インフルエンザの予防接種

■インフルエンザとは

インフルエンザウイルスは、一般的なウイルスと比べて非常に感染力が強いと言われています。感染すると、高熱や倦怠感、酷い関節痛とともに、咳や頭痛などの一般的な風邪に似た症状も伴い、1週間程度で症状が改善します。
日本では冬を中心に猛威を振るい、家庭内や学校など集団生活を共にする方に、かなりの確率で感染します。

また、高齢者や乳幼児の場合、症状が強いと死に至ることもあるため、注意が必要です。
感染予防の対策として帰宅後や食事前の手洗いやうがい、人混みを避けることが基本ですが、流行時期の前に予防接種を受けることも効果的です。

■予防接種の仕組み

身体に一度ウイルスが侵入すると、体内でその疾患の病原体と戦うことのできる『抗体』を作ります。そして、再び同じ疾患にかからないための免疫が備わります。

予防接種とは、病原体となるウイルスの力を弱めたり、無毒化したりしたものを体内に注入することです。これにより、その疾患にかかることなく抗体を作ることができます。
つまり、インフルエンザの予防接種をすると、インフルエンザウイルスに接触しても、そのシーズンはインフルエンザにかかりにくい、もしくはかかってしまっても症状が軽くすむということが期待できます。

予防接種を受ける時期

■効果が出るまでは2週間

インフルエンザの予防接種を受けてから、抗体ができてその効果が出るまでに、約2週間かかります。
インフルエンザが流行り出す11月下旬~12月上旬には、効果を発揮しているように逆算すると、11月上旬~中旬には受けておく必要があります。

■効果は5カ月続く

しかし、早ければ早いほどよいというものでもありません。インフルエンザ予防接種の効果は、摂取後約5ヵ月とされています。
早すぎて流行が終わっていないのに効果が切れてしまっては意味がないので、その点も考慮しておきましょう。
ほとんどの場合、3月頃にはインフルエンザの流行が収束してきますが、最近は4、5月になっても流行することがあります。

とはいえ、大半の病院では流行時期に合わせて予防接種の予約や摂取を開始してくれますので、病院など受ける予定の場所の案内に従っておけば適切な時期に受けられるかと思います。

予防接種が受けられる場所

インフルエンザの予防接種は、市町村長の要請に対し、予防接種の協力を承諾した医師がいる病院で受けることができます。
一般内科ではなくても、呼吸器科や循環器科をはじめ、様々な科の病院で受けることができますので、かかりつけの病院で確認して摂取するようにすれば良いかと思います。

また、予防接種を希望する方が寝たきりなどで病院を受診できない場合や、施設などに入所している場合、医師の承諾のもと、自宅や入所している施設など生活の拠点となる場所での摂取も可能な場合があります。そのため、かかりつけの医師に相談してみましょう。

予防接種の費用

インフルエンザの予防接種は、保険診療ではありません。
受ける病院により、値段も多少異なりますが、全国平均で1回3500円程度となっています。

ただし、自治体で高齢者や生活保護を受けている人、住民税非課税世帯などに対し、補助金を出して一定の金額で受けられるようにしている場合もあります。
そのほか、任意の保険会社が、保険加入者対象に補助金を出したりしていることもあるようです。
これらは、自治体や保険によって異なりますので、該当しているかどうかはお住まいの自治体のホームページや加入されている保険の内容を確認するようにしましょう。

予防接種の副作用

インフルエンザの予防接種にかかわらず、予防接種には少なからず副作用が存在し、基本的に接種後24時間以内に発現します。
多くの方の場合、予防接種を打った場所が赤くなる、少し硬くなる、腫れるといった程度の限局した軽い副作用にとどまり、2~3日以内には消失します。

しかし、発熱、倦怠感、頭痛、下痢といったインフルエンザの症状が軽度に現れる場合もあります。
嘔吐、動悸、けいれん、意識障害が現れた場合には、すぐに予防接種を受けた病院を受診しましょう。

また、ごく稀に、接種後30分以内に呼吸困難や全身の発疹といった『アナフィラキシーショック症状』が出現することがあります。
今までになんらかの予防接種で重篤な副作用が出現したことのある方や、アレルギー体質の強い方、不安のある方は、接種後しばらく病院で休んでから帰宅すると安心です。

子どもの予防接種

■子どもは発症・重篤化しやすい?

子どもは成人に比べて全身の抵抗力が低いため、インフルエンザウイルスに接触した際に発症する確率が高くなります。
また、気管支炎、肺炎、インフルエンザ脳症などの合併症を伴って重篤化する可能性も、成人より高いと言えます。そのため、なるべく発症しないように、また万が一発症してしまっても重篤化しないように、予防接種を受けておくと効果的です。

■13未満は2回接種

生後6か月以上経過している健康な子どもは、予防接種を受けることができます。
13歳未満の子どもでは、より確実に体内で抗体をつくるために、原則2回予防接種を受けることになっています。1回目と2回目の間を2~4週間空けて摂取しましょう。
2回目の摂取から2週間経ったころから効果を発揮しますので、1回目は大人より少し早く摂取しておく必要があります。

13歳以上は基本的に1回接種となりますが、受験生など、特に大事をとっておきたい場合は、2回接種も可能です。

おわりに

インフルエンザの予防接種を受ける場所や時期、費用や副作用などについてご説明しました。

予防接種の時期が近づくと、多くの医療機関から案内が発信されます。自分の身を守るために、それらにしっかりと目を通し、知識として知っておきましょう。
インフルエンザ予防を行うことで、自分だけでなく、周囲の方の身を守ることにもなるため、予防接種をはじめ、しっかりと対策を施しましょう。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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