はじめに

学校や宿泊施設などの集団食中毒はテレビなどでも紹介され、認知度は高いものですが、食中毒は普通の家庭でも簡単に起こってしまう物なのです。
家庭料理を食べる人も、外食続きの人にとっても、いつ自分たちの身に起きるかわかりません。食中毒の感染原因や予防、対処まで知っておくべきお役立ち内容です。

食中毒とは毒物が健康を壊す総称

食中毒とは、強力な毒性を持っている細菌やウイルスなどが含まれている食べ物やヒ素などが代表的となる化学物質、キノコやフグなどが自然に持っている毒などが体内に入ることによって、健康被害を起こすことです。

食中毒の原因菌は、高温多湿を非常に好み、ウイルスは低温に置いて過ごしやすい性質をもっているので、細菌による食中毒は夏、ウイルスによる食中毒は冬に多くなっています。

食中毒は毒性を発揮する仕組みによって種類分けされます。

▪ 感染型:細菌やウイルスが入った食品を食べることで、細菌やウイルスに感染して発症

▪ 毒素型:食品の中で菌が増殖、毒素を産生。その毒素が体内に入ることで発症

▪ 食品内毒素型:細菌が食品と一緒に胃や腸の中に入り、その場で増殖して毒素を発生させ発症

食中毒の原因菌はこんなに多い!

食中毒は細菌やウイルスによって引き起こされます。
人の身体には、私たちが意識しなくとも自然に備わっている防御機構があります。
体内に毒物が入ったと認識した体の組織達が、毒物を追い出そうとする働きが嘔吐や下痢などの症状を起こします。
代表的な原因菌とウイルスをご紹介します。

サルモネラ

家畜である牛、豚、鶏、ペットの腸管内に存在している細菌です。
食肉や鶏卵を食べることで発症、学校給食などで見られた細菌です。
潜伏期間が8~48時間と幅があり、多くは吐き気と嘔吐の症状から始まります。

腸炎ビブリオ

海水に多く存在しているため、魚が感染し、それを食べた人間にというルートが見られます。
潜伏期間は10~24時間ですが、症状が早く出たほうが重症化しやすく、胃けいれんなども起こすのが特徴です。

病原性大腸菌

代表的なものにO157がありますが、通常は豚や牛の腸管の中に潜んでいる大腸菌です。
家畜の糞などから細菌が付着した食肉、またはその加工品などから感染します。
強い毒性があるため激しい水溶性下痢、腹痛、嘔吐の症状があり、乳幼児や高齢者は死に至ることがあります。

カンピロバクター

家畜である牛、豚、鶏以外に犬や猫の腸内にも存在する細菌。
特に症例で多いのは鶏肉からの感染で、加熱不足のまま食べたり、汚染された飲料水を通して発症しやすいものです。
症状として、発熱や倦怠感と軽症なものもあります。

黄色ブドウ球菌

人も動物も通常保菌しているものですが、傷などを化膿させる原因菌です。
傷を負った手から黄色ブドウ球菌がおにぎりなどに付着するとか、高温の場所に長い時間放置された食品の中で増殖して感染します。

セレウス菌

川や土の中に存在していますので、米や豆などが原因食品となって感染します。
症状は下痢が強いものと、嘔吐が激しいものとに分かれますが、多くは嘔吐症状が強く出るものです。

ノロウイルス

世界的に集団食中毒として注目されているウイルスです。
カキなどの貝類に存在し、人の腸のなかで増殖し大便中に含まれます。
秋から冬に起こる食中毒が特徴で、症状は嘔吐と下痢が1~2日続いて改善しますが、高齢者では重篤になることもあります。

食中毒になったらどんな対処や治療があるの?

食中毒症状があった場合の対処

感染した場合は安静保持をし、嘔吐がある場合は吐物がのどに詰まって窒息しないように顔を横に向けましょう。嘔吐や下痢が続く場合は、脱水症状を起こしてしまう可能性が高いので医療機関を受診しましょう。

感染者が吐いたものや、便には絶対に触れないように処理すること。
また、飛び散った場合は次亜塩素酸ナトリウムで消毒したり、汚染衣類はバサバサと乱暴に扱わずに静かに移動させ、次亜塩素酸ナトリウムで消毒もしくは沸騰したお湯に1分以上浸けるようにしてください。

病院での治療は

嘔吐や下痢で脱水症状が起きることがほとんどなため、補液や抗生物質の投与を行います。
原因菌によっても治療の時間は異なりますが、抵抗力の弱い高齢者などでは原因菌が排泄された後でも回復しづらい場合があります。その際には症状を見ながら対処することになります。
飲み物や食べ物の経口が可能になったら、消化がよいものや水分の補給をメインに行っていきます。

細かく気にして、食中毒を予防しましょう

① 食品の保存は肉や魚が付着しないように別々の容器に入れるようにしましょう。

② 調理する前には、石鹸でしっかり手洗いしましょう。

③ 調理する材料は、火を通すものと生で食べるものは付着しないように置きましょう。

④ 特に肉や魚、卵を触った後はすぐに手を洗いましょう。

⑤ ふきんや調理器具は消毒(熱湯や消毒液)できるものはするように、
  いつでも清潔に使いましょう。

⑥ 焼肉などで肉を焼く箸と食べるときに使う箸は別々にしましょう。
  焼肉屋ではトングで焼いて箸で食べるようにすることがベストです。

⑦ 肉や魚はしっかり火を通すように注意しましょう。

⑧ 食べ残したものは、長時間放置したりせずすぐに冷却しましょう。

まとめ

夏などは食中毒を意識して注意すると思いますが、なんとなく加熱、何となく大丈夫そうと判断して食物を扱っている人も少なくないと思います。
感染する細菌やウイルスは年々増えて行ってます。しっかりと知識を持っておけば防ぐことができます。
また抵抗力がなければ、弱い菌にも負けてしまう場合がありますので、食中毒に注意しながら食物を摂取、食中毒に負けない抵抗力を持つためにバランスよくしっかりと食べるようにしましょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田 早苗

・総合診療医 院長 豊田 早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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