情報共有が当たり前な世の中

インターネットが発達し、SNSが爆発的に広まっている現在では、さまざまな人と繋がることが以前よりとても簡単になりました。そのおかげで、自分の周りには居ないけど、同じ趣味や興味を共有する人とどれだけ距離が離れていても繋がれるようになりました。

LINEやFacebookのメッセンジャーなどのメッセージアプリでグループを作り、1対1だけではなく、多数で同時にやり取りする事が可能になりました。また、FacebookやmixiなどのSNSではグループを作る事が出来、オンライン上でコミュニティを作る事が可能となりました。

今後増えて行くであろうものがオンラインサロン。有名なのは、キングコング西野亮廣氏が運営するオンラインサロン“西野亮廣エンタメ研究所”や幻冬舎の箕輪厚介氏が運営する“箕輪編集室”、筑波大学助教授でメディアアーティストの落合陽一氏が運営する“落合陽一の休日研究室”、はあちゅうこと、伊藤春香氏が運営する“はあちゅうサロン”が挙げられます。
これ以外にもさまざまな人がすでにオンラインサロンの運営を始めています。

オンラインサロンとは、言い換えれば“コミュニティ”だと言えます。これまでは家族や学校、ご近所、会社などが人々が属するコミュニティでした。それらは自分で選ぶことの出来ない側面を持ち、噛み合わない人も一括りにされたコミュニティでした。

しかし、オンラインサロンというネット上のコミュニティが出来たことで、人々は好きにコミュニティを選ぶ事が出来るようになりました。その中で必要な情報を集め、好きなことを仕事とする生活を送る事が可能となって来ています。


この流れはおそらく今後医療にも起きてくるものだと思われます。
事実、すでに治療家のコミュニティは出来始めています。そしてそれはおそらく医療コミュニティとして、医師や治療者と患者のコミュニティ、患者同士のコミュニティという形がもっと増えて行く事でしょう。

今までは、難病など重い病気であれば協会が設立され、協会を通して地域の患者同士が情報交換をし合うことはありましたが、今後は同じ病気で一括りにしなくても医療者と患者、悩みを持つもの同士のコミュニティの場が増えて行くことが予想されます。


可能性として挙げられるのが、個人クリニックや鍼灸院、整骨院といった比較的規模の小さいものがFacebookでのオンラインサロンやLINEグループを形成し、コミュニティを作り地域に限らず患者とのやりとりを行って行く形とTwitterでハッシュタグを使い同じ病気や悩みを持つ人同士が繋がって行く形です。

前者はすでに例を挙げましたが、後者の方は最近ブームになっている“月曜断食”が挙げられます。週一度の断食をする養生法が“月曜断食”なのですが、自分一人で成し遂げることが難しいと感じる方もいます。そこにTwitterで同じように“月曜断食”をしている人と繋がる事でお互い励まし合い、目標に向かって努力をし続けることが出来るというのがTwitterで形成されるコミュニティのメリットです。Twitterとオンラインサロンは相性が良いので双方でコミュニティが形成されて行く形も考えられます。

人の長寿にはコミュニティ、社会的つながりが必要

医療が発達し、人間の寿命が伸びている現代ですが、何が人間の寿命を左右するのか未だはっきりとした答えが出ていません。さまざまな研究者がこの問題にチャレンジしています。その中で、コスタリカに暮らす人々を研究したものがあり、コスタリカのニコヤ半島で暮らす人がコスタリカの別の地域で暮らす人々よりも高齢になってもなお、精神的にも、身体的にも、社会的にも活躍しているという事が明らかになりました。ニコヤは世界でも長寿の人が多い“ブルーゾーン”と呼ばれる長寿コミュニティの一つです。ニコヤ以外には、イタリアのサルディーニャ島、日本の沖縄などがあります。

人間の寿命は染色体にあるテロメアに左右されるのですが、コスタリカの最貧地のひとつであるニコヤ半島に住む人々は、他の地域の人々とテロメアの長さに明らかに差がある事が判明しました。研究者はその理由を調査する為、住民たちの身体的な健康、教育レベルから、魚油の摂取量にいたるまで、ありとあらゆるものの影響を分析しました。結果、食生活に明らかな差はなく、肥満や血圧など健康状態を示す測定値では、ニコヤの人たちは、他のコスタリカ人より悪い結果がでました。それなのに他の地域より寿命が長い理由は、強い社会的な絆、つまり、“コミュニティ”にありました。

研究結果から、人と人との繋がりが寿命に大きな影響を与えていると言えます。

参考文献
「病は気から」を科学する ジョー・マーチャント著・服部由美訳

これからの医療は、個人からコミュニティへ

今後は病院や治療院は、治療を行なったり薬を処方する形だけではなく、
コミュニティとしての役割を担って行く事が考えられます。
個人が運営する小さいコミュニティや病院や治療院単位で運営する大きなコミュニティ、もしくは患者同士が作るコミュニティが形成されて行くことも考えられます。

そういったオンライン上のコミュニティが、イベントという形でコミュニティに参加している人々が出会う機会を作ったり、オンライン上でのやりとり以外のコミュニケーションを提供して行く事も起こり得るでしょう。

個人で症状に悩んでいる患者さんにとって自分と同じように病を治そうとしている人の存在は励みになります。精神的なフォローを医療従事者や家族だけが行うのではなく、お互いの症状が1番分かる患者同士で行うことが大きな助けとなることもあるでしょう。


個人で医療を受けるのではなく、コミュニティに参加する人々と共に医療を受けて行くという形が今後増えて行くと個人的に思います。

そのコミュニティに外部の方を招いて講演をしたり、治療者を招いて施術を受ける機会を作り出して行くことも考えられるでしょう。海外を飛び回る治療者の働く場所のひとつとしてもこのコミュニティという医療の形は受け入れられて行くことが考えられます


人間の健康、長寿への一つの可能性として、コミュニティとしての医療の形は今後増えて行くのではないでしょうか。1人で悩んでいる方は是非、さまざまなオンラインサロンやFacebook、Twitter上のコミュニティを探してみてはいかがでしょうか。また、医師や医療関係者の方は治療だけではなく心のケアの一つの形としてコミュニティ運営を考えて行くことも大切なのではないでしょうか。

プロフィール

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松永光将(まつながみつひろ)
鍼灸師
あん摩マッサージ指圧師

神奈川衛生学園専門学校卒業

専門学校卒業後カリフォルニアへの語学留学を経て日本に帰国。1年間在宅訪問鍼灸マッサージで働きながら社会人アメリカンフットボールXリーグ1部 明治安田パイレーツでアシスタントヘッドトレーナーとして活動
2012年から豪華客船へと仕事の舞台を移し、船上鍼灸師として世界中の国の人々を相手に船上で鍼治療を行う。ディズニークルーズ、ホーランドアメリカクルーズ、プリンセスクルーズ、P&O Australiaクルーズと4つの大手客船会社の船での実務経験を持つ。

船を降りている時はバックパックを背負い写真を撮りながら世界を周るトラベルフォトグラファーとしても活動。
世界45カ国、150を超える都市を旅して来た。
世界を周り、世界での鍼灸の可能性を見出し、日本鍼灸を世界に輩出するべくSNSで豪華客船のことや船上鍼灸師の現状、世界の鍼灸事情を発信している。

http://mitsmatsunaga.com/

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