捻挫とは

捻挫とは、転倒や他者との接触などによって本来関節が動くことのできる可動域以上に動かされることで、関節周囲の靭帯や関節包が伸びたり、断裂したりしてしまう状態をいいます。

足首の場合は、主に曲げ伸ばし(底背屈)の方向に大きく動かせるのに加え、内外側に捻る(内外反)方向にも多少の動きが見られます。歩行や走行中にバランスを崩したり、ジャンプ着地の際に足の裏から接地できず足首が大きく捻られたりしたときに、靭帯や関節包を損傷してしまうことが多くあります。
捻挫をすると、組織の損傷の程度に伴い、関節の痛み、腫れや熱感、発赤、皮下出血などの炎症症状がみられます。

足首の捻挫の種類

■内反捻挫

足首の捻挫のほとんどが『内反捻挫』です。
内反とは足首を内側に捻ることで、足首の外側の組織が引き伸ばされてしまい、靭帯などに損傷をきたします。

足首の外側には主に『前距腓靭帯』、『踵腓靭帯』、『後距腓靭帯』の3つの靭帯があります。
前距腓靭帯は外くるぶし(腓骨)前方から距骨の前方に向かって斜め下前方に走行しており、足首が底屈(足首がつま先方向に伸びる動き)した状態で内反したときに損傷します。
人の足の上や不整地などに着地してしまったときに捻りやすいのがこの底屈+内反の方向で、内反捻挫の中でもこの前距腓靭帯を損傷することが最も多いです。

踵腓靭帯は腓骨下方から踵の骨(踵骨)に向かってほぼ真下方向に走行しており、足の裏が地面についた状態でそのまま内反したときに損傷します。
前距腓靭帯に続いて2番目に損傷することの多い靭帯です。

後距腓靭帯は腓骨後方から距骨の後方に向かって後方向に走行しています。
足首が背屈(つま先を上げる動き)した状態で内反したときに損傷する靭帯であり、この靭帯の損傷はまれです。

■外反捻挫

外反捻挫は足首を外側に捻ることで起こる捻挫です。
内反捻挫に比べるとはるかに頻度は少なくなりますが、スポーツ中の急な方向転や不整地へのジャンプ着地などで受傷することがあります。内反捻挫とは逆に足首の内側の靭帯を損傷します。

足首の内側には『三角靭帯』と呼ばれる靭帯があり、内くるぶしを頂点に下方に扇状(三角形)に靭帯が走行しています。
三角靭帯の中でも足首の底背屈の状態によって外反した際に損傷する線維が異なりますが、全体的に外側の靭帯よりも頑丈であり、関節の形状も内反よりは捻りにくくなっているので受傷頻度は低くなります。

■遠位脛腓靭帯捻挫

遠位脛腓靭帯とは、膝下(下腿)に平行に存在する『脛骨』と『腓骨』の2本の骨をつなぐ靭帯で、足首からすぐ上位の下腿前面にあります。

無理な背屈やそれに捻りが加わった時など、脛骨と腓骨が開かれるような動きに対して受傷することが多く、他者との接触のあるスポーツ中などに起こります。
足首の関節部分よりもやや上方の下腿前面に痛みを感じるのが特徴で、足首に体重をかけることで脛骨と腓骨が離開しようとするので、靭帯が引き伸ばされ、痛みを感じます。

捻挫のテーピングの巻き方

捻挫の程度や目的に合わせて2種類のテーピングの巻き方をご紹介します。

■足関節固定テーピング

足首の捻挫後急性期や捻挫後のスポーツ活動で強固に関節を固定したい場合などに使用し、足関節の動きを全方向固定するテーピングです。
使用するもの:38㎜非伸縮テープ(ホワイトテープ)、50㎜アンダーラップ

1. 台の上に足を伸ばして座り、半分が台から出るようにします。
2. 足首が90度になるように保ち、下腿の下1/3から足部の土踏まずの頂点よりやや前方までアンダーラップを巻きます(テーピングが全て完了するまで足首は90度を保ちます)。
3. アンダーラップの下腿端を止めるように下腿側に2本、足部側のアンダーラップの端に1本、アンダーラップと平行に(下腿の軸に垂直に)非伸縮テープを巻きます(アンカー)。
4. 下腿内側のアンカー部→内くるぶし→足底→外くるぶし→下腿外側のアンカー部の順に通るように足首が内反しないように引っ張りながらテープを貼ります。
5. 4.のテープとほぼ同じ通り道でテープの1/3幅分前方にずらして1本、後方にずらして1本同様に貼ります(スターアップ)。
6. 足部の左右のぶれを抑えるため、足部のアンカーの母趾内側部→踵内側→踵後方→踵外側→足部アンカーの小趾外側部の順に通るようにテープを貼ります。
7. 6.のテープとほぼ同じ通り道でテープ幅半分ずらした上方にテープを貼ります(ホースシュー)。
8. 外くるぶし上方→足首前方→内くるぶし→踵後方→足底外側→足底内側→足首前方→外くるぶし上方の順にテープを貼りながら踵を固定します(ヒールロック)。
9. 内くるぶし上方→足首前方→外くるぶし→踵後方→足底内側→足底外側→足首前方→内くるぶし上方の順にテープを貼りながら踵を反対側からも固定します。
10. 外くるぶし上方→足首前方→足底内側→足底外側→足首前方→内くるぶし上方の順にテープを貼り、内反を制動します(フィギュアエイト)。
11.ホースシュー(手順6、7)とアンカー(手順3)の順に最初と同じ手順で行い、テーピングがずれないようにしっかり押さえたら完成です。

■内外反制動テーピング

足首の捻挫後回復期であり、大きな内外反を伴わない通常の底背屈では痛みがない場合に、内外反のみを制動するテーピングです。自分で簡単に巻けることも大きなメリットの一つです。
準備するもの:50㎜自着性伸縮テープ(テーピング同士が粘着し、外しても繰り返し使用できるタイプのもの)

1. 床の上に座ってテーピングをする方の足は膝を曲げて踵だけが床につくように足首を90度に起こします。
2. 下腿のくるぶしやや上方に下腿に垂直になるよう、下腿前面→内側→ふくらはぎとなる回し方で自着性の伸縮テープを2周程度、締め付けないように巻きます。
3. テープが下腿の前面に戻ったら土踏まずに向かって下降し、足底を横断して足部の外側から下腿前面に上がります。このとき、内反を制動するため、土踏まずから足底外側までをしっかりテープを引っ張ります。
4. 下腿前面に上げたテープを下腿後方へ通して外側まできたら、踵の外側を包み込むように下降し、手順3とは逆に足底外側→足底内側→下腿後面と踵の内側も包み込みながら斜め上に上げます。踵の安定が目的であるため、内反方向に引っ張らないように注意します。
5. 下腿後面から前面に戻したら、再び手順3、4のテープをもう一回ずつ繰り返します。
6. 内外反がしっかり固定されたら、最後は手順2と同じ位置で2周程度アンカーを巻いてテープを切ります。

足を内外側それぞれから見た際に、内くるぶしと外くるぶしの下方にテーピングで「Vの字」ができていたら、きれいに巻けています。
このテーピングは安静固定が目的ではなく、巻いたまま歩行やスポーツを行えるようにしているので、内外反はしっかり制動しながらも、締め付けすぎて血流不全による痛みなどがでないように注意しましょう。

捻挫治療とテーピングの注意点

捻挫に対してテーピングを行う際の注意点をご説明します。

■アイシングを行う

捻挫後の炎症をより早期に鎮静化させるためには、患部を直接氷や氷嚢で冷やす『アイシング』が最も重要です。
しかし、テーピングをしていると急性期に最も大切なアイシングを皮膚の上から直接行えなくなってしまいます。
外出時などでアイシングを行えないときは仕方ありませんが、自宅にいるときはテーピングや包帯による圧迫固定を行いながらも数、時間に一度は圧迫を外し、アイシングを行うことが理想的です。
テーピングをしているからといってアイシングを怠らないように注意しましょう。

■テーピングは毎日外す

テーピングは患部の安静を保つために重要ですが、正しいテーピングを施していても圧迫により多少は血流が低下します。
患部の自然治癒を促すためには血流が必要なので、テーピングは1日に1回は必ず外し、患部の血流を促してから再度巻くようにしましょう。

また、捻挫の程度や損傷した組織の状態にもよりますが、急性期は安静が第一です。しっかりとした固定を行うことが治癒に繋がります。
しかし、完全固定では動かさないことで、筋肉や皮膚など周囲の組織が硬くなって関節可動域が低下させる場合があるので注意が必要です。自然治癒を早めて、さらには予後が良いようにいつまで固定をするべきか専門家に相談しましょう。
亜急性期になったら、固定やテーピングを外してみましょう。痛みのない範囲や幹部に負担のかからない範囲で、固定をしっかり行うことと、少しずつ関節を動かす時間を作ることで治癒を促します。

■血流障害に注意する

テーピングをきつくしすぎると、血流を阻害してしまい、血行障害を起こしてしまうことがあります。急性期に患部を圧迫することで腫れや炎症を抑制することは効果的ですが、きつくしすぎないよう注意しましょう。
目安としては、テーピングをしている本人が圧迫による痛みを感じないこと、テーピングをした足の先が紫色や赤黒い色に変色していないこと、じんじんとした痺れなどがないことがあげられます。

おわりに

今回は足首の捻挫の種類と捻挫に対するテーピングの巻き方、そして注意点をご説明しました。

応急処置、歩行やスポーツ活動中の関節制動、捻挫予防などテーピングの効果は多々ありますので、必要に応じてぜひ使っていただきたいと思います。

一方で、捻挫をしたときに病院を受診することなく、状態がはっきりわからないままテーピングでやり過ごしてしまうのは危険です。受傷後は一度整形外科などの病院を受診するようにしましょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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