頭文字」に限定しておきます。
通則
リハビリテーション医療は、基本的動作能力の回復を目的とする理学療法や、応用動作能力、社会適応能力の回復等を目的とした作業療法、言語聴覚能力の回復等を目的とした言語聴覚療法等の治療法の構築により構成され、いずれも実用的な日常生活における諸活動の実現を目的として行われるものである。
via 一般財団法人 医療保険業務研究所 平成26年度改定 医科診療報酬点数と早見表
医療保険上は上記の様に定義されています。

私は約10年程病院に在籍していましたが、実際この文章が網羅している通りだと思います。

「実用的な日常生活における諸活動の実現」

これが現在私たちリハビリスタッフが見ている「リハビリ」の主目的です。

この目的に合わせて必要なサービスを提供しています。

他の「リハビリ」はないの?

「リハビリ」という言葉はとても広く、上記の目的に合っているものはすべて「リハビリ」と言えなくもありません。

実際、私が現在活動している障害者就労支援の現場では、身体障害者のみならず、精神や発達の障害を抱えた方、また障害とまでいかなくとも問題を抱えた方の社会生活や、職業支援を行っています。

これも大きな意味では「リハビリ」と捉えられると思います。

機会があれば細かく掲載していきたいと思いますが、今回は上記で登場したリハビリ3職種、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)の就労先の割合や情報を掲載しているHPを載せておきますので、参考にして頂けたら幸いです。

海外ではどんな「リハビリ」をしているのだろう?

「アロマテラピー」や「ホメオパシー」も認められている国もある?
先日ハワイ在住の知人と話をした時、
「『リハビリ』って負傷軍人の治療とかするんじゃないの?」
と言われました。

アメリカにおける「リハビリ」は第二次世界大戦やその後の戦争における負傷兵の治療という、社会背景をベースにして発展してきました。
そのため、義肢装具やそれに合わせた使い方の指導、運動療法などが基本ですが、近年ではPTSD(外傷後ストレス性症候群)等の精神、心理面のダメージケアやリハビリも重要視されてきている様です。

日本における「リハビリ」のベースはアメリカ式です。
ちなみに私の先輩にあたる大ベテランのOTは、日本にまだ養成校が出来て間もないころであり、指導者がアメリカ人、米軍基地の中かつ授業は英語、教科書もない中で学習したそうです。

ヨーロッパのリハに目を向けてみると、紀元前5~4世紀に活躍したギリシャのヒポクラテスが起源とされています。また古代ギリシアには大衆浴場があり、温浴療法が用いられていたと言われています。

ヨーロッパでは近年になり、「ジムナスチーク」と呼ばれる様々な治療的体操が開発されて普及するようになりました。
基本は温泉療法、運動療法の併用がベースになっているようですが、スウェーデンなどの北欧に代表される福祉大国では、より福祉側にシフトした手法が用いられている様です。

まとめ

如何だったでしょうか?

これを読んでくれたあなたが、少しでも「リハビリ」を身近に感じて頂けたら幸いです。
あなたがこれを読んでいる今も、「リハビリ」を続けている人々がいます。
そしてその「リハビリ」を支援している人たちもまた存在しています。

本当の意味での「リハビリ」の主役は、これを読んでいる「あなた」です。
さらに『「リハビリ」の目標』とは、「リハビリ」をしている人が「リハビリ」を必要としなくなる生活を送ることが出来るようになる事です。

ノーマーライゼーション(*1)が現実になる為には、一人一人がその人の特徴を「個性」として捉え、足りない部分を補いつつ、その強みを社会の中で生かす事になるのではないでしょうか?
*1 「ノーマライゼーション」とは - 障害者や高齢者など社会的に不利を受けやすい人々(弱者)が、社会の中で他の人々と同じように生活し活動することが社会の本来あるべき姿であるという考え方。また、弱者がスムーズに社会参加できるような環境の成立を目指す活動、運動のこと。
(引用元:はてなキーワード)

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