ケアクル編集部（以下、ケアクル）：おはようございます。今日は宜しくお願いします。

財部 順司先生（以下、財部）：宜しくお願いします。

ケアクル　：日本に戻ってくるのはだいぶ久しぶりだとお聞きしたんですけれど、どれぐらいぶりに戻っていらしゃったんですか？

財部：　11年ぶりになります。

ケアクル：　現在はオーストラリアのアデレードにお住まいとお聞きしていますが、アデレードはどんな街なんですか？

財部：　アデレードは”世界でもっとも住みやすい都市”に選ばれた都市というだけあって、海あり山ありとても綺麗な都市です。チャイナタウンにあるセントラルマーケットでは豊富な食材や雑貨店で賑わっています。魚介類やお肉もとても美味しいんです。近所のスーパーで醤油、味噌、海苔などの日本食には欠かせないものが手軽に購入できるのも私が住みやすい理由の１つだと思います。大都市では日本語を街中で聞く事がありますが、アデレードではなかなか日本人の方とお会いすることがなく、それに比例して日本人が職につけるジャンルも限られてしまっています。

ケアクル　：今回はバランスメソッドのセミナーのために日本にいらっしゃったとお聞きしてますが、その治療法について少し説明していただいてもよろしいですか？

財部：　譚式バランスメソッドとは、ドクター譚先生が考案なさったシステム（Acupuncture１２３）にしたがって治療戦略を簡単に導き出して誰にでも簡単に即効効果を得る事ができる方法です。

　譚先生は台湾出身で幼少時代から東洋医学に関心を持ち、様々な古典鍼灸医学の本を読み、鍼灸だけではなく中医薬学にもとても詳しかったそうです。宇宙工学エンジニアの博士号を学ぶために渡米したのですが、アメリカで行われたいた鍼灸治療が、彼が台湾で体験したものとは全く違う方法で治療している光景をみた時はとても驚いたそうです。譚式バランスメソッドはとても簡単に治療戦略法を考える事ができ、どんな西洋医学診断の患者さんが来院なされても慌てる事なく治療する事ができ治療効果を得る事ができます。

　残念ながら譚先生は4年前に他界なされましたが、彼のお弟子さんのアイリーン、デルフィンそしてポールが後を引き継ぎ世界各国で講習会を行い、譚式バランスメソッドを世界に広めています。日本にはこの鍼法がしっかりと紹介されていなかったようですので今回アイリーンと一緒に日本で講習会を開けた事は大変嬉しく思い、さぞかし譚先生も喜ばれてることだと思います。

ケアクル：　いくつの時に海外に出たんですか？

財部：１８歳の時にハワイに行ったのが始めての海外旅行でした。初めての海外旅行はとても刺激的で今でも当時の事をよく覚えています。いつか海外で生活してみたいというイメージは小学校の時から自分の中にあったと思います。英語の成績も悪く英語も話せないのに周りから見ればお馬鹿さんと写っていたんじゃないでしょうか？
大学に通ったのもオーストラリアに来てからなので３０歳超えてから大学生になり卒業しました。こちらでは幾つになっても勉強できる環境が整ってるのでとても良いと思います。

ケアクル：　アデレードに落ち着くまではどんなことをされていたんですか？

財部：　ハワイ旅行後は海外への憧れもますます膨らみ、パスポートセンター、引越しスタッフ、旅行会社などで働きお金を貯めてから東南アジアのマレーシア、シンガポール、タイ、インドネシアなどの国をバックパッカーで1人旅をしていました。
　6ヶ月後に帰国し、初めは新規顧客営業マンとして働き始めました。その時の飛び込み営業経験が今も役に立ってるんだと思います。趣味で習っていたスペイン舞踊を本場で習いたくスペイン語も全く知らない状態でスペインのマドリットに飛び立ちました。いろんな方々に助けてもらい４年間スペインで生活する事ができました。この場をかりて感謝の気持ちを送らさせて頂きます。その節は大変お世話になりました。

ケアクル：アデレードへはなぜ住むことになったんですか？

財部：その当時の彼女がオーストラリアのアデレード出身で彼女と結婚してオーストラリアに永住する事になりました。彼女の家族がお医者さんだったという影響なのか、自分は東洋医学を学んでみたいと思うようになりました。周りからは鍼で稼ぐのは厳しいと言われましたが何か心から湧き出るようなものがり勉強に没頭しました。

ケアクル：　ということは、鍼灸はオーストラリアで勉強したんですね？

財部：　はいそうです。
　その当時は鍼治療は国で認められた医療機関に属していなかったので、学校も曖昧な立ち位置で、当時の英語力で詳しいことを調べる事にとても苦労しました。それでも自分のモチベーションを維持したかったので日中は車屋で洗車のお仕事をして同時に鍼灸学校に通っていました。洗車のお仕事でしたが現地の人達と一緒に働ける環境にとても満足していました。娘が生まれた時期に鍼灸学校を休学したため、先にレメディオマッサージ（医療マッサージ）という資格を取得してマッサージ師として働き始めたんです。

ケアクル：　レメディオマッサージってメディカルマッサージってことですか？

財部：　そうです医療マッサージです。このディプロマができる前は、マッサージはどうしてもいかがわしいマッサージというイメージがあったようなのです。ディプロマ制度にしてからは、個人健康保険の対象になり少しですが治療費が負担されるのでイメージも変わっていきました。以前に鍼灸学会に参加した時に、鍼が上手な先生はマッサージがとても上手だと聞いた事があり、一生懸命にマッサージの技術を研鑽していたと思います。
　クリニックではマッサージに加え、指圧、もぐさ、吸玉、ホットストーン、鍼などを組み合わせて治療していて患者さんもとても喜んでくれましたのでやり甲斐を感じていました。しかし、体力的にはとても大変な仕事なのでいつか自分の体に限界がくるのではないかと不安な気持ちがあったのが正直なところです。

ケアクル：　今、オーストラリアでは鍼は国家資格なんですか？

財部：　そうですね。国の免許ですね。大学を卒業して、学士号を取得してから国の機関のAustralia Health Paractitioner Regulation Agency(AHPRA) と 鍼灸協会のAcupuncture and Chinese medicine Assocoation (AACMA) に登録するとはれて中医鍼灸医師になります。この機関に登録する事でAcupuncturist（鍼師) もしくは Hearbalist（中医薬剤師）として働く事ができます。
　この２つのタイトルは法律で守られていますので登録者以外が使うことは禁じられていますが”Acupuncture”という名前は守られたいないのでこれは誰もが使う事ができます。例えば、中医鍼師と名乗らないでドライニードルや日本鍼灸と言えば法律に触れることはないという事です。

ケアクル：　どこかに登録しなくても、治療できちゃうってことですか？

財部：　今の法律ではできてしまいます。ただ働くためには労働ビザが必要になります。ワーキングホリデービザで働く事も可能ですが英語力は必要になると思います。

ケアクル：　「鍼灸師」って名乗ってはいけないということですか？

財部：　そうですね。”Acupuncturist”（＝鍼灸師）というものが法律で定められているので、でも、クリニックで行う”Acupuncture”（＝鍼治療）は定められていないんです。なので、フィジオセラピストがドライニードリングとかが実施できるというのはそういう訳なんです。

ケアクル：　実際にドライニードリングどういうものなんですか？

財部：　ドライニードルの正式な名前は、ドライニードルセラピーと言います。痛い場所やトリガーポイントに注射針をさして施術を行います。注射は注射針を用いて直接体内に薬剤を注入する投与法ですがこのドライニードルは薬剤を注入しない（ドライ）なのでドライニードルというんです。私個人の意見ですが、ドライニードルセラピーを行うなら注射針を使って施術すればいいと思うんですが、患者さんが痛くて敬遠するので鍼灸鍼を使い出してからいろんな誤解を招くようになってると思います。

ケアクル：　ドライニードルはトリガーポイントにアプローチするんですね？

財部：　基本的に痛い場所に鍼を刺して、刺激を与えて治療する方法のようです。効果あると思います。ただ、週末の講習会に参加しただけで鍼を使ってしまうので、鍼灸師が4−6年またあるひとはもっと時間をかけて資格を習得するのを考えるとあまりに短い期間だと思います。理学療法士、カイロプラクター、最近ではマッサージ師、マイオセラピストもドライニードルを使うようになって来ています。
　多くの鍼灸師さんも局所治療をなっていると思いますが、オーストラリアでは局所治療のドライニードルがとても広がっていますので、鍼治療を受けた事があるという患者さんでも実はドライニードルだという事が多くあります。私が行なっている譚式バランスメソッド はなるべく局所に鍼を刺さない遠隔治療法で効果をあげています。鍼治療とドライニードル治療の違いを知っていただけるのも譚式バランスメソッドの利点だと思います。

ケアクル：　免許とって何年ぐらい経つんですか？

財部：　正式に鍼の免許を取ってからは6年になります。その以前から鍼を使って治療してましたので10年以上になります。
　ただその当時は学校で教われた鍼法で治療してましたので、マッサージ、もぐさ、吸玉、ホットストーンなどを組み合わせて治療していて、いったい何が一番効果があるのか分かってなかったです。いろんな事を取り組むと患者さんが喜んでくれるのでしていたと思います。鍼よりマッサージの方が効果があると自分でも真剣に思っていましたし。。。（笑）

ケアクル：　バランスメソッドとの出会いは？

財部：　AACMAのニュースレターで譚式バランスメソッド 講習会のお知らせがあったんです。
　いつもいろんな講習会のお知らせが来るんですが、いつもは素通りしていたんですがなぜか目に止まり譚先生のことをインターネットで調べるとYouTubeで彼の実演治療ビデオがあったので見てみまたした。とても愉快な先生でカリスマ性があり座っている患者さんを数分で治療していく光景でした（信じがたい光景でした）。あるビデオでは腰の痛みを治療していて、自分もマッサージのしすぎで腰を痛めていたので、半信半疑で譚式バランスメソッド を試してみました。すると今まで腰に違和感があったのが手に鍼を刺しただけで、腰の痛みと違和感がスーッとなくなったんです。
　いろんな先生の治療院に通い鍼を刺してもらっても遠隔治療法で鍼を打たれて効果があった経験がなかったので本当にびっくりしました。
　その後は患者さんにマッサージをしながら譚式バランスメソッド を試すと今までグイグイ肩をもんだり吸玉を使って治療していた肩のコリがゼリーのように数秒でやわらくなるのを自分の手で感じ流石に信じるしかないんですが、いつも同じような効果を全ての患者さんに出るわけではなくやはりYouTubeだけでは全てを学ぶことはできないんだなと感じ、思い切って講習会に参加しました。
　１００人を超える参加者で会場はすごい雰囲気でした。そこに譚先生が現れ、参加者たちは期待と不安そして興奮とが混じり合って異様な雰囲気でした。譚先生が枯れた低音の声で話し出しました。

　それを聞かされた時、”ドッカーン！”と雷が自分に落ちた衝撃でした！なぜなら自分が全てしてることだったからです。
　譚先生の大ファンになった私は講習会3ヶ月後に譚先生を追っかけてアイルランドのダブリンまで会いに行きました。私の新しい名刺を見せた時は譚先生もニコニコとして大変喜んでくれました。そこには自分の名前と中医鍼灸医師とだけ書いてあったからです。
　毎年どこかで行われてる講習会に何度も足を運んでいます。

ケアクル：　オーストラリアでは毎年講習会はあるんですか？

財部：　Si Yuan balance methodの先生方がオーストラリアとヨーロッパ等で講習会を毎年開いています。またアジア、カナダ、アメリカや南アメリカは The academy of Acupunctureのアイリーンが講習会を行なってます。来年2020年6月5日~７日までの３日間で基礎コース（英語：通訳付き）を今回は大阪で行います。ご興味がある方は是非参加なさってください。

※後半に続きます