口臭のチェック方法

自分で臭ってみる

第三者に息を吹きかけてにおいを嗅いでもらうという方法もなくはないのですが、あまりおすすめできる方法ではありません。
自分自身で臭うのはとても難しいのが実情ですが、両手で口を覆ってそこに息を吹きかけて直ちに鼻から吸い込むと、臭いを実感できることもあります。

口臭測定装置

実は、口臭を測定する装置があります。測定装置を使えば、口臭がするのかどうか、口臭がする場合の原因成分、口臭のレベルなど数値化してみることができます。
客観的に評価できるのが利点ですが、それほど普及している装置ではないので、歯科医院を受診しても測定装置を使った評価は、なかなか受けられないのが欠点です。

さまざまな口臭の原因

口臭の原因は1つではありません。

目覚め

朝起きて口臭を感じた経験ありませんか?これは、寝ている数時間の間、口を閉じ続けていることによって、一時的に口の中で細菌が繁殖するからです。
例えば、長い間靴を履いていると、脱いだときに足が臭いませんか?これと同じ現象です。温かくて湿っており、しかも暗い空間は細菌が繁殖するのに最適なのです。
ですから、朝起きて歯を磨いたり、うがいをしたりすることで、一時的に増えた細菌を減少させることができるので、この場合の口臭は容易に解消されます。
なお、起床時の口臭のことを生理的口臭といい、正常な口臭なので治療の必要性はありません。

食事

食事の後に口臭を生じることがあります。食後に口臭を生じさせる食品としては、ニンニクが有名だと思います。アルコールを飲み過ぎたときにも、やはり口臭を生じます。
食後の口臭も、生理的口臭に含まれますので、治療の必要性はありません。

歯周病

歯周病も口臭を生じる原因の1つです。実は、治療の必要がある口臭の原因のトップにある病気が歯周病なのです。
歯周病は歯周組織とよばれる、歯を支えている組織に生じる病気です。歯周組織には、歯肉(歯ぐき)、歯槽骨(歯を支えている骨)、セメント質(歯根の表面についている硬い組織)、歯根膜(歯槽骨と歯を繋げている薄い靭帯)から成り立っています。
歯周病になると、まず歯肉が腫れてきます。歯肉が腫れると、歯みがきがしにくくなり、歯と歯肉の間に食べ物が挟まったりするだけでなく、その部分で細菌が繁殖して化膿してきます。
そして、臭いを発するようになりますので、口臭を引き起こします。

虫歯

虫歯も口臭を起こします。
虫歯が進行すると、どんどん穴が深くなっていきます。穴が深くなると歯ブラシで磨きにくくなりますから、そこに食べカスが詰まったり、細菌が繁殖する温床になったりしますので、臭ってくるのです。
もちろん、歯が溶けてくるのも臭いの原因になります。

口呼吸

ほ乳類は基本的に鼻で呼吸をします。しかし、ヒトは口でも呼吸ができるようになっています。口で呼吸できるからといっても、鼻で呼吸するのが本来の姿であることに変わりはありません。
口で呼吸をすると、乾燥した空気が口に入るため、口の中の湿気が蒸発してしまい、結果的に口が乾燥します。
口の中の表面を覆っている粘膜は乾燥に弱くできています。乾燥してしまうと腫れたり、出血したりする上、口の汚れも乾燥して、こびりついてしまいます。こびりついた汚れや炎症を起こした粘膜から、臭いを発するようになります。

ドライマウス

ドライマウスとは、口が乾燥することです。ドライマウスは口呼吸によっても生じますが、それ以外に唾液の分泌量そのものの低下によっても起こります。
緊張したときに口の中がカラカラに乾いた経験ありませんか?唾液の分泌量は、加齢によっても減少しますし、ストレスによっても減ってしまいます。
ドライマウスになると、やはり口の粘膜が乾燥してしまいますので、口臭を生じます。

喫煙

タバコを吸うと、独特のタバコ臭を発するようになります。
この臭いは、タバコをやめてもしばらくの間続きます。臭いを防ぐためだけでなく、健康の増進の観点からも、タバコの喫煙はおすすめできません。

口腔がん

口の中にも悪性腫瘍、がんは生じます。一番多いのは舌に生じる舌がん、次に歯肉に生じる歯肉がん、他にも舌の下(口底部)に生じる口底がん、下あごの骨からできる骨肉腫など、実に多様ながんが生じます。
がんは無秩序に増殖して、転移するのが特徴です。進行していくと大きく、そして硬くなってくるのですが、その中心部分は酸素や栄養不足を起こすため、壊死します。進行がんは、壊死した組織の独特の腐敗臭を生じるようになります。

口臭の予防と対策

生理的口臭以外は、治療が必要です。

歯周病治療

歯周病の原因は、細菌、いわゆる歯周病菌です。歯周病菌は、歯の表面についたプラークの中にいます。
プラークを減らす、プラークコントロールによって、歯周病菌を減らすことが歯周病の治療の基本です。プラークコントロールを成功させるカギは、歯科医院での定期的な歯の掃除と、毎食後のていねいな歯磨きにあります。
プラークコントロールをしっかり行ない、歯周病を治しましょう。

虫歯治療

歯の表面に留まっているような小さな虫歯であれば、コンポジットレジンとよばれるプラスチックを詰めて治せますが、さらに大きくなれば歯の神経をとったり、被せものを装着したりする治療が行わなければいけません。歯医者さんと相談して治療をすすめましょう。

口呼吸の治療

口呼吸の原因には、鼻詰まりによって鼻で呼吸ができなくなることや、舌の筋肉が弱くなることがあげられます。鼻づまりには耳鼻科での治療が必要です。

舌の筋肉を鍛えるには、「あいうべ体操」が効果的です。あいうべ体操とは、以下のように行います。
①「あ〜」と大きなお口を開ける
②「い〜」と口を横に広げる
③「う〜」と唇を前に突き出す
④「べ〜」と舌を前に伸ばす
たったこれだけの運動です。とても簡単ですから、鼻づまりもないのに口呼吸をしているという方は、一度お試しください。

ドライマウスの治療

唾液の分泌量が少なくてドライマウスになっている場合は、保湿クリームを使ったり、唾液腺のマッサージを行ったりします。また、シェーグレン症候群など、口腔乾燥をもたらす疾患であれば、唾液分泌を促す薬を使った薬物療法が行われます。
かかりつけの歯科医、内科医と相談しながら治療してください。

禁煙、禁煙治療

タバコには習慣性があり、なかなかやめられないのが実情です。そこで、ニコチンガムなどの禁煙グッズや、病院の禁煙外来を利用するのもおすすめです。

口腔がんの治療

2週間以上にわたって治らない口内炎やしこりが認められる場合は、口腔外科のある病院で一度相談した方がいいでしょう。

おわりに

口臭のチェック方法や口臭にはさまざまな原因があることをご説明しました。
整理的口臭の場合は心配ありませんが、それ以外の場合は歯科、耳鼻科、口腔外科など、原因に適した専門の医師に診てもらいましょう。
口臭に悩まされず、自信をもって人と近くで話しができるように、治療と予防を始めましょう。

監修

・日本口腔外科学会専門医、日本口腔科学会認定医 見立英史

・日本口腔外科学会専門医、日本口腔科学会認定医 見立英史

専門分野
歯科、口腔外科

経歴
九州大学歯学部卒業。2003年歯科医師免許取得。2009年博士号(歯学)取得。九州大学病院顎口腔外科医員。2011年医療法人仁慈会西原歯科勤務。2013年九州大学病院顎口腔外科助教。2016年福岡歯科大学口腔外科助教。2018年長崎大学病院 顎口腔再生外科

資格
歯科医師免許
日本口腔外科学会専門医
日本口腔科学会認定医

所属学会
日本口腔科学会
日本口腔外科学会
日本口腔腫瘍学会

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