つわりとは

『つわり』は妊娠初期に現れる現象で、妊娠した女性の約半分が経験するものです。
一般的な症状は、吐き気や嘔吐で、症状の強い方はつわりの間ほとんど食べ物を口にできない場合もあります。
他にもつわりの症状には、だるさ、眠気、頭痛、便秘や下痢、匂いに対する過敏性、食べ物の嗜好の変化など多々あります。つわりの程度、つわりが出やすい時間帯、吐き気の原因となる匂いや食べ物も個人によってさまざまです。

つわりが起こる原因

つわりが起こる原因は、未だにはっきりしていません。
しかし、現段階で一般的にいわれているのは、妊娠した際に『hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)』というホルモンの分泌量が急激に増え、母体がホルモンの変化についていけないためという説です。また、『プロゲステロン』という女性ホルモンの分泌量が増加し、胃腸の機能が低下するためという説も有力です。

他にも、妊娠初期には胎児を異物として判断してしまうため、一種のアレルギー症状が起こっているという説、妊娠初期という不安定な時期に体を安静にさせるための症状であるという説など、諸説あります。

つわりが起こる時期とピーク

つわりが起こる時期は人によってさまざまですが、一般的には妊娠5週前後から始まり、8~11週でピークを迎え、安定期に入る16週前後には落ち着いてきます。
つわりが落ち着く原因もはっきりはしていませんが、胎盤が完成するころに『hCGホルモン』の分泌が落ち着くなど、ホルモンのバランス整うことにあるようです。
ただし、つわりは精神的なストレスや生活習慣によっても症状が変わってきます。人によっては妊娠後期や出産直前までつわりの症状に悩まされる人もいるため、定かではありません。

食べづわりとは

一般的なつわりが、吐き気や嘔吐などで食べ物が食べにくくなるのに対し、『食べづわり』は空腹になったり、食べ物を口に入れていないと吐き気がするという状態です。

原因としては、妊娠中は副交感神経(眠くなったり、お腹が空いたりする時に活発になっている神経グループ)が主に働くようになりますが、ストレスや緊張などにより、交感神経の働きが活発になってきます。そうすると、自律神経が乱れることから、交感神経が優位になり、それを副交感神経にスイッチするために食べたくなるといわれています。
また、妊娠により今まで以上のエネルギーを使うので、低血糖状態となり、吐き気がすると同時に食べたくなるという説もあります。

つわりがひどいときの対処法

妊娠初期の数週間で終わることが多いつわりですが、実際経験している女性にとってはとても長く感じるものです。
つわりを少しでも楽にするために自分でできることはあるのでしょうか?

1. 食べられるときに食べられるものを食べる

妊娠中の女性は、お腹の赤ちゃんの栄養を考え、どうしても栄養バランスよくきちんと食事をしないといけないと思いがちです。
しかし、妊娠初期の胎児は必要な栄養の量も少なく、ママの血液からの栄養で十分足りています。
脱水には注意が必要ですが、栄養に気を遣いすぎることなく、食べられるときに食べられるものを食べるようにしましょう。

2. 1回量を減らして、こまめに食べる

つわりのときは、お腹が空きすぎても、満腹になりすぎても、吐き気を悪化させる原因になります。
日に3度の食事にこだわりすぎず、こまめに少しずつ食べることで症状の軽減につながるでしょう。

3. 食べるものを冷やす

つわりのときは、温かいものよりも比較的冷たいものが食べやすくなるといわれています。
炊き立てのご飯が苦手でも、常温や少し冷たくすると食べられることもあります。汁物も冷製スープにすることで食べやすくなるかもしれません。
ただし、極端に冷たいものばかり食べ過ぎると胃腸が冷えてしまい、胃腸の働きが弱くなってつわりの症状を悪化させてしまうこともあるため、程度には気をつけましょう。

4. ストレス解消法をみつける

つわり中は体を動かすのがつらいため、家に引きこもってしまうことも多いようです。
なかなか終わらないつわりにストレスを感じてしまうこともあるかと思います。しかし、ストレスはつわりを悪化させる原因にもなるので、少し体調がよいときは散歩に出たり、趣味や好きなことをしてみたりして気分転換をしましょう。
実際に、仕事をしている人の方が、仕事をしていない人に比べてつわりの自覚症状が少ないといわれています。

体調が悪いときにもちろん無理をする必要はありませんが、自分なりのストレス解消方法を見つけ、他のことに気が向く時間を作りましょう。

つわりの時の食事

つわりの真っ只中で、なかなか食べたいものや食べられるものが見つからず、困ってしまうことがあるかもしれません。
そこで、吐き気を抑える効果のある食材や一般的につわり経験者が食べやすかったという声の多い食材をご紹介します。

1. バナナ

ビタミンB6には吐き気を抑える効果があります。
バナナはビタミンB6を豊富に含んでいる上に消化もよく、カロリー摂取にも向いているので、あまり食事が摂れないときにおすすめの食材です。
オレンジジュースやヨーグルトなど、さっぱりしたものと混ぜてジュースにすると飲みやすいでしょう。

2. 玄米

玄米もビタミンB6を豊富に含みます。
特に炊き立ての白米の匂いが苦手な妊婦さんが多いので、白米の代わりに玄米にしてみるのも効果的かと思います。
また、玄米は鉄分、葉酸、食物繊維も多く含み、妊娠中の方がしっかり摂取したい栄養も摂ることができるので一石二鳥です。

3. 生姜

生姜にも吐き気を抑える効果があります。
生姜湯にして飲むのもよいですし、生姜焼きなど料理の味付けとして入れて食べやすくするのもよいでしょう。

4. 豆腐

柔らかくて食べやすく、消化もよいのでおすすめの食材です。
また、たんぱく質、ビタミン、オリゴ糖といった妊娠中に積極的に摂取したい栄養分も多く含まれています。

5. トマト

つわり中は、酸味のあるものや冷たいものが食べやすい傾向にあります。
そこでぴったりなのが、トマトです。
柑橘系のフルーツももちろんよいですが、食べ過ぎるとカロリーや糖分の摂り過ぎになってしまうこともあります。
つわり中の短期間であれば、そこまで気にすることはありませんが、トマトであれば糖分やカロリーを気にすることなく食べることができ、水分もしっかり摂ることができるので最適な食材です。

まとめ

今回は、つわりの一般的な情報や対処法をまとめましたが、つわりの症状は個人によってさまざまで、食べられるものや症状の改善方法もそれぞれです。
カフェインや生ものなど妊娠中に控えておいた方がよいものには注意しながら、ご自分がストレスなく食べられるものや方法を見つけ、つわり期間を乗り切っていただけたらと思います。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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