日常生活と陰陽転化

前回は陰陽論の消長をお話しました。
一年や一日の流れを例に陰と陽の移り変わりを説明をいたしました。
陰陽論は時間軸で考えたり、量や質、そして病気の成り立ち、病気の状態を表すことができる非常に緻密に組み立てられた理論です。

今回はその理論の中でも究極理論でもある陰陽転化についてお話を致します。
さて「転化」とは(三省堂 大辞林より)

①  ある状態が他の状態に変わること。 「愛情が憎悪に-する」 
②  スクロース(ショ糖)水溶液が加水分解されて D -グルコース(ブドウ糖)と D -フルクトース(果糖)が生成するとき、全体として旋光性が右旋性から左旋性に逆転すること。

とあります。

つまり漢字の意味としては他の状態に変わることを言うのです。

陰陽論でもこの転化について語られています。
「陰極まって陽となる」というのは、陰が思い切り偏りその結果、真逆の性質である陽に変化する・・・。
つまり陰陽のどちらかが一方に大きく偏ることで反対の状態や存在に変化するというのです。

これは、物質でいうとありえないことであり、モノそのものが全く違うものになってしまうので、状態や現象で説明をしていきます。

東洋医学では、行き過ぎたものは必ずひっくり返るということなのです。
さてこれが時間や状態であるとどうであろうか。

よく言われている例で行くと、冬の寒い日に長時間、外で過ごし(陰が多い時期に長い間=陰極まる)家に入ったあと、しばらくすると体が暑くなる。
おかしいなと熱を測ると高熱(高熱=陽極まる)となっている。
そして熱が高くなればなるほど、寒くなり、ガタガタと震えだし、布団に入っても寒くて震え上がってしまうこれ、日常で経験したことありませんか?まさに転化です。

さて、このような体の状態の転化は経験があると思いますが、こちらはどうでしょうか。

時間軸の転化

時間軸の転化

「二分二至」

聞いたことありますか?

春分・秋分・夏至・冬至の時期を表す言葉です。
この二至である夏至と冬至は陽気が一番多い日=昼が一番長い、陰気が一番多い日=夜が一番長いとなり、この日を境に秋、または春になります。

これは頂点を迎えて逆の季節に変化していくという季節の転化になります。
この二至の時は陰陽転化が起こるときですので体の変化が起きやすく病気などに注意をするべきと考えます。

鍼灸医学ではこの添加の法則を利用して治療することができます。

急性ギックリ腰などのように急性炎症性の筋の疾患などには、陰陽の転化を起こさせるように得気の多めの鍼刺激を与えたり強めの灸刺激をします。
この刺激によって陰陽転化が起こり炎症を鎮めると考えます。

まとめ

いかがでしょうか?

陰陽とは、季節や時間だけでなく、医学に応用することにより人々の健康に良い効果をもたらす理論なのです。
単純に物事を2つに分ける。その分ける過程によって起こる現象を利用する。
なんとも巧みなシステムなのです。

さて、次回は森羅万象を5つに分けた五行論に突入します。
全てのの事象を五分割しシステマチックに考えていきます。

楽しみにしていてください。

プロフィール

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鍼灸師 船水隆広

経歴
東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科科長
心身健康科学修士 
伝統鍼灸学会理事 総務部長 
経絡治療学会評議員 
更年期と加齢のヘルスケア学会幹事 
多文化間精神医学会会員

20年の臨床歴をもち、欧米やアジア各国など、国内外で鍼灸の指導に当たっている。
ストレスケアとこころの病に対する治療が専門分野。

震災直後には被災地にて鍼灸治療スタッフとして施術を行う。
施術効の科学的研究など幅広く活躍。目指すのは「やさしく美しい鍼」。
著書に「深い疲れをとる自律神経トリートメント(主婦の友社)」がある。

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