そもそも再生医療とは?

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ケアクル編集部(以下、ケアクル):磐田先生よろしくお願いします。まず再生医療ってなんですか?

磐田振一郎(以下、磐田):はい、こんにちは!早速ですね!再生医療にも種類があります。私たちのクリニックでは幹細胞を使用した治療を主に行っています。幹細胞には骨や軟骨に変化する作用があるので、その力を利用した治療です。

ケアクル:幹細胞にはそんな力があるのですね。体のどんなところに効くのでしょうか?

磐田:主に膝の痛みや、股関節の痛み、など関節の痛みに効果が見込めます。 細胞は自分自身の体内から採取するので拒絶反応などのリスクが少ないと考えれ、入院する必要もなく日帰りによる治療が可能なので、患者さんの負担が少ないです。 自身の身体からわずかな組織を採取し、その中に存在する、軟骨のもととなる細胞を抜き出し、それを培養して、注射で再び関節に戻す治療法を行っています。

再生医療を行うクリニックは増えている?

ケアクル:それでは、再生医療の現状について教えてください。

磐田:私がリソークリニックを始めた当初は、この再生医療をやっているクリニックは全国で5〜10院くらいだったと思います。 この1年の間に、厚労省の認可を取っている施設は30件ほどに増加してきています。 これをどう捉えるかはそれぞれですが、効果があるから増えたのか、治療の選択肢として認可を取っているのか?さだかではありませんが施設数が増えてきていることは確かです。

ケアクル:再生医療のクリニックを開業されて変化はありますか?

磐田:とてもあったと思います笑 はじめはある論文をベースに治療の組み立てを行なっていました。 例えば、再生医療を実施した後に荷重をしないというのが一般的でしたが、 全く荷重しないことによる筋力の落ち込みなどの弊害も出たので、いまでは最低限の日常生活をおこなってもらっていますが、成績に変化はありません。 クリニックでも件数が100を超えており、多くの症例が集まってきました。 比率は膝と股関節がほとんどで、たまに足関節の痛みで来院される方がいます。

エビデンスがはっきりと出ている

ケアクル:細胞は体のどの部分から採取するんですか?

磐田:良い質問ですね!これはエビデンスがはっきりと出ています。 骨膜、滑膜、筋肉、血液などそれぞれの幹細胞を採取して、軟骨に変化させるデータがあります。その中で、滑膜からの幹細胞が軟骨へ変化する変化量が多いとされています。 つまり脂肪由来と滑膜由来では軟骨への再生能力にかなり差があります。 そこでクリニックでは滑膜の一種である脂肪滑膜由来の細胞を採取しています。 この細胞を取って治療を進めているところは未だ数が少ないので、クリニックの特徴でもあります。

ケアクル:細胞を採取するのは難しいのでしょうか?

磐田:脂肪由来の細胞は、腹部からが取りやすいので、多くのクリニックで腹部から採取しています。 これはさほど難しくありません。 しかし、軟骨再生に最適な細胞は、膝関節内の脂肪、滑膜に存在しています。この組織を採取するにはテクニックが必要ですが、膝の手術を普段から担当しているので安定して採取できています。

細胞数の違いとは?

ケアクル:関節の軟骨を再生させる場合、細胞数が予後に関係するのでしょうか?

磐田:これすごく大事です!細胞数にもエビデンスがあります。 私が参考にしている論文でいうと、再生医療に使用する細胞数が1,000万、5,000万、1億の三つで効果を比較しています。 そこで実際にどれくらい軟骨ができるか?というと、1,000万、5,000万は差が少ないですが、細胞数が1億のものでは軟骨形成に大きく差が出る結果となりました。 軟骨そのものの出来具合も良いです。

ケアクル:再生医療は細胞数によって効果が変わるんですね。

磐田:元になっている論文(※)のグラフを見ると軟骨の出来は数十倍の差が結果に出ています。 そのくらい大切だと思っています。 もちろん、採取した細胞を培養する専門家の技術力も大切です。 細胞が増えずに悩んでいる培養施設もあるようですが、今使っているところはきっちり1億にしてくれます。とても能力が高いので本当に助かっています。 細胞の数でいうと、とあるクリニックでは、細胞数1,000万で実施しているところもあるようです。 以上のように、中身にかなり差があります。

ケアクル:開業当時から細胞数を決めていたのでしょうか?

磐田:クリニックを開業するときに厚労省の申請をする必要があります。そのときに細胞数も明確に決定します。 そこで論文を参考に1億個の細胞を入れる治療を選択しました。 また数が全てではなく、細胞の入れ方にも工夫が見られるなど方法も様々です。 東京医科歯科大学の場合は内視鏡で見ながら、悪いところにダイレクトにアプローチする方法も研究されています。 個数が全てではないですが、方法と合わせて結果は変わってくるようです。

※Intra-Articular Injection of Mesenchymal StemCells for the Treatment of Osteoarthritis of theKnee: A Proof-of-Concept Clinical Trial

CHRIS HYUNCHUL JO,aYOUNG GIL LEE,aWON HYOUNG SHIN,aHYANG KIM,aJEE WON CHAI,bEUI CHEOL JEONG,cJI EUN KIM,dHACKJOON SHIM,eJI SUN SHIN,aIL SEOB SHIN,fJEONG CHAN RA,fSOHEE OH,gKANG SUP YOON

https://stemcellsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/stem.1634

ベストを尽くす。できることは全てやる。

ケアクル:細胞の入れ方で効果は変わるのでしょうか?

磐田:そうなのです!細胞の入れ方にも工夫があります。 関節の壊れている部分にしっかり届くように細胞を入れて、しかも注入後、患部に細胞がしばらく浸らせておくために特殊な姿勢での安静をおこなうなどの工夫が必要です。 そうすることにより生着率を高める努力をしています。

ケアクル:細胞の入れ方以外に気をつけていることはありますか?

磐田:もちろんたくさんあるのですが。 こだわりは細胞が働きやすくする環境を用意することです。 リソークリニックでは、細胞注入時に、サイトカインと成長因子を混ぜて入れるようにしています。 サイトカインも成長因子も細胞や周囲のダメージのある組織に働きかけをする成分です。 幹細胞は壊れた組織の材料、サイトカインや成長因子は治る反応をおこさせるもの、という位置づけになります。 サイトカインは培養している幹細胞から放出されるので、培養中にサイトカインを抽出します。成長因子は血液中に含まれますので、患者さまご自身の血液から作成します。 つまりいずれも患者さまご自身の組織由来なので安心です。 他のクリニックではこの二つは一緒に入れていないことの方が多いと思いますが、 同時に入れることでより高い効果を狙っています。 細胞が患部にくっつきやすくするための接着剤代わりになるものを使ったり、患部への負担が軽くなるような特殊なインソールを使ったり、再生医療に特化したリハビリだったり、色んな工夫がありますが、リソークリニックではベストを尽くせるよう、できるものは全て取り組むようにしています。

ケアクル:クリニックとしての強みを教えてください。

磐田:問診から治療完了まで一つ一つにこだわりを持っていることです。 あとはクリニックの理念として、再生医療を一つのツールと考えていることです。 患者さんに常に寄り添いながらベストな方法を探っていきます。 再生医療そのものを押し付けることはしていません。 例えば半月板損傷をしている人は手術が必要な場合もあります。 なかには、人工関節手術を選択する場合もあります。 痛みがなくなるまでとことん向き合い患者さんに最後まで寄り添います。 その方にあった最善の選択肢を選んでもらい、その全て提供できるのが強みです。

ケアクル:磐田先生ありがとうございました! 再生医療に興味がある方はぜひリソークリニックをチェックしてください。

プロフィール

・整形外科医 磐田 振一郎

・整形外科医 磐田 振一郎

専門分野 
膝関節外科、人工関節手術

経歴
平成08年 慶應義塾大学医学部 卒業
平成14年 Stanford大学工学部 留学
平成21年 特定非営利活動法人 腰痛・膝痛チーム医療研究所 設立(理事長)

資格
日本整形外科学会専門医
日本体育協会公認スポーツドクター
NSCA-CSCS
(NSCA公認コンディショニング&ストレングス スペシャリスト)
日本ダイエット協会認定ダイエット指導者

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