男女の妊活の違い

不妊に悩む夫婦が増えている昨今、妊活や不妊治療の方法は様々ですが、妊活に励む女性の中には、パートナーである男性の妊活に対する考え方や姿勢に悩んだり、不満を持ったりしている方がたくさんいらっしゃるようです。

妊娠しにくい環境にある原因は、女性でなく、男性側にある場合もたくさんあります。それでも、なんとなく昔から、不妊の原因は妊娠、出産をする女性にあると思われがちです。その結果、女性は体質改善や食事など妊娠に適した体にするためにいろいろと試したり、ストレスを抱えたりしているにもかかわらず、男性は特に生活習慣を変えることなく過ごし、なかなか妊娠に至らないということも多々あります。

女性の場合、卵子の質を高めたり、受精卵が着床しやすく妊娠を維持しやすい子宮の状態にすることが妊活の中心になります。
それに対して男性の場合は、「精液の中の精子の数が十分であること」と「その精子が卵子と出会って受精に至るだけの活動性があること」が重要なポイントです。
妊娠し、元気な赤ちゃんを出産するためには、どちらも良好な状態でなければなりません。

晩婚化が進んでいる現代の中で、健康な状態で妊娠および出産ができる期間にはリミットがあります。年齢を重ねれば重ねるほど、その可能性も低くなってしまうので、夫婦ともに新しい命を望むのであれば、できるだけ早い段階で夫婦そろって妊活、または不妊検査を始めることをおすすめします。

男性が妊活中に摂るべき栄養素

1. 亜鉛

妊活中の男性に最も積極的に摂取してほしいといっても過言ではない栄養素が『亜鉛』です。
亜鉛は、骨や皮膚の成長を促し、免疫力を高める効果のあるミネラルですが、生殖機能にも大きく関わっています。性欲をつかさどる男性ホルモン『テストロン』の生成を助けたり、精子の生成を促したり、精子の運動率を高めたりするなど、大切な要素をたくさん持っています。

亜鉛を多く含む食品には、牡蠣、牛肉、豚レバー、しじみ、納豆、そら豆などがあります。
一度に多量の亜鉛を摂り過ぎると、急性中毒になってしまう恐れがあるので、気をつけなければならなりません。しかし、その一方で通常の亜鉛の腸内吸収率は約30%となっており、食べているつもりでもしっかり吸収されていないという問題もあります。

そこで、亜鉛の吸収を助けるものとして一緒に摂取したいのが『動物性たんぱく質』と『クエン酸』です。『動物性たんぱく質』はご存知の通り、肉や魚、卵、乳製品に含まれており、『クエン酸』はグレープフルーツやレモンなどの柑橘類や梅干しから摂取できます。

逆に、亜鉛をせっかく摂取しても、一緒に摂取することで吸収の妨げになるものあります。それが『食品添加物』と『アルコール』です。いずれも少しの量であれば問題ありませんが、一度に摂取する量が多いと、亜鉛の吸収を妨げてしまい、亜鉛不足になってしまいます。
特に妊活中の男性は注意するようにしましょう。

2. たんぱく質

精子は主にたんぱく質から生成されるので、必須アミノ酸をバランスよく含む良質なたんぱく質の摂取が大切です。
たんぱく質の摂り過ぎは体重増加の原因にもなるので、動物性たんぱく質である肉や魚、卵や乳製品ばかりでなく、豆腐や納豆などの植物性たんぱく質もしっかり摂取するようにしましょう。

3. ビタミン類

ビタミンA・C・E群には、抗酸化作用があるため、精子の老化を防ぐ効果があります。ビタミンAはウナギ、レバー、ニンジンなどに、ビタミンCはピーマンやブロッコリーに多く含まれています。ビタミンEはカニ、カボチャ、アーモンドなどから多く摂取できます。

また、ビタミンB群は疲労回復、精力増強に効果のある栄養素です。豚肉、ウナギ、卵、玄米、納豆などに豊富に含まれています。
さらに、ビタミンB群に含まれる『葉酸』は、妊活中の女性が摂取すると良いことでは有名ですが、男性にとっても、精子の質を高め、染色体異常などのリスクを下げる効果があります。葉酸を多く含む食品には、ブロッコリー、納豆、焼きのり、レバー、ウナギなどがあります。

4. アルギニン

アルギニンは、鶏肉、大豆、アーモンド、レーズン、ゴマ、アボガドに多く含まれる成分です。成長ホルモンの分泌を促し、精子の生産量を増やしたり、精子の運動率を上げたりする効果が期待できます。

5. ムチン

ムチンは、精子を作るのに必要なアミノ酸やたんぱく質の吸収を促進する働きをします。山芋やモロヘイヤ、納豆やオクラなど、ねばねばした食品に含まれています。熱に弱いので、生で食べるのが効果的です。

妊活中の男性におすすめのレシピ

ここでは、妊活中の男性に必要な栄養素を豊富に含み、日常に取り入れやすいレシピをいくつかご紹介します。

下記のレシピの他にも、前項にあげたような食材を使用したレシピはたくさんあります。急激に一度に摂取するよりは、妊活に適した食材を頭の中に入れ、日頃の料理にもう一種加える程度にそれらの食材を織り交ぜていくのが、取り入れやすい方法かと思います。

1. しじみのお味噌汁

しじみは亜鉛を多く含む食品の一つです。
お味噌汁にすれば、作る手間もさほどかからず、他の料理とも合わせやすく、朝昼晩のどのタイミングでも食事に加えやすいです。しじみの栄養素が入り込んだ汁ごと食べられるので、しじみを使った他の料理に比べて効率よく亜鉛を摂取することができます。

2.牛肉の野菜炒め

牛肉の赤身は、亜鉛を多く含む食材です。
ビタミンCを含む食品とともに食べることで、亜鉛の体内への吸収率が高くなるので、ブロッコリー、ピーマン、セロリなどと一緒に炒めて一品にするのがおすすめです。

3. うなぎのかば焼き

ウナギはたくさんの種類のビタミン類を豊富に含みます。免疫力を高めるビタミンA、疲労回復やスタミナ増進に効果的なビタミンB、ホルモンバランスを整えて生殖機能を高めるビタミンEなどがウナギには入っています。
コストの問題もあり、なかなか頻繁には買わない食材かもしれませんが、妊活中のご夫婦はぜひ妊活に励む自分たちへのご褒美も兼ねてお二人で召し上がってみてはいかがでしょうか。

4. アボガド納豆丼

アボガドにはビタミンEやアルギニンが多く含まれており、精子の量や運動量を高めます。また、納豆には、ムチンが含まれ精子の生産を促進します。
アボガドと納豆の相性もよく、ご飯にかけるだけで簡単にできるので、朝食などにおすすめのレシピです。

まとめ

男性の食生活は、パートナーである女性が管理していることが多く、なかなか自分で食事の内容を変えるということは難しいかもしれません。
しかし、夫婦ともに妊娠を望んでいるのであれば、男性の妊活に対する積極的な気持ちを女性もきっと喜んで受け止めてくれると思います。
夫婦の絆を今以上に強くしていくためにも、ぜひ夫婦そろって妊活食に励んでみてはいかがでしょうか。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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