はじめに

脂漏性角化症(しろうせいかっかしょう)とは難しい病名ですが、放っておいていいものかどうか個人では判断がつかないものです。
見た目としても良い印象は持てず、進行すると悪い物になるんじゃないかという不安も持つことになるかもしれません。
実は、この脂漏性角化症は誰しもが持つ可能性があります。
詳しい内容を知っていただき、対処の方法についても解説していきます。

脂漏性角化症って何?悪性?良性?

脂漏性角化症(しろうせいかっかしょう)は「老人性疣贅(ろうじんせいゆうぜい)」とも呼ばれます。疣贅(ゆうぜい)とは医学用語ですが、私たちに馴染みのある言葉では「いぼ」のことです。

高齢になるにつれて発症する率が高くなり80歳代以上では、ほとんどの人が持つものとなりますが、中には20歳代から現れる人もいます。
脂漏性角化症は腫瘍の部類に入りますが、良性腫瘍です。放置して悪性に移行するということはほとんどありません。

【発症部位】
手の平や足の裏以外の部位に出現するもので、紫外線を受けやすい顔や首、肩などの部位には特に多く見られます。
よく見られる手の甲など生じるシミ状のものも脂漏性角化症の一つである場合があります。

【大きさ】
1mm程度から始まり、時間の経過とともに大きくなり、大きいもので2㎝程度までになるものもあります。

【色】
若い世代で出現する場合はピンクっぽいこともありますが、茶色っぽい物から黒色に至るものと様々です。
時には悪性腫瘍の悪性黒色腫と同じような色のものもあり、検査において鑑別する必要のあるものもあります。

【形】
円形、楕円形、対称性のある形になっていることが多いです。。
表面は他の皮膚と変わらなく平たくサラサラしたものから、ガタガタしたうえに硬く隆起した物まであります。

【痛み】
気になって手が行くことが多くなるかもしれませんが、通常は痛みも痒みもありません。

脂漏性角化症はターンオーバーの低下によるものだった

皮膚は表面から表皮、真皮、皮下組織と三段階に分かれています。
皮膚は皮膚の健康を保つため、自らターンオーバーといって皮膚の新陳代謝を繰り返します。

通常は28日周期程度のものが、年齢を重ねるにつれて45日程度と長くなっていきます。
太陽の紫外線は一番表面の表皮でメラニンとなりますが、浸透しないようにその場所に維持されます。そして皮膚の奥から表面に向かって老廃物が押し上げられますが(ターンオーバー)、この力が弱くなってきますと表皮のメラニンを押しだし、はがれ落とす事ができなくなります。

こういったサイクルでメラニンは蓄積されていき、シミやイボとなるわけです。
脂漏性角化症はこうして残ったメラニンが黒ずみ、隆起して形を変えたものなのです。

脂漏性角化症のイボをとるための対処法や治療法は?

自己対処法は難しい

イボ」の対処薬として市販薬がいくつかあり、軟膏タイプ、ばんそうこうタイプ、飲み薬まで。しかし飲み薬にはウイルスが原因のイボである尋常性疣贅に適応する物が多く、脂漏性角化症に効果があるかどうかは定かではありません。
ハト麦が効果的であるという話もありますが、皮膚のコントロールをするビタミンBが多く含まれるため、脂漏性角化症を含めた皮膚のトラブルには効果があるといえます。

病院で治療するには

●凍結療法

液体窒素が含まれた綿棒を患部に当てる治療法。
窒素を当てることで表面が、マイナス195℃となり冷却法で患部の細胞を死滅させ、その下の正常な細胞を活性化させるという物です。
一度に治癒するものではないので、何度か通院が必要となります。
また、痛みや色素沈着が生じる場合があるので、顔などの表面に出る部位には適さない場合もあります。


●炭酸ガスレーザー

炭酸ガスレーザーを数秒照射することで、患部の皮膚組織の水分を膨張させ、破裂に至らせる形式です。出血もなく一度で脂漏性角化症の治癒ができる、深さや角度などの調節が利く術式のため、顔面などの治療には便利といえましょう。


●電気外科的治療(電気焼灼療法)

脂漏性角化症でできているイボのサイズが大きい時などは、やはり医師が直接的に切開術を行うことになります。
悪性腫瘍との鑑別として病理検査も可能となります。

脂漏性角化症には4つの予防

1、紫外線対策

普段より紫外線が強い時間の外出を避けたり、外出する際にはしっかりと日焼け止めクリームなどの使用、帽子や日傘、手袋などの皮膚の保護用具を活用しましょう。

2、スキンケア

肌の乾燥は、しわを作るだけではありません。皮膚のターンオーバーの阻害因子となりますので、洗顔後の保湿化粧品や、ビタミンC誘導体が含まれている美容液などを使用すると効果的です。

3、食生活

皮膚外側からのケアと合わせて内側から予防することも大事です。
バランスのとれた食事は基本ですが、皮膚のターンオーバーを考慮するとすれば、
ビタミンA(ほうれん草、にんじん)、ビタミンC(レモン、柿、ピーマン)、ビタミンE(ナッツ類)、タンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)です。
たばこのニコチンは体のサビ(劣化)や肌の老化を作る原因になります。アルコールも皮膚の乾燥をまねく材料にもなります。禁煙や過度の飲酒は避けましょう。
また寝不足やストレスは、ホルモンや自律神経のバランスを崩しますので、時間や気持ちにゆとりを持った生活を心がけましょう。

4、生活習慣

まとめ

脂漏性角化症は誰もが持つことになる良性腫瘍です。
しかしイボと呼ばれるものにはいくつかの種類があり、進行する悪性のものもあります。

気になるからといって常時いじったり、勝手に良いと思った薬剤を使用して悪化させてしまうことなく、気になった時や変化が見られた時などは、一度皮膚科受診をして正しい診断のもとで対処することが望ましいです。

監修

・救急医、内科医 増田 陽子

・救急医、内科医 増田 陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

関連する記事

関連するキーワード

著者