妊娠中の性欲の変化

性欲には大いに個人差がありますが、妊娠中も同じで元より強くなる方も、下がる方もいらっしゃいます。妊娠中に性欲が強くなることを恥ずかしいと思ってしまいがちですが、妊娠中はホルモンバランスの変化も大きく、性欲が強くなることは自然なことなのです。

女性の体内では、妊娠すると女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が増加します。エストロゲンは、脂肪を合成したり、子宮頸管粘液を増やす働きがあります。
また、赤ちゃんに栄養をしっかり送るために血液量が増加するので、性器周囲の血液量も増加します。
つまり、妊娠中の女性の体は男性を受け入れやすい状態になっているのです。
それでも、妊娠初期はつわりなどで体調が安定しなかったり、妊娠後期は大きいお腹が気になったりして性欲が減退することがあります。
そのため、一般的に妊娠中に女性の性欲が高まりやすいのは、最も状態が安定している妊娠中期のようです。

妊娠中のセックスが母体や胎児に与える影響

妊娠中はお腹の赤ちゃんのためにも、母体のためにも、セックスしてはいけないのではないかと思っている方もいらっしゃるようですが、そういうわけではありません。
とはいえ、色々と心配ごとがあると思いますので、妊娠の時期に分けて説明していきます。

1. 妊娠初期

妊娠初期のセックスで最も気になるのが、流産のことではないかと思います。
基本的にセックスと流産の関係はないと言われていますが、まだまだお腹の赤ちゃんは安定していない時期なのは確かです。深い挿入や刺激の強いセックス、長時間でママの体が疲れてしまうようなセックスは控えた方が良いでしょう。

2. 妊娠中期

妊娠中で最も安定している時期なので、パートナーとのセックスを楽しみやすい期間といえます。
ただ、これはあくまでも妊娠の経過が順調な場合ですので、経過によっては注意が必要です。
女性がオーガズムを感じると子宮が収縮することや、精液にはプロスタグランジンという陣痛促進剤と同じ成分が入っているということもあるので、切迫流産の場合などは控える必要があります。
また、妊娠中期になるとお腹がだんだん大きくなってきています。お腹の圧迫は赤ちゃんへの血流が悪くなり、負担がかかるので体位には十分注意が必要です。

3. 妊娠後期

妊娠の経過が順調であれば、セックスをすることは可能です。
しかし、妊娠後期になってくるとお腹が張りやすくなっているため、ママがお腹の張りを感じたら途中で休憩するなどの配慮が必要です。
少し休憩して張りがおさまるようなら問題ありませんが、しばらくしてもおさまらないようであれば控えておきましょう。

『お迎え棒』という言葉があるようにセックスによる刺激が陣痛を促すという説がありますが、直接的な因果関係は認められていません。
しかし、オーガズムが子宮の収縮を促すなど、セックスでの刺激は全くないとは言い切れないので、母体の様子を気にかけるようにしましょう。
また、初めての出産やママになるという不安からセックスなどは考えられないという女性も多いので、そのような場合には無理して行わず、パートナーの方ともよく話し合いましょう。

妊娠中のセックスの注意点

妊娠中のセックスは問題ないと言っても、注意が必要ないわけではありません。
ここでは、お腹の赤ちゃんやママの体の負担にならないためのセックスについてご説明します。

以下の注意点はあくまで妊娠の経過が順調であり、セックス自体が問題ない場合ですが、ママのお腹の張りや挿入による不快感、出血には十分気を付けましょう。
また、切迫流産や切迫早産の場合はセックスを控えるようにしましょう。

1. コンドームを着用する

妊娠中は抵抗力が弱くなっており、ママの体は細菌感染などを起こしやすい状態になっています。膣や子宮内の細菌感染がお腹の赤ちゃんに影響を及ぼしてしまう可能性もあるため、妊娠中のセックスではコンドームの着用が必要です。

2. 長時間の挿入、深い挿入は避ける

長時間の挿入はママの体を冷やしてしまったり、お腹の張りを促してしまったりすることがあります。
ママやお腹の赤ちゃんの体を最優先に考え、長時間の挿入や深い挿入は避けるようにしましょう。

3. 体位に気を付ける

特にお腹が大きくなってくる妊娠中期以降は、セックスの体位によってお腹を圧迫してしまうことがあります。お腹を圧迫してしまうと、赤ちゃんへの血流が悪くなってしまうので、体位には十分気をつけましょう。騎乗位や座位などママが調整できる体位を選ぶこと、ママが積極的に動かなくてもすむ体位を選ぶことがおすすめです。

妊娠中にセックスレスにならないために

妊娠中はママのホルモンバランスが不安定であったり、つわりやお腹の張りなど体調が優れなかったりするため、性欲が減退する時期も多いようです。
また、男性側はお腹の赤ちゃんやママの体が心配だったり、ママのお腹が大きくなっていく姿を見てなかなかセックスをする気にならなかったりすることもあるようです。

セックスはパートナーとの大切なコミュニケーションの一つですが、お互いの気持ちがすれ違ってしまい、妊娠中にセックスレスになってしまうことで、そのまま出産後まで寂しい思いをしてしまうカップルも多いようです。
そこで、妊娠中にセックスレスにならないための方法をご紹介します。

1. ママの気持ちをパートナーにしっかり伝える

パートナーがせっかくセックスに誘ってきても、ママの体調が優れなかったり全くその気になれなかったりする時期はあるかもしれません。
そんなときに、パートナーの気持ちを考えずぴしゃりと断ってしまうと、パートナーはそれ以降、誘いにくくなってしまいますし、ママに対する気持ちも萎えてしまいます。
ですから、そんなときは自分の体調が優れないことや、ホルモンバランスの影響で今はセックスを控えたいということをきちんと伝えるようにしましょう。

2. スキンシップを欠かさない

パートナーとのスキンシップの方法はセックスだけではありません。キスやハグをしたり、添い寝をしたり、マッサージをし合ったりと、スキンシップの方法はたくさんあります。
どうしてもセックスをする気になれないときでも、そういったことでお互いが穏やかな気持ちになれたり、愛情を確認することもできるのではないでしょうか。
また、最初はセックスをしたくないと思っていても、そういったスキンシップをしているうちに徐々に気持ちが盛り上がってくることもあるかもしれません。
頑なにパートナーを拒むのではなく、2人で試行錯誤しながら、お互いに心地よいスキンシップの方法を見つけていくようにしましょう。

3. 少しだけ身なりに気を付ける

だんだんとお腹が大きくなってきて体が重くなったり、産休に入ったりすると、どうしても身なりのことが面倒になってしまいます。パートナーとの愛情は外見が全てではありませんが、やはり身だしなみがおろそかになっていると、なかなか性的な感情が湧かなくなってしまいます。
体調が悪いときなどはもちろん無理する必要はありませんが、体調が落ち着いているときは、家の中であっても多少身だしなみを整えるようにしたり、たまには少しおしゃれをして2人ででかけるなどといったことも必要かもしれません。

まとめ

今回は、妊娠中の性行為についての基礎知識とセックスレスにならないための注意点についてご説明しました。
あくまでもこれは一般論ですので、性行為について気になることがある場合は、産婦人科の担当医に相談することをおすすめします。
また、セックスレスについてもカップルによって状況が異なりますので、正解はありません。
これからずっと付き合っていくパートナーですので、2人が心地よい関係でいられるよう、しっかりと話し合っていくのが一番かと思います。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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