はじめに

風邪を引いた時などに出る咳ですが、ずっと続くとしんどいものです。

今はドラッグストアなどで気軽に風邪薬や咳止めを購入出来るようになりました。今回はなぜ咳が起こるのか?原因を踏まえて咳止めの効き方について解説します。また咳止めといっても沢山種類があり迷うかもしれません。今回は医療用に使われている成分で、市販で購入できる医薬品にはどんなものがあるかご紹介します。

なぜ咳は起こるのか?

咳は体の防御反応

咳は喉に溜まった痰や異物を体外へ押し出す、生体防御反応の1つです。

咳が起こるメカニズム

喉から肺にかけての気道や気管支には知覚神経終末と呼ばれる、刺激を感じ取る神経の末端が存在しており、別名 咳受容体とも呼ばれています。この知覚神経終末が痰や異物に刺激されると電気信号が走り、脳の付近にある延髄の咳中枢に伝わることで咳が引き起こされます。

咳にも種類がある

湿性咳嗽:気道の分泌物(痰など)が過剰に分泌されて出る咳
乾性咳嗽:気道内に異物や刺激ガスが入り込んだ場合に起こる咳
心因性咳嗽:ストレスなど精神的なものからくる咳
習慣性咳嗽:咳払いなどいわゆる”クセ”


また咳はその持続時間によっても分類されます。

急性咳嗽:咳が続く期間が3週間未満 
原因としては風邪やインフルエンザ、急性気管支炎、急性副鼻腔炎によるものが多いです。

遷延性咳嗽:咳が続く期間が3週間~8週間未満
慢性咳嗽:咳が続く期間が8週間以上 ぜんそくが原因となることが多いです。

咳止めに効果的な咳の治療薬とは?

咳の原因を治療する薬と咳そのものを止める薬(鎮咳薬)に分けられる

咳の原因がぜんそくや感染症であればそれに対しての治療が行われます、気管支を拡げてぜんそくを予防する薬や感染症の細菌に対して合わせた抗生剤が処方されます。

咳そのものを止める薬は鎮咳薬と呼ばれ、乾性咳嗽の咳の症状そのものを和らげます。

次の項目からは、この咳そのものを止める薬の詳細について解説します。

咳止めを抑える鎮咳薬の種類

大きく分けて3種類の鎮咳薬がある

効き方や薬の構造によって以下の三種類に分けられます。

・中枢性麻薬性鎮咳薬
・中枢性非麻薬性鎮咳薬
・漢方薬

中枢性鎮咳薬と去痰薬や漢方薬を配合した鎮咳去痰薬も存在します。
基本的には乾性咳嗽では非麻薬性鎮咳薬が効かない場合に麻薬性鎮咳薬を次に使用します。

中枢性麻薬性鎮咳薬

中枢性麻薬性鎮咳薬の主な有効成分

以下の三種類になります。◎は市販薬として購入できます。

◎コデインリン酸
◎ジヒドロコデインリン酸
オキシメテバノール

効き方

麻薬と名前に入っていますが、れっきとした医療に使われている種類の麻薬です。

延髄の咳中枢を抑えて咳を鎮めます。

中枢性麻薬性鎮咳薬の副作用・注意点

注意すべき副作用

・依存性
・呼吸抑制
・気管支痙攣
・麻痺性イレウス
・眠気
・悪心
・嘔吐
・便秘
・排尿障害


依存性は長期間の連用や急に中止したり、服用する量を急に減らすと起こりやすくなります。不安にかられて落ち着かなかったり、鼻水や過度の発汗が見られます。
新生児・乳児では呼吸抑制が出現しやすいです。
重篤な呼吸抑制が起こりうるので、喘息による発作がひどい場合には用いません。
高齢者などで飲み込む力が弱まっている場合には窒息の危険があるので注意が必要です。
眠気が起こる場合があるので自動車の運転などは注意すべきとされています。

中枢性非麻薬性鎮咳薬

中枢性非麻薬性鎮咳薬の主な有効成分

非麻薬性鎮咳薬の有効成分は以下の通りになります、◎は市販薬で販売されています。

◎チペピジンヒベンズ酸
◎デキストロメトルファン
ジメモルファンリン酸
・エプラジノン酸
・ペントキシベリンクエン酸
・クロペラスチン
・ベンプロペリン酸
・クロフェダノール
◎ノスカピン

効き方

クロフェダノールとノスカピンは麻薬性鎮咳薬と同じく咳中枢そのものに作用します。
それ以外の成分は主に知覚神経からの電気信号が咳中枢に伝達する過程において作用します、電気信号が咳中枢に達する際に閾値(いきち)とよばれる一定の数値に達すれば咳反射が起こります、つまりひどい風邪で喉に強い炎症が起こり、強めの電気信号が何度も起これば、どんどん閾値に達する回数が多くなり、咳が何度も出てしまいます。デキストルメトルファンなどの非麻薬性鎮咳薬はこの閾値を上げることで咳が起こりにくくします。

中枢性非麻薬性鎮咳薬の副作用・注意点

注意すべき副作用

・めまい
・口渇
・食欲不振
・便秘
・頻脈

デキストルメトルファンはMAO阻害薬と呼ばれるパーキンソン病の治療薬との併用は自律神経症状、神経・筋肉症状、精神症状が起こるため禁忌とされています。
緑内障の方にはペントキシベリンは緑内障を悪化させるため禁忌とされています。

まとめ

咳の治療薬と注意点について解説しました、基本的に咳は体が異物を排出する防御反応の為、あまり止めない方が良いのですが、仕事など大事な場面でどうしても止めておきたい時には鎮咳薬を活用しましょう、初めのうちは弱めの非麻薬性鎮咳薬を使用する方が良いでしょう。副作用が気になる場合は麦門冬湯や小青竜湯もおススメです。

熱がある、あまりにも息苦しい場合には原因から治療しないと咳が収まらない場合があるので、医療機関へ受診しましょう。
咳の起こる原因を見極め適性な薬の使用を行い、咳で苦しい日々から早く抜け出せるよう心掛けていきましょう。

監修

・千葉大学医学部附属病院 宮山 友明

・千葉大学医学部附属病院 宮山 友明

専門分野 
循環器内科

経歴
1998年 千葉大学医学部医学科卒業。
2008年 千葉大学大学院医学薬学府環境健康科学を専攻し、医学博士号を取得。
現在 千葉大学医学部附属病院循環器内科医員として、心臓専門医として診療、研究。

資格
医師免許

活動:
日本抗加齢医学会専門医としてアンチエイジング医学、日本医師会認定健康スポーツ医としてスポーツ医学にも取り組み、各種メディアで活動中。

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