ストレスが原因で下痢が起こる?

繰り返される下痢や便秘に悩んでいる方は、老若男女問わずたくさんいらっしゃいます。
食中毒を起こすような物を食べた覚えもなく、発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状があるわけでもないのに治らず、お腹の症状に苦しむ毎日を過ごすのは辛いものです。

このような場合、病院を受診して血液検査や内視鏡検査などをしても結果に異常はなく、はっきりとした原因が見つからないことも少なくありません。

そこで考えられるのが、ストレスによって腹部の痛みや下痢、便秘が続く病気『過敏性腸症候群』です。
過敏性腸症候群はストレスが原因で身体に症状が現れる心身症の一つとされています。
致命的で重篤な病気ではありませんが、大事な会議の途中や入学試験の最中などに急にお腹が痛くなってしまうと、生活に大きな問題を及ぼすことがあります。

過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群(IBS)とは内視鏡などの検査を行っても、器質的な異常は見られない(炎症や潰瘍などといった明らかな所見がない)にも関わらず、腹部の痛みや下痢・便秘などの症状が長期にわたって繰り返し続く病気のことをいいます。

人がストレスを感じると、脳からストレスに関係するホルモンが分泌され、消化管に影響を及ぼします。
ホルモンは腸の働きを阻害し、腹痛、便秘、下痢といった症状を引き起こします。

このような症状が起こることにより、「仕事中にお腹が痛くなったらどうしよう」「満員電車の中で急にトイレに行きたくなったらどうしよう」と心配し、さらにストレスがかかり、消化管も過敏になっていきます。
このように、過敏性腸症候群ではストレスによる負のスパイラルに陥ることがあります。
どこかでそれを改善しないと症状は長期化してしまいます。

過敏性腸症候群と他の疾患の識別方法

腹痛、下痢、便秘などを起こす病気には、様々な種類があります。
ストレスによる過敏性腸症候群と判断するには、他の器質的な疾患がないかどうかを調べる必要があります。
大腸がんや炎症性の疾患(クローン病など)があるにも関わらず、ストレスだと決めつけて放置してしまうのは危険です。
きちんと専門家に相談し、適切な検査を受けるようにしましょう。
自覚症状や他覚的所見、血液検査、尿検査、便検査、大腸内視鏡検査、大腸造影検査、腹部超音波検査、CT検査など症状に合わせて検査を行うことにより、症状の原因となっている疾患が見つかる場合があります。

自分が過敏性腸症候群かもしれないと思ったら、まずは内科や消化器科を受診し、器質的疾患があるかどうか判断してもらうと良いでしょう。

その結果、やはり他の疾患は見つからず、ストレスや心理的要因が大きいと考えられる場合には、心理面にアプローチするために心療内科等を紹介してもらうこともできます。

過敏性腸症候群の対処法

過敏性腸症候群はストレスが引き金となって現れる病気であるため、まずは生活習慣の改善が大切です。
生活リズムを整え、ストレスを溜めないよう自身の生活習慣を見直しましょう。

食生活は食べすぎ・飲みすぎに注意し、3食を規則正しく、バランス良く食べるようにします。
消化管に負担がかかるような刺激物や脂肪分の多い食事は避けましょう。
また、睡眠時間をしっかり取って身体と心が休養できるようにし、心身にかかるストレスの軽減を図りましょう。
ストレスを対処しようと、酒・たばこに頼ってしまうのは、かえって消化管の働きを阻害し、逆効果になってしまいます。
飲酒・喫煙に依存せず、健康的な生活習慣を身につけましょう。

生活習慣の改善を図っても解決しない場合は、心理療法や薬物療法による治療が有効な場合があります。
医療機関で専門家に相談しましょう。
誇大な効果を謳っている民間療法には注意してください。

おわりに

ストレスによって引き起こされる下痢の原因と対処法について解説しました。
お通じに関する悩みは人に相談しにくく、一人で抱え込んで辛い思いをしている方も多いと思います。
過敏性腸症候群について知り、少しでも辛い症状を改善できるよう、正しい対処をしましょう。

症状が改善されれれば仕事や勉強も捗ります。
趣味など好きなことにもっと打ち込むこともでき、素敵な毎日が送れることでしょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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